前頁までの2サイクルエンジンの試作品はすべて、「4-3 0.43cc自己掃気型」に掲載した構造断面図のように、燃焼後の排ガスをシリンダーのピストン下死点付近でシリンダー下部(胴部)から外に排気する方式でありました。

普通に使われる原付バイクなどの2サイクルエンジンではみなシリンダー下部から排気するということでは同じ方式なのですが、シリンダ内壁とピストンやピストンリングを潤滑した燃料以外の油がしだいにその排気口から排気ガスと一緒に飛び出し、エンジン外部を汚すことが嫌われ、2サイクルエンジンが次第に衰退する要因にもなっています。

ここではピストンのシリンダー内壁摺動面以外のところで排気口を設けることでその問題を解消すべく本特許の特徴の一つであるシリンダー上部給排気を用いて、難問であった2サイクルエンジンでの「排気口先閉まり構造」とともに、いわば「上部反転掃気法」を実践してみました。

構造は下図のようになります。



ポイントはバルブディスクと称した給気と排気を切り替えるバルブで、中心に穴の開いた一枚の円盤です。 「4-3 0.43cc自己掃気型」の時の上シリンダーと下シリンダーの継ぎ目を上シリンダーの上側に配置したようなものです。 掃気をより良くする為にはもっと他の形状もあると思いますが、バルブのシール性を優先し、上下面とも油砥石でラッピングをするためにフラットな円盤にしてしまいました。
円盤の直径はΦ12.5で中心の穴はΦ3.2です。

バルブの上面側にはいままでの試作品を転用し、着火室を備えたバルブが位置し、工程の圧縮、燃焼時は画面左側のようにシリンダー上面とともにスプリングおよびシリンダー内圧力によって圧着され気密が保たれるようになっています。

次に画面右側はピストンが、試作では下死点前45゜付近まで下がるとピストン下端がシリンダー下部にアンダーカットで取り付けられたプルリング(ただのゴムOリング)に当り、シリンダーを引き下げます。

この時、バルブディスクの上下面の接面積と圧力の差からバルブディスクは上に押し上げられたままの状態で下面(シリンダー上面との間)が先に開き、シリンダー内の圧力が瞬間的に抜けて排気口から燃焼ガスが排出されます。

その直後、混合気入口から入ってきた多少の圧力を持った混合気(水色の矢印)がバルブディスクを押し下げてシリンダーの中に飛び込んで、中の燃焼した残留ガスを押し出す(赤い矢印)わけですが、この時、再びバルブディスクがシリンダ上面を塞いでしまわないように、設計では0.5mm程の隙間を保持するようになっています。
混合気の吹き抜けを最小限にするにはこの寸法は0に近いほど有利になるはずですが、小さすぎると掃気不十分になって調子が出ません。

次にピストン上昇時には、バネによってシリンダーも連れて上昇し、まず先にバルブディスクの下面に当り排気口を閉じ、およそ1mm(クランク角度で約23度)の間だけ次第に閉まりつつあるものの、給気口からは給気圧による混合ガスの供給が続くことになり、少なからず過給効果を得ることになります。

ちなみにバルブとバルブディスクの隙間は1mmに設計はしましたがバルブのネジ(ピッチ0.5mm)調整で一回転以内位の調子のよいところでセットしており、正確な寸法はいずれも判りません。
シリンダー内径はΦ8、天井の穴径は適当にΦ6とし、ピストンストロークは8mm、圧縮比は4.2位です。

こうして出来上がったものが下の写真です。
写真をクリックして動きと爆音をご覧下さい。



上図六角形のクランクケースから下側は「4-3 0.43cc自己掃気型」に使用したのと同じ掃気ホンプ内臓の柱になっています

が、今回は加えて、イグナイター電源に商用のAC100Vを使っていましたが、エンジン後部にDCモーター・発電機を取り付け、市販のDC6V駆動の蛍光灯ハンディライトのインバーター(2層基板の下側)を分解利用して自給電できるようにしました。

そして、回転しているエンジンを止めるには手でシャフトをつかんでもいいのですがプロペラなどが付いていると危ないのでイグナイターの基板(上側)に回路切断用のマイクロスイッチがシリコンチューブの後ろに半分隠れていますが取り付けました。

・・と、ついでにそのDCモーターを同じく6V(単三電池4本)でセルモーターにして始動出来るようにしました。 写真電池ケースの向こう端に青丸のボタンを付けてスタータースイッチになっています。
それにΦ205mmのプロペラを、動きが見えるようにして取り付けて・・・やっぱり扇風機になってしまいました。

なにしろ、材料が真鍮のハンドメードです。バルブディスクやシリンダー、ピストンまで重く、燃料もアルコールの自然気化ガス(写真で吸気口にぶら下がった瓶が気化器でアルコールが入っている)で濃度の調整も出来ず高速回転、高出力は望めませんが、室温27℃でこんな調子でした。 回転速度は? お聞きの速さです。

問題は潤滑油の垂れ流れで、試作品ではいつもチェーンソー用として売られているやや粘度のあるものを注油していますが、何回かの繰り返し運転で排気口パイプから出てくる油の量が、排気口がシリンダー下部にある前頁の「4-3 0.43cc自己掃気型」に比べるとだいぶ少なくなることがわかります。

ただし、アルコールを燃料として使っているので燃焼の際に水をよく生成するので水滴が定期的に飛び出し、それには油も混じっているようですが・・

「4-3 0.43cc自己掃気型」との試作品同士の比較試料はありませんが下の写真、何度も運転して排気口から飛び出す水を収集した液体(右)と。左はピストンリングなどにゴムOリングを使用しているので、けっこう頻繁に注油している潤滑油を並べた写真です。




出力の大きさは? 今は計測できる状態にないので感じでしかないのですが、試作品に取り付けるプロペラをインチサイズでD6×P4とD8×P5、それとD10×P3の3種類を用意してあるのですが、ビデオで回しているのはD8×P5のものです。

前頁の「4-3 0.43cc自己掃気型」のときはこのプロペラがやっと回ってもすぐに止まるようなもので、D6のプロペラでしか回りませんでしたから、それよりは出力が高くなっているのか? 工程容積は同じでも工作の出来具合や適当なところもあり、圧縮比、テスト条件も違い、特にアルコールの温度による混合気のコンディションは変化が大きく、まだなんともいえません。

また、バルブディスクなる構成部品も今回初めてトライしたもので、その穴の大きさや形状などまだ突っ込みが必要だと思いますが、これ一つとっても興味深深といったところでしょうか。

が、2サイクルエンジンのシリンダー上部での新しい給排気バルブ方式とスカベンジングの可能性を見たことにはならないでしょうか。

本ページの実証エンジンの動作原理をアニメーションにしました。
下図をクリックしてクランク角10゜毎の動画をご覧下さい。

04/6/11

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シリンダー上部給排気バルブ型2サイクルエンジンの試作


2004/06/01