千手観音(せんじゅかんのん)のセンジュ、弥勒菩薩(みろくぼさつ)の生まれ変わりのサチ、地蔵菩薩(じぞうぼさつ)のジゾウ、狛犬(こまいぬ)のコマは

今日もインドに向けて旅をしていた。うららかな日差しの中、サチが気持ち良さそうに

背伸びをする。「う〜ん・・今日は暖かくて良い気持ちね〜・・お昼寝でもしたく

なっちゃうわ。こんな日は魔羅(マーラ)もさすがに、襲ってこないでしょ」と言うと、

ジゾウは少し呆れ気味に「ミロク様・・なに、センジュみたいなのん気な事を

言ってるんすか・・仏敵(ぶってき)、魔羅はあなたの命を狙って、いかなる時でも現れます。

どうか、油断なさらぬよう・・・」と言うと、センジュは口をとがらせ

「ちぇっ・・ジゾウ君は相変わらず、頭が固いなぁ!だから、いつまでたっても石頭

なんだよ!」その言葉にジゾウはこめかみに青筋を走らせ、「お前、石頭って言うな―!!」

と叫びボカリと、センジュの頭を殴った。センジュの頭にでっかいたんこぶが出来る。

センジュが目に涙を浮かべ「い、痛い・・・」と、つぶやくとコマが心配そうに

「ク〜ン・・」と、鳴いた。その時、怪しい仏像が現れ、その中から3体の魔羅の

仏ゾイドが襲ってきた。『ミロク、ブッ殺す!!』仏ゾイドはサチを襲ってきた。

「キャア――!!」サチが悲鳴を上げる。センジュがサチの前に立ちはだかった。

「君は、ぼくが守る!!」パン!センジュは手を合わせ合掌した。

「合掌!印!千手天衣(センジュアーマー)!!!」センジュの背中に、金色に光り輝く木製の千本の腕が現れた。

センジュは魔羅に言う。「ぼくは仏像を壊したくない!その、仏像から放れろ!仏敵、魔羅!」

『ミロクをブッ殺すまで、放れられるか!!死ねえ!千手観音!!!』と、仏ゾイドが

怒鳴り、センジュに襲い掛かる。センジュは瞳に涙を浮かべ

「そうか・・ならば、ぼくは、お前を倒すしかない!!」センジュは手を合わせ合掌した。

千の腕が動き出す、「南無観世音菩薩(なむかんぜおんぼさつ)!全手一斉射撃!!千手パンチ!!!」

仏ゾイド『ギャアア――!!!』千の腕から繰り出される凄い破壊力のパンチが、

2体の魔羅の仏ゾイドを粉々に打ち砕いた。仏像を破壊した、感傷にひたる間もなく、

3体目の仏ゾイドがサチを殺そうと、剣を振りかざし襲った。「サッちゃん、危ない!!」

人間界では、千手パンチを一日一回しか撃てないセンジュは身を(てい)して、サチをかばった。

(ザシュ!!)「うわぁああっっ!!」センジュは仏ゾイドの剣で背中を切られ、真っ赤な

血が噴出した。ジゾウ「センジュ!」「センジュ君!」サチがセンジュを支え真っ青な顔

をする、その時、ジゾウが動いた。「転法輪印(てんぽうりんいん)!死になよ・・・印ビーム!!!」

ジゾウは印を結び仏ゾイドをロックオンすると、光り輝く強力な光線を打ち出した。

仏ゾイドはビームに額を貫かれ、倒された。センジュがサチに手当てされている。

「センジュ君・・・大丈夫・・?」心配そうに聞くサチにセンジュは

「大丈夫さ!サッちゃんが無事で何よりだよ」と、にっこりと微笑む、

「センジュ君・・あたし・・」と、悲しげにうつむくサチ。

ジゾウはポンとセンジュの肩を軽く叩くと、にやっと笑い「まあ、ミロク様を守れたんだ。

名誉の負傷だな!良くやったな、センジュ!今日はもう、遅い・・近くの宿でも泊まろ

うぜ?」気がつけば夕方になっていた。ここは、センジュ達が宿泊している民宿、

どうやら自炊する所のようだ。サチが材料を買い、民宿の台所に入って野菜を包丁で

切っている。ひょこっと、センジュが台所をのぞく。「サッちゃん、なにを作ってくれるの?」

と聞くと、サチは、ふふっと微笑み「今日、センジュ君、頑張ってくれたでしょ?

