◎アニメにおける兵器表現と運用について

アニメや漫画などの中には軍事関連を大きく取り上げたものが多く存在します。
しかしながら、それらのほとんどは取り上げるだけでちゃんとした検証をせずにかなり怪しい表現をしていたりします。
製作側がほしいのは「それっぽい雰囲気」であってキーワードとして作品中に登場すれば良いだけだから、手間をかけてちゃんと検証するということが皆無だからです。
しかし、生粋のミリタリーファンとしてはかなり納得できないものがあって、作品自体は面白いのに、その一点が気になって素直に楽しめない、なんて事がしばしばあったりします。
知識が邪魔して人生を楽しめない典型ですね・・・
で、そんな中で特に印象に残ったことをいくつかあげてみたいと思います。

CASE1:ドルバック
むか〜しむかし「特装機兵ドルバック」というアニメがありました。
今からそう遠くない未来の地球、そこに未知のエイリアンが現れ侵略を開始。地球防衛軍が必死の抵抗を試みるも、敵の科学力のほうが勝り人類は窮地に立たされる。そこで、対エリアン用の特殊部隊、選り選りの3人のエリートによって結成された「ドルバック」が誕生し、合体変形メカを駆る彼らの英雄的活躍によって形勢は逆転・・・というありがちな話です。
今回はその中で登場した地球防衛軍に着目。主人公の特殊部隊ドルバックの添え物的働きしかしない影の薄い防衛軍でしたが、ある時、全軍を再編成し戦力強化を図るという計画が実施されました。そのときに行った軍事力強化方法画がこれまたすごい!
地球防衛軍の主力兵器はなんとパワードスーツ!火力、防御力、機動力を極限まで追求した究極の戦闘服です。簡単に言うと、機械仕掛けの軍服です。
ハインラインの「宇宙の戦士」というマニアしか面白がらないヘビーな海外
SF小説をありがたがってる私としては、地球防衛軍最高!って気持ちなんですけど、劇中じゃ単なる雑魚・・・
で、このパワードスーツのを強化すれば必然的に防衛軍全体の強化になる、ということでお偉いさんがいろいろ兵士にやらせるわけです。
で、その方法がなんと、パワードスーツ搭乗員の再訓練!!!
な、なんて渋い方法なんだ・・・普通の考えのない脚本家ならば強化銃を持たせておわりってのが関の山だけど、このアニメの脚本家はすごいよ!再訓練とは恐れ入った・・・
搭乗員の質が向上すれば兵器自体の戦力も向上する、という発想なのだが、いやはや、まったく持ってそのとおり、実に理にかなっている!!
機動歩兵万歳!!


CASE2:パトレイバー・ザ・ムービー2nd
このアニメの監督の押井守はものすごい軍事マニアなので、軍事表現がとっても濃くってデリシャスです。
その最たるものが「赤い眼鏡」に始まる「ケルベロス」シリーズですね。
この一連の作品中にはマニアしか知りえないような銃器、しかも2次大戦中のドイツ軍ものがたくさん出てきます。
ツボにハマってしまった私は、劇中に登場する“ケルベロス隊”のエンブレムを模ったタイピンを持っており、スーツを着るときはいつもこれを着用しています。ま、今まで一度もそれに気がついた人はいないからいいんですけどね・・・
話を元に戻して、パトレイバーなんですけど、劇中で主人公の第2小隊がテロリストの本拠地に突入する準備をしている時に2号機操縦者の大田と整備班の人との会話の中に実に興味深いことが出てくるんですね。
トリガーハッピー(銃を撃ちまくりたい人)な大田が整備班にもっと強力な武装を装備しろ、と要求しているシーンでの事・・・
整備士:ライアットガン(パトレイバーの標準装備の大型銃)でも片目をつぶってよーく狙えば結構イケルぜ
大田:戦車が出てきたらどうする
整備士:そん時はもう片方の目もつぶるんだな
・・・
ということは、レイバーと戦車ではまったく勝負にならない、という事ですか・・・
実にすばらしい!
人型ロボットなどという非合理的極まりない兵器が、戦車という機能最優先の最強陸戦兵器に敵うはずがないのだ。そこら辺をしっかり押させているところが実に良い!
もともとが「人型ロボット」という実用性がまったくない、架空のメカをできるだけ無理のないよう活躍させるために、あれこれ設定をいじくりまわしてようやく落ち着いたのが警視庁警備部の特殊車両部隊という非常に特殊な組織だったわけです。
この組織は、ようは警察の中の「警備員さん」的組織であり、存在としての抑止力と、デリケートな物理的接触を期待してのものであり、基本的に戦闘は行わず、あくまでも犯罪防止や自己防衛としての最低限の実力行使のみを行うという設定だから、「人型ロボット」でもなんとか許せるわけですよ。
ここらへんは「ミニパト」第2話のなかで“シバシゲル整備班長”が詳しく語ってますので参考に。


