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エコノミークラス症候群(急性肺動脈血栓塞栓症)

  Q1:エコノミークラス症候群とはどのようなものですか?
  Q2:エコノミークラス症候群とはいつ頃見つかったのですか?
  Q3:最近、新たに発生したエコノミークラス症候詳とはどのようなものですか?
  Q4:エコノミークラス以外の乗客ではおこらないのですか。
  Q5:エコノミークラス症候群の症状はどのようなものですか
  Q6:エコノミークラス症候群について最近の事例を教えて下さい?
  Q7:飛行機の中ではどうしてエコノミークラス症候群になりやすいのですか?
  Q8:エコノミークラス症候群にかかり易いのはどのような人ですか?
  Q9:エコノミークラス症候群に対する医学上からみた危険因子にはどのようなものがありますか?
  Q10:エコノミークラス症候群の原因となる深部静脈血栓症では、どのような検査をおこないますか?
  Q11:エコノミークラス症候群の治療法は何でしょうか?
  Q12:エコノミークラス症候群を予防するための注意事項は何でしょうか?
  Q13:時差ぼけには、どのように対処したらよいのでしょうか?

Q1:エコノミークラス症候群とはどのようなものですか?

A1:エコノミークラス症候群とは、医学的に言うと旅行中(特に飛行機の中)に起こる深部静脈血栓症に伴った急性肺動脈血栓塞栓症のことです。旅行血栓症という用語も使われております。飛行機の中では長時間座ったままでいるため、下肢の圧迫による下肢の静脈のうつ滞と水分不足による血液粘度の上昇がおこり、これが引き金になり血のかたまり(血栓)ができ、血管壁に付着します。飛行機が目的地に着陸し、席を立つと、長時間圧迫されていた足の静脈に付着していた血栓が血管壁からはがれ、静脈流に乗って肺にとび、肺の血管を閉塞(詰まらせること)させ、急性肺動脈血栓塞栓症が起こります。すなわち、いままで元気でいた人が急死することになります。航空機内のエコノミークラスの旅客から多く報告されたため、エコノミークラス症候群という名前で知られるようになりました。この血栓が、脳に移動して血管を閉塞させると脳塞栓、心臓の血管を閉塞させると急性心筋梗塞となり、とても危険です。

Q2:エコノミークラス症候群とはいつ頃見つかったのですか?

A2:1977年に海外の医学雑誌で初めて報告されました。また、2000年秋のシドニー五輪に参加するために23時間航空機に搭乗した英国選手3人が、エコノミークラス症候群の症状を訴え医師の治療を受けていたという報告もあります。同時期にシドニー五輪観戦を終えて帰国した28歳の英国人女性が20時間を越えるフライトの末、ヒースロー空港に着くや急に倒れ、エコノミークラス症候群で死亡するという、ショッキングなニュースも注目を浴びました。 成田空港でも軽症を含めると、1年間に100〜150件ぐらいあるそうです。

Q3:最近、新たに発生したエコノミークラス症候詳とはどのようなものですか?

A3:最近、発生した新潟中越地震で自宅が倒壊した被害者で3日間以上自動車で寝起きした中高年者の方に、肺塞栓症(エコノミークラス症候詳)が起こりました。また、精神科病棟に入院中の患者さんで身体を拘束された4人に肺塞栓症(エコノミークラス症候詳)が起こっております。今後、このようなことが起こらないようにするための対策が必要です。

Q4:エコノミークラス以外の乗客ではおこらないのですか。

A4:ファーストクラスやビジネスクラスに乗っている人もエコノミークラス症候群にかかりますが、その頻度はエコノミークラスの乗客に圧倒的に多いといわれております。エコノミークラスの座席間隔はあまりにも狭く、体の動きも制限されていることにも関係がありそうです。また航空機以外でも、長距離列車、長距離バス、長距離船舶や観劇、パソコンなどで、長時間一定の姿勢を続けておりますと同様の危険があります。急性肺動脈血栓塞栓症は搭乗者4500万人に1人の割合で発生しますが、飛行時間が12時間以上になると26万人に1人の割合に急増します。

Q5:エコノミークラス症候群の症状はどのようなものですか?

A5:深部静脈血栓症の症状は、下腿が赤くなり、はれ・痛みなどがあらわれます。急性肺動脈血栓塞栓症になると胸痛、失神、呼吸困難、心拍数の増加、意識消失などです。

Q6:エコノミークラス症候群について最近の事例を教えて下さい?

A6:ヒースロー空港を担当するアシュフォード緊急病院の医師チーム調べでは、推定2000人以上の英国人が本症候群で死亡していると報告しております。わが国でも、「財団法人航空医学研究センター」の調査によれば、1993年から2000年の8年間で44例(40例が女性)が発症し、4人が死亡したと報告しております。平均搭乗時間は11.6時間で、31例がエコノミークラス、6例がビジネスクラスでした。成田空港にある新東京国際航空クリニックの調査によると、成田空港では、8年間に25名がエコノミークラス症候群で死亡したと報告されています。同症候群により同空港到着後、病院に収容された重症患者は昨年1年間で50〜60名、軽症患者を含めると150名にものぼると報告されています。
2002年4月20日の新聞報道によれば、ジュビロ磐田・日本代表候補FWの高原直泰選手(22歳)が3月29日にポーランド遠征から帰国後、エコノミークラス症候群である肺動脈血栓塞栓症にかかり4月6日から入院し、4月22日に退院して機能回復のためのリハビリを開始する予定です。日本代表の海外遠征はすべてビジネスクラスを利用していますが、ポーランドからの帰路14時間(9,500キロ)の飛行中、疲れから水分もとらず長時間同じ姿勢で熟睡したようです。

Q7:飛行機の中ではどうしてエコノミークラス症候群になりやすいのですか?