だから、センジュ君の好きなカレーにしようかと思ってるの!あっ、でも傷があるから

刺激物はだめかな?甘口なら良いわよね?」というと、センジュは嬉しそうに微笑み

「うん、そうだね!サッちゃんのカレーかぁ・・楽しみだな〜」と、言いながら

にこにこして、サチの料理をしている姿を眺めているセンジュ。サチはニンジンを

切っている、トントントントン・・サチはリズミカルにニンジンを切っていく。

その時、サクッ・・「痛っ・・」サチが包丁で指を切ってしまった。傷口からにじみ出る

真っ赤な血、「大丈夫?サッちゃん」センジュは何と、サチの指を口に含んだ。

「セッ、センジュ君?!」センジュのいきなりの行動に驚き、頬を染めるサチ。

「ふふっ・・消毒だよ」とセンジュは優しく微笑むと、バンソウコウを取り出し

サチの指に巻いた。サチは「ありがとう・・セン・・」と言いかけると、突然足が

ふらつき倒れてきた。「サッちゃん!?」ガシッ!センジュがあわてて、サチを受け止める。

サチは顔を赤くし、息を乱している、「サッちゃん・・どうしたの?」センジュはサチの

額を触ってみた。「熱い!熱があるじゃないか・・なんで、こんなになるまで僕は

気がつかなかったんだ!くそっ・・」センジュは、くやしそうに唇を噛み締めた。

センジュは近くにいるジゾウを呼んだ。「ジゾウ君、ジゾウ君!早く来てくれ!」

「どうした?!センジュ!ミロク様に何かあったのか!!」センジュの声を聞きつけて、

ジゾウと、コマが台所に飛び込んできた。「ジゾウ君!サッちゃん、熱があるみたいなんだ!

どうすればいいの?!」と、興奮気味に問いかけてくるセンジュに眉をしかめ

「しっかりしろセンジュ!ふむ、恐らく長旅による疲労だな・・よし、センジュ、民宿

の従業員に氷を用意してもらえ!そして、近くの薬局で薬を買ってくるんだ!」と

冷静に指示すると、「うん!わかった!」と、センジュはうなずいた。

サチが部屋で布団で寝かされている。しばらくして、「ミロク様のご様子は、どうだ?

センジュ」ジゾウと、コマが部屋に入ってきた。「うん・・さっき薬飲まして、眠ったとこ

やっと少し落ち着いてきたみたい・・・」と、センジュが言う。カチカチカチカチ、

静かな空間に、部屋の柱時計の秒針の音が響いている。センジュが眠るサチを見つめながら

切なそうにジゾウに問いかけた。「ねえ、ジゾウ君・・男のぼく達と違って、

女の子のサッちゃんにこの、長旅は無理なんじゃないのかなぁ?このまま、無理に旅を

続けて本当に良いの・・?こんなか弱い女の子に、過酷な旅をさせて・・・

そんなに弥勒様として、悟らせるのが大事なこと・・・?」そのセンジュの言葉に

ジゾウはカッときて、センジュの胸倉をつかんだ。「てめえ!センジュ、大日如来(だいにちにょらい)様の命令

を忘れたのか!ミロク様は、この世の救世主になられるお方なんだぞ!ミロク様以外に

誰がこの世を救うんだ!!そんなにミロク様をインドに連れて行く自信がねえなら、

仏国土(ぶっこくど)に今すぐ帰りやがれ!!!」その言葉に頭に血が昇ったセンジュは、青筋を走らせ

声を荒げた。「そんなこと、分かってるよ!ジゾウ君は、ずいぶん冷たいんだな!?

友達として見損なったよ!なんだ、救世主、救世主ってさ!サッちゃんだけに、重荷を

背負わせてさ!可哀相じゃないのかよ!!ぼくは、サッちゃんの命が大事だ!

それともなにか?ジゾウ君は、サッちゃんを救世主にするためなら、

どうなってもいいのか!?」ジゾウはこめかみに青筋を走らせ、「てめえ、この野郎〜!

なにもそこまで、いってねえだろ?!」と怒鳴ると、センジュが眉を吊り上げ

「言ってるのと同じだろ?!この石頭!!!」と叫ぶと、ジゾウは「てめ――!!そこで、

石頭って言うな――っ!!!」ドッスン!バッタン!!センジュと、

ジゾウで取っ組み合いの喧嘩が始まってしまった。コマは悲しそうに

「キャウン、キャウン」と、鳴いている、その騒ぎでサチがうっすらと、目を開けた。

「センジュ君、ジゾウ君。お願いだから、あたしのために喧嘩しないで・・・」

センジュ「サッちゃん・・!」ジゾウ「ミロク様・・!」2人はぴたりと、喧嘩をやめた。

サチは「