CASE3:ガサラキ
何年か前に「ガサラキ」というアニメがやってました。
基本的に、ちょっとだけ未来の日本で特殊な自衛隊がタクティカルアーマー(
TA)という3メートルくらいの大きさの人型ロボットを使って軍事行動を行うのを機軸としているんですけど、物語後半はなぜか「能」とか「平安時代の鬼」とか「異次元の力」とかオカルトな部分が絡んできて、ハッキリ言ってワケわからんアニメだった・・・
で、この作品の1話目だと思ったんですけど、中東の国で紛争が起こって砂漠で
TA部隊と戦車部隊が戦闘するシーンがあるんですが、これが実に不思議な表現をしてるんですね・・・
TA部隊が砂の中に潜んで戦車部隊を待ち伏せして奇襲するって言う感じなんですけど、まず、2足歩行の兵器を砂漠で運用できるとは思えない。直立歩行するTAの足の接地面積は極端に小さいので、きっと砂に埋まってしまい歩くことさえ困難だと思う。
さらに、砂の中からガバァって飛び出すんだけど、全身が埋まるくらい深く潜っているのにガバァなんて飛び出せるとは思えない。
それから、どう見ても
100メートルくらいしか離れていない超至近距離から戦車砲を撃たれてるのに、TAはヒラリと身をかわしてよけてるよ・・・
ちなみに戦車砲は使用砲弾によって弾速が違うのだが、戦車が装備する最も基本的な砲弾である対装甲車両用砲弾、通称“セイボー”と呼ばれる対戦車徹甲弾はおよそマッハ5で飛翔します。距離
100メートルだと発射から着弾までおよそ0.06秒・・・見てからよけられるのか?
だけど画面上では、なんか、すごいゆっくり弾が飛んでいるように見える・・・
ということは、違う砲弾なのかな?
戦車砲には他に、ヒート:高性能成形炸薬弾、Mパット:対戦車多目的弾(
VT信管)、スタッフ:対戦車スマート弾といういくつかの炸裂弾が存在する。これらはどれもセイボーよりも幾分遅く弾速およそマッハ3である。
距離
100メートルだと発射から着弾までおよそ0.09秒・・・それにしても、見てからよけられるのか?
ちなみに、戦車側の狙いが悪いということはありません。最近の戦車には、レーザー測遠機や射撃管制コンピュータが搭載されており、よっぽどのことがない限り至近距離で標的を外すなんて事はありません。
現に、先の第1次湾岸戦争で米軍の
M1戦車は、およそ時速60キロというとんでもなく早いスピードでの全速行進間射撃を行い、走行中の敵戦車という極めて弾を当て辛い移動目標を2キロ以上離れたとんでもなく遠い距離から、しかも初弾で撃破するという奇跡を成し遂げてます。
ちょっとミリタリーに詳しい人ならわかりますが、移動目標を撃破するというのは極めて不可能に近い行為なんです。それがここ十数年の驚異的な技術革新によって、不可能を可能にすることができるようになったんです。
そんな奇跡を簡単に起こせるようになったスーパーウェポンである近代戦車が、
100メートルとか200メートルなんてメッチャ近い距離の標的を外すはずがありません。
ガサラキの中でもそこら辺は踏襲されていて、ちゃんと砲弾は衝突コースをたどって
TAまで到達してました。ですがTAが弾があたる直前でヒラリと身をかわしてよけたんです。
そもそも、マッハ3以上で飛来する直径
12センチ程度の金属棒を察知できるのか、たったの0.09秒以内に?
まあ、
100歩譲って、TAに飛来する砲弾の察知能力と、それをかわせるだけの運動性があったとしよう。
だがその後がいけない。突進する戦車を正面からがっぷり四つに組み押し戻している!!
もう言葉もない・・・
全高3メートル程度の人型兵器ならば、内蔵する動力装置も小型化せざるを得ず、どんなにがんばっても大した力は出ないはず。それに重量は5トン以内だし。
方や戦車といえば、中戦車程度の比較的小型の戦車でも重量は
30トンほどもある。しかも、走行という行為に関して言えば極めて効率的にできており、キャタピラという走行装置は非常に接地面積が大きく、とっても踏ん張りが利く。つまり、エンジンというTAの関節の駆動モーターとは天と地ほども違う大出力の動力装置の力を極めて効率的に使えるわけである。それに対してTAといったら、戦車とは比べるべくもない小さい、しかも偏平足の2本の足のみである。それが足場が悪い砂漠で30トンもある戦車の突進をとめられるのか?
ちょっとサンライズの演出家はミリタリーをなめすぎてる、というかそれ以前に物理法則を知らなすぎだ!!
このシーンだけでも、このアニメはリアリティーの欠片もない勢いだけのアニメだと判断せざるを得ない。
それに、この
TAという兵器自体の設定がまったくちぐはぐで、これを考えた人は頭が弱いとしか思えない・・・
主人公の所属する組織、特務自衛隊には「震電」「雷電」という2種類の
TAがあるが、デザインはかなりカッコいい。
しかし、リアルにしようとして大失敗し、まったくリアルじゃなくなっている・・・
基本装備は
30mm機関砲と75mm砲なのだが、30mm機関砲の方は給弾装置がなぜか肩につながっている。肩の中に弾を収めているって事か?
ええー! そんな場所に? なんで?
どうしてそんな被弾しやすい場所に弾薬のペイロードを付けたのか理解に苦しむ。それにただでさせ容積が厳しい
TAに内臓式ペイロードを設けるということ自体が不自然極まりない。どう見てもほんのちょっとしか弾薬が収まりそうにない。そんな消費弾薬量が半端じゃない30mm機関砲しか装備がないのに、搭載弾薬量がほんのちょっとってどういうこと?もうひとつの装備の75mm砲の方も、弾薬を収める場所が見当たらない・・・
どうして弾薬をちょっとしか搭載しないのだろうか・・・初めから戦う気がないのか?