A7:1) 長時間座ったままでいるため、下肢を圧迫し下肢の静脈のうつ滞をおこし、さらに血栓ができ易くなります。 2) 機内が常に空調されているため乾燥(機内温度は24度前後で、湿度は飛行時間が長くなると10〜20%以下に低下)しているので1時間に80mlの水分が蒸発し、脱水状態になり易いのです。 3) アルコールやコーヒーを摂取すると利尿作用によりさらに脱水状態になり易いのです。 4) 機内の気圧と酸素濃度が低下し、体調を崩すことになります。 5)トイレなどに一度も席を立たなかった人は運動不足で血栓ができ易くなります。 6) 飛行時間が長時間、つまり、7〜8時間以上で発病頻度が高くなり、15時間以上では危険です。

Q8:エコノミークラス症候群にかかり易いのはどのような人ですか?

A8:下肢静脈瘤のある人や下肢の手術を受けた人、外傷、悪性腫瘍、深部静脈血栓症になったことのある人、凝固機能に異常がある人、肥満者、経口避妊薬の使用している人、妊娠中や出産直後の人、高齢者、低身長者、喫煙者などがかかりやすいといわれております。
 飛行機の中で、長時間足を動かさない、足の血管が傷んでいる、血が固まりやすい体質や病気の人、水分をとらない人がかかりやすいといわれています。サッカーや格闘技などで足を蹴られて、足の血管が損傷を受けている人はかかり易いのです。

Q9:エコノミークラス症候群に対する医学上からみた危険因子にはどのようなものがありますか?

A9:日本宇宙航空環境医学会の「エコノミークラス症候群に関する検討委員会」によると危険因子は下記のように分類しております。
 1) 低危険因子 40歳以上、肥満、糖尿病、高脂血症、3日以内に受けた小外科手術(内視鏡的・肛門外科・皮膚科・眼科手術など)
 2) 中等度危険因子 下肢静脈瘤、心不全、6週間以内に発症した急性心筋梗塞、経口避妊薬を含む療法、真性多血症、妊娠・出産直後、下肢の麻痺、6週間以内に受けた下肢の手術・外傷・骨折
 3) 高危険因子 深部静脈血栓症・急性肺動脈血栓塞栓症の既往歴あるいは家族歴、先天性血栓形成素因、血小板増多症、6週間以内に受けた大手術(脳外科・心臓外科・整形外科・婦人科・泌尿器科手術など)、心血管系疾患の既往、癌などの悪性腫瘍

Q10:エコノミークラス症候群の原因となる深部静脈血栓症では、どのような検査をおこないますか?

A10:静脈造影、超音波検査、MRI(核磁気共鳴検査)、血流シンチで血栓による静脈閉塞を診断します。血液凝固異常の有無の血液検査も実施します。

Q11:エコノミークラス症候群の治療法は何でしょうか?

A11:血栓がひき続き作らないように抗凝固療法、血栓を溶解するためにヘパリンやウロキナーゼなどの血栓溶解療法、カテーテルで血栓を摘出する血栓除去術などがあります。

Q12:エコノミークラス症候群を予防するための注意事項は何でしょうか?

A12:飛行機内では座りっぱなしでいることが多いので、血流の流れが悪くなります。手足を動かしたり、歩き回ったり、ストレッチ、体操などをして、体を動かしましょう。血流が妨げられるので足は組まない方がよいです。機内で1時間に1回、離席して足の運動をしましょう。また、時々、深呼吸をしましょう。
1時間に1回位の割合で、下記のような運動をしましょう。
 1) 両肩をすくめて、リラックスして肩をおとす 5回
 2) 頭をゆっくりと右肩と左肩に傾ける 3回
 3) 両足を床におき、足を胸の方にゆっくりと持ち上げる 3回
 4) つま先やかかとを上げ下げする運動を10回行うと良いでしょう。
航空会社による、座席に座りながらできるストレッチや軽い柔軟体操のビデオも参考にしましょう。飛行機内は予想以上に乾燥しているので、水を5時間で1リットル以上の割合で飲んで水分を補給しましょう。アルコールやカフェインの入った飲物は利尿作用があるので控えめにしましょう。飛行機に乗る際は、ジーパンなど体を締めつける服は避け、ゆったりとした衣類を身につけましょう。足に弾性ストッキングを使用するのも有効です。靴を脱いでスリッパに履き替えるのもよいでしよう。飛行機に搭乗する前に、軽めに飲食をとることも必要です。危険因子のある人は血液の凝固を防ぐ「抗凝固剤」を主治医に処方してもらい服用してください。

Q13:時差ぼけには、どのように対処したらよいのでしょうか?

A13:東向きの飛行の場合は眠りにつくことが難しく、時差ぼけ症状も長く続きます。
1)東向きに旅行する場合は、出発2、3日前から早く寝るように心がけます。
2)西向きに旅行する場合は、出発2、3日前からいつもより遅く寝るように心がけます。
3)飛行機の中では水分を多くとり、アルコール飲料やカフェインの入った飲み物は避けましょう。
4)目的地に到着した場合は軽い食事をとりましょう。
5)旅先では日光を浴びるように外出しましょう。
6)メラトニンは体内時間を統制する役割を持っていますので、メラトニンを旅行の2、3日前から毎日帰国後まで1日就寝時に0.5ミリグラムをとるとよいでしょう。
7)旅行時に睡眠薬をとることも時差ぼけの効果になります。
8)時差が1時間変るごとに日常生活に戻るのに1日かかりますので、時差が大きい場合には、しっかりと対応しましょう。