19,西寧(シーニン)

5月18日(月)晴れ 

 蘭州の金城賓館を朝9時にチェックアウトして、隣の建物にあるCITS(中国国際旅行社)に行ってみた。そこの廊下に日本部と書かれた部屋があったので、そこに入る。とても日本語の上手な女性職員がいて、少し質問した。西寧に行くにはバスがいいか、列車がいいかと聞くと、即座に「列車がいい」と答えて時間も調べてくれた。私の中国のVISAが今週の金曜日で切れるので、ラサで更新ができるかと聞くと電話で調べてくれたが、やはりわからないとのこと。蘭州か西寧で更新することを勧めてくれた。(ラサは今でも外国人に対しては条件付きで特別に開放している所だから、そこでVISAの更新は無理かなあとは思っていたが。)CITSにはどこでも日本部というのがあって、日本語のできる職員がいるとのこと。もっと早くCITSを利用しておけば良かったと後悔する。)西寧のCITSの日本部の電話番号を教えてもらってから、そこを出た。

 ホテル近くの路上の生ビール屋では、もうすでに開店準備を始めていたので、おじさんに「さようなら」と挨拶してきた。

 教えてもらった西寧行きの列車の時刻は15時16分でかなり遅く、時間がもったいないのでバスの時間を見てみようと思ってバスターミナルに向かって歩く。途中に中国銀行蘭州支店の大きな建物があったので、シティーバンクのキャッシュカードが使えるか見て来ようと思って中に入るが、キャッシュカードの機械はどこにも見当たらなかった。ただクレジットカードは使えるようだが、これで現金を引き出すと利子がつくので簡単に使うわけにはいかない。日本から持ってきた現金(日本円、米ドル、トラベラーズチェック)の30数万円はまだ、だいぶ残っているから当面はまだ大丈夫だけど。

 バスターミナルに行って西寧行きの時間を調べてみると、朝夕の1日2便しかなく、朝の便は8時出発なのであきらめる。(私はこんなのでいつも時間を無駄にしているので、移動するときは少なくとも前日に時間を調べるとか、チケットを入手しておくとかしないといけないなあと反省した。)

 蘭州駅まで行き、午後3時16分発の西寧行きの軟座(ハイクラス)のチケットを購入した。42元。出発までだいぶ時間があるが、どこか観光するにしても中途半端なので昼食で外に出た以外はずっと駅の待合室で過ごす。中国の駅構内には乗客以外はほとんど入り込んでこないのでまあまあ気楽に過ごすことできる。

 軟座は4人のボックスで完全指定席であるが、けっこうみんな好きな所に座っていて、すでに私の席には男性が座っていたが、私がチケットを見せても別の番号を指示してそこに座るように言うので、仕方ないのでそこに座る。
 座席の列車は初めて乗った。座席車両にもやはり各車両に女性服務員がいて世話するようになっている。軟座はシートが厚いクッションになっていて座席の幅も広い。中国の鉄道は広軌道だから、幅は日本の新幹線並のはずである。服務員は頻繁にお湯を持ってきてついでくれたり(容器を持ってきている人に)、掃除をしに来る。だから車内はとても清潔でもちろん完全禁煙。

 約4時間で西寧駅に到着した。駅を出るとたくさんの人がいて、たぶんタクシーや長距離バス、旅館、ツアーの勧誘だと思うが、たくさん声をかけてくるのを無視して、「地球の歩き方」で今日泊まる予定の西寧賓館を確認して、タクシーに乗ろうと思ったら、また2,3人の男が寄ってきたので「西寧賓館に行く」と言うと、すぐ近くのタクシーに連れていって、それに乗るようにいうので後部座席に乗ったら、彼らが運転手に西寧賓館と言ってくれたまでは良かったが、その後私に向かって西寧賓館まで15元だと言って一人は助手席に乗り込もうとする。15元というのは明らかに高いし、メータータクシーで最初から値段を言うのもおかしいので、要するに彼らは単に紹介料を上乗せして私からお金をもらうつもりだなあと言うのがわかったので、私はタクシーを降りようとする姿勢を見せた。そうしたらタクシーの運転手が彼らに何か言ったのかもしれないが、彼らはあっさり去っていき、私は正規の料金でホテルまで行くことができた。7元。知らない人に安易に行き先など言うものではないと反省した。

 西寧賓館はとても立派なホテルで、標準シングルが150元(2250円)。それに泊まろうと思ったら、デラックスシングル(215元)にしないかと言うので、標準とどう違うかと聞くと、その中で国際電話もダイレクトにかけられるというのがあったので、インターネットができる可能性があるので、あっさりとデラックスを選択した。
 ロビーにCITSの職員がすでに来ていて、明日のツアーのことを説明してくる。私もCITSに寄ろうと思っていたからちょうど良かった。このホテルの玄関先にCITSの派出所があるらしい。青海湖とその中にある鳥島に行くツアーが日帰りで200元。ついでに20日の夕方発のゴルムド行きの寝台列車のチケットを購入してくれるようにお願いした。

 部屋は幸いに電話がモジュラーになっていてインターネットが可能だった。しかし、私のホームページを載せているプロバイダーのinfowebが故障している様で15日頃から更新が不可能になっている。メールの送受信は可能だが。

5月19日(火)晴れ

 午前7時半頃ホテル前に迎えに来たマイクロバスに乗って青海湖に向かった。私と同じ西寧賓館から乗った女性も1人いた。乗客は8人で私を除いて全員中国人、若い男女のカップル以外はみんな一人のようである。今回はけっこう年輩の人もいる。ガイドさん(中国語だけ)と運転手の計10人。

 私は朝から少し頭痛がしていて体調はそれほど良くなかった。鎮痛剤を飲んでもあまり改善していなかった。

鳥島で                       青海湖

青海湖は西寧市内から約5時間くらいかかって到着。西寧とその周辺は砂漠というわけではなく、草原、牧場が広がってとても美しい所で、夏だときっと緑になってきれいだろうなあと思った。青海湖は水平線が見えるほどとても広い湖だった。鳥島にはその名の通りたくさんの鳥がいる。

 青海湖畔のレストランで昼食を取る。乗客の内5人が一緒のテーブルに坐り、私と一緒に西寧賓館から乗り込んだ女性が取り仕切って数品の料理を頼んでみんなで食べた。中国人はお互い初対面の人でも、すぐにいろいろ会話する傾向があるようだ。もちろん私は会話に入るわけにはいかないが。日本人なら、みんな初対面同士でテーブルを囲んですぐに楽しくおしゃべりするかなあと思った。(できないのは私だけかもしれないが。)

 たぶん青海湖で取れた大きな淡水魚?も2品出た。昼食を摂る頃はまだ頭痛のみで、食欲はなかったが食べることはできた。しかし鳥島を歩き回って、帰路につくと頭痛が激しくなり吐き気がしてきた。青海湖周辺は悪路で、最後部にいた私は震動が激しいので車に酔ったのかと思っていた。しかし道路が少し良くなっても吐き気は改善せず、ちょうど車がエンジンの不調で停止したときに降りて嘔吐した。私が嘔吐しているのを他のお客さんが見ていて、ガイドさんが私を席を中央付近に移動してくれた。発車してしばらくして、すぐにまた吐き気が出てきた。ちょうど通路を挟んで隣になった若い男女のカップルの女性が英語で「お話がしたいがよろしいですか?」と言ってきた。もちろん私も喜んで話がしたいところだが、今はそれどころではなく、彼女に「頭痛がひどく、嘔吐したいので運転手にバスを止めるように言ってくれ」とお願いしたら、バスを停止するよう運転手に伝えてくれた。バスを降りて嘔吐するだけして戻ると、ガイドさんが席をさらに最前席に移してくれた。再び走り始めても吐き気はおさまらずガイドさんからビニールバックをもらってずっとそれに吐き続けていた(ほとんど 胃液だけ)。

 私は普通の車酔いとは違うので、横の運転手に、青海湖の高度を尋ねると、3500mとのこと。きっと高山病の症状に違いないと思っていると、案の定、高度が低くなってくると 吐き気が完全におさまってきた。さっき私と話をしたがっていた若い女性に申し訳なかったので、彼女のそばの席に移り、お話をした。彼女は、蘭州市の大学の2年生とのことで、3ヶ月前から英語の勉強を始めたので、それで外国人の私とお話がしたかったようだ。たった3ヶ月間でもけっこう上手に話しているので、「私は6年以上も勉強してこの程度だから、あなたはとても上手だ。」とほめてあげた。彼女の質問内容はとりとめもないことだったが、彼女は自ら「私は中国人ではない、チベッティアンだ。」と言ったのがとても印象に残った。尚、お隣の男性はお兄さんとのこと。私は夫か恋人だと思っていた。

 夜の10時頃になってやっと西寧市内に到着して、私は西寧賓館前でみんなとお別れした。みんなに迷惑をかけたので、ゼスチャーなどを駆使してお詫びとお礼を言った。
 食欲がないので、ロビーでインスタントラーメンとビールを1本買って部屋に帰った。

5月20日(水)雨

 朝、ホテルをチェックアウトした後、VISAの更新のため西寧市公安外事科まで雨の中を歩いていった。「地球の歩き方」では更新するとき、次の行き先を聞かれたりすることがあるとあり、その場合はチベットなどとは言わずに、遠い有名な観光地を言うようにと書いていたが、特に質問もされずあっさりと6月23日までのVISAをくれた。手数料120元。
 その後近くの中国銀行の支店でトラベラーズチェックの両替をしようとすると、4人がかりくらいでかなり時間がかかった。

 西寧賓館にあるCITSの事務所まで戻って、頼んでいた西寧→ゴルムド間の寝台夜行列車のチケットをもらった(120元)。本日夕方6時半出発の列車である。

 午後からは、時間があるので、「東関清真大寺」というイスラムの寺院を見学に行った。ちょうど礼拝の時間になったのか、白い帽子を被ったおじさん達がたくさん集まってきていた。たぶん回族の人たちが大部分だと思うが、とても優しい顔つきをした人たちがとても多くて、何だか ほっとするような感じだった。

 西寧賓館に預けていた大きなザックを取りに戻る。列車の時間までまだだいぶあるので、西寧賓館の敷地内にある「足浴」に行ってみた。私と同じようにリアルタイムに旅行記を書いているnoriさんのホームページに蘭州には足浴と書いた看板がたくさんあって、それを経験したとあったので、私も入ってみる気になった。西寧にも足浴の看板はたくさんあった。
(http://netpassport-wc.netpassport.or.jp/~wnori1/cover)
 足浴といってもそんなに変なものではなく、健康的なマッサージで国営の西寧賓館と同じ敷地内にあるので、たぶんそこも国営と思う。料金は1時間で、60元。個室に案内されて、若い身長のとても高い笑顔の素敵な女性が来た。車掌さんみたいなきちんとした制服を着けている。緑っぽい熱い薬液の入った容器に両足をしばらく浸けた後、ふくらはぎから下半分、足裏をたんねんにマッサージする。彼女は終始にこにこしていて、筆談でお話しした。ただ漢字で単語だけ書いてくれればいいが、ずらずらっと中国語で書くので、半分くらいしか意味がわからなかった。彼女の月収は多いときで、1000元くらいとのこと。(1万5千円くらい。)街中では一見みんな裕福そうに見えても、実際に収入など聞いて少し複雑な気分になった。 日本の歌「花」が中国語では「春去春来」(チュンチュイチュンライ)というのを教えてもらい、彼女はそれを歌いながら足マッサージをしてくれた。

 こんな気持ちのいいことをしたおかげで、その後不幸なことの伏線になったのかもしれない。しかも、お世辞だとは思うが、彼女は私のことを28才くらいに見えると言ったのだ。

 4時半頃には西寧駅に到着して、6時半の出発まで、まだだいぶ時間があると思って、あまり人のいない工事中の待合室で本を読んだりして過ごしていた。6時過ぎに改札口に行ってみると、どうも様子がおかしい。15分になっても改札を始める様子がないので、近くを通った職員に聞いてみると、すでに列車は行ったと言って、彼女の時計を見せてくれて、あわれむ様な表情をした。そこで初めて私は自分の時計が大幅に遅れているのを知ったのだ。「地球の歩き方」では、乗り遅れた時、2時間以内なら払い戻してくれるとあったので、唯一開いている窓口に行って、チケットを差し出すが、まったく相手にしてもらえなかった。日本円にして1800円くらいだが、すごいショックを受けた。

 今日も西寧に泊まる気はもうなかったので、駅前に停まっている夜行バスのところに行ってみると、ゴルムド経由ラサ行きのバスがいて、職員がラサまで行くのか?と聞いてきた。私がゴルムドまで行くと言うと、150元だと言う。寝台列車でも120元なので、そんなに高いはずはなく、「それは外国人料金だからだろう、高すぎる」と言うと、すぐに人民料金だと言って100元に下げてきた。私はまだ高いと思ったが、それで乗ることにした。
 後で隣のお兄さんのチケットを見ると75元になっていたので、メチャクチャぼられているわけではないと思ったが。

 バスは横4列の上下2段のベッドになっている。ベッドといってもかなりリクライニングできるようになっているだけで、脚は完全には伸ばせない。始発のはずだけど、かなりバスは汚れていて、汚い毛布が1枚ある。私のベッドは上段の通路側だった。靴のままベッドに上がって、リクライニングした隙間に靴を納める方式だが、靴をはいたまま寝ている人もたくさんいる。私の大きいザックは運転手の横に置いていいということだったが、これはかなりいい加減なことで、バスが動き始めるとそこは他の運転手の簡易ベッドになるので、私のザックは狭い通路に放り出されてしまった。一人がやっと歩ける通路なので、当然みんな私のザックの上を歩いて行くことになる。

 バスは夕方の7時半出発で、翌早朝にゴルムドに到着するという話であったが、バスはなかなか出発せず(たぶん満席になるまで待っていたのだと思う。)、結局10時半頃にやっと出発した。夜中はかなり高度の高いところも走るようで、頭痛がしたが、耐えられないほどではなかった。それよりもタバコがひどかった。乗員乗客50人程いて、数人の女性客以外はほとんど喫煙者なのだ。始終何人かがタバコを吸っているし、休憩時間によってはほとんど全員が1度に吸っているのではないかと思うくらいもうもうとしている。上段の通路側にいる人は、吸い殻を当然のごとく通路にまき散らすので、下段の人にふりかかる。下段でなくて良かったと思ったくらいである。このあまりにもすごいタバコに、私は中国はきっとタバコで滅びるのではないかと思ったくらいだった。その点、列車の寝台車や軟座は各車両ごとに服務員がいて、掃除をしたり取り仕切っていたりして、一応禁煙なのでとても快適である。同じ路線でバスと列車があるなら、絶対列車を利用すべきであると思った。

 このタバコバスは、エンジンの調子もあまり良くないようで、時々エンジン調節をしながら、時々トイレ休憩をしながら、ゴルムドまで走っていった。トイレ休憩といってもトイレはあるわけではないから、砂漠やちょっとした物陰で大便もする。(その後チベットに行くときもずっとそうだったので、大便するときもたいして何とも思わなくなっていた。大便するときのコツは人のたくさんいる方に向かってすること。)

 尚、私の隣の男性は怖そうな顔をしたお兄さんだったが、私は友好関係を確立しておかなければと思って、時間を時々聞いたり(到着予定時間など)、チケットを見せてもらったりしていると、お兄さんも私にタバコを勧めてきたりした。すごいヘビースモーカーで困ったが。悪い人ではなかった。