もう一つ非常に気になることがある。
この
TAの操縦方法だが、操縦者の負担を軽くするために半自動操縦方式で、コンピュータがその時々の状況にあわせて3つくらいの最適行動パターを瞬時に計算し、操縦者はその中からTPOにあわせた選択肢を選択する、という実に楽チンなもの。
なるほど、まるでアドベンチャーゲームみたいでこれは簡単そうだ。
だがしかし、実に不思議なことに、
TAに数時間連続搭乗するとなぜかパイロットが発狂する・・・
はぁ? なんで? まったくわけわからん・・・
そもそも、兵器としては非合理極まりない人型ロボットで、乗りすぎるとパイロットが発狂するなんてそんなもんが兵器として通用するわけないだろうが!
ストーリー自体がワケわからん作品だけあって、メカ設定もワケわからん。あ、ここだけは統一が取れてるね♪


CASE4:ガサラキ その2
ガサラキでもう一つ・・・
劇中に搭乗する新型兵器タクティカルアーマー(
TA)を米軍が鹵獲する、というエピソードがありました。
その後、米軍は鹵獲した
TAを使い模擬戦をするシーンがありますが、これが実に興味深い。
ビルが乱立する市街地で、
TA3機と米陸軍対地攻撃ヘリ(ガンシップ)AH64Dアパッチが戦闘をするんですよ。
このシチュエーションが実イイ!
TAが隠れるところがしこたまあるがヘリが機体を隠蔽できる場所が極端に少ない、TAに圧倒的有利な地形で、しかも3対1という数的優位性まである状況で、TAとヘリがようやく対等の戦闘が出来る、ということです。
この戦力比が実に的確でいいですね。
そうです、人型直立歩行兵器などという非合理極まりない兵器が唯一有利になれるのは、市街地や森などといった縦方向の遮蔽物が密集した場所だけですね。
ちなみにガンシップの攻撃力というのはそれはそれは凄まじく、アパッチクラスの世界最強のガンシップならば、主力戦車2個小隊をたった1機で殲滅できるほどです。


CASE5:パトレイバー・ザ・ムービー2nd その2
ガンシップの話が出たのでついでに・・・
この映画の中で、1機のガンシップが特車2課の基地を襲撃するというシーンがありました。
そのときは明け方で、レイバーはもちろん格納庫の中で駐機中、それどころか隊員自体も大半がまだ寝ているという時に奇襲をされて、全く手も足も出ずにやられたわけですが。このときにガンシップが使用したのがガトリングガンです。3砲身だったところから
20mmガトリングガンと思われますが、これで30秒ほど機銃掃射を受け特車2課はレイバーどころか基地施設までもが壊滅してしまいました。
それどころか、たった3機のガンシップがその圧倒的な攻撃力で、あっという間に東京の街を麻痺状態に陥れる、というシーンがありました。
ガンシップは本当にめちゃくちゃ強いんです。そしてこの映画はそれを的確に表現しているんですよ。
ガンシップ最高!


CASE6:ガンダム
言わずと知れたガンダム
(ファースト)・・・
ジオン軍と連邦軍のモビルスーツの形状に注目したい。
ジオン軍のモビルスーツ(
MS)はおおむね丸みをおびた形状をしている。
これを軍事的に見ると「亀甲型装甲」と呼ばれる、立派な装甲兵器の形態なのである。
これは、同じ材質の金属板でも、単なる板よりも丸みをおびさせたほうが被弾した際の耐久力が向上する、という物理法則に基づいて行われたものである。
これに対しガンダムをはじめとする連邦軍の
MSは、おおむね直線的で平面の多い形状をしている。
これをアニメの設定と照らし合わせて考えると、連邦の
MSは「ガンダリウム合金」という未知の超金属で出来ているからだと考えられる。じつはこれってかなりリアルな設定だったりする。近代兵器でも、正にこの通りなのである。
ちょっと前の戦車は亀甲型装甲で丸みを帯びた形状をしていたけど、近年開発された新型複合装甲版、通称「チョバムアーマー」は成形するのがとても難しく曲げたり出来なくってまっ平らな板でしか作れず、近代戦車はみんな直線的な平面で出来ているのである。
つまり、ジオン軍は安価で大量生産可能な手持ちの装甲材を極限まで耐久力を高めるために亀甲型装甲を採用し、方や連邦軍は金と資源に糸目をつけず、非常に高価で生産性が悪く成形が難しいが、材質そのものの強度が高く最終的な耐久力の高い新素材を採用した、ということになるわけだ。
まあ、その当時にここまで考えて大河原が
MSのデザインしているとは思えないけど、でも結果としてかなりリアルな表現になっている、やったね!
でも、
MSのデザインを見てそんなことを考えているのは、世界で私タダ一人だけだと思う・・・


CASE7:ガンダム その2
またまた1
stガンダムから・・・この中に、今では明言にもなったとってもすごい台詞が出てきます。
物語終盤、シャアがジオングで出撃しようとする時、未完成のジオングを見たシャアが傍らの整備士に言葉をかける・・・
シャア:足はないのか?
整備士:足なんてタダの飾りですよ。偉い人にはわかんないんですかね・・・
・・・
す、すごいカミングアウト!
この瞬間、この物語は自ら主人公メカであるガンダムをはじめとする兵器が人型をしていることの非合理性を認めた!!
つまり、モビルスーツが人型している意味なんかない、単に見た目がいいだけで人型でないほうが性能がいい、と言っているわけだ!!
これは劇中に登場するジオン軍の兵器群を見ても窺い知れる。
ジオン軍は人型とは似ても似つかないような変な形のモビルアーマーをいくつも作り、しかも次々と新作を開発しているのだ。
このモビルアーマーは実にすばらしい兵器だ。形にこだわらず、でかいエンジンを搭載してでかい大砲を乗っけて重装甲で守りを固める、という実に徹底した構想で作られているからだ。これこそが本来あるべき兵器の開発構想である。
その証拠に、モビルアーマーは人型じゃないし、とりあえずマニュピレーターがあった方がなんかの時に便利かなぁ、という程度に手らしきもの、もしくは足くらいしかない。
エルメスに至っては手足に相当するものなんか何にもない。これでもかってくらいでかいエンジンに、
MSくらいあるでかい大砲をのっけて、これまた頑丈そうな前面装甲で覆ったという実に頼もしい形状をしている。
ビバ、モビルアーマー!!
でも、なかには「ザクレロ」なんてのもあるけどね・・・
モビルスーツ至上主義のモビルスーツをカッコよく見せることしか考えていない、内容の薄い後続作品と違い、ドラマ性重視のファーストガンダムはやっぱりいいなぁ・・・
途中打ち切りになったけど・・・
今の技術力でリメイクしてくれないかな・・・
ストーリーは全くあのままで絵だけ新しく描き直すだけ、ということでお願いしたい。

批評をするつもりだったのに、なんか褒める方が多くなってしまった・・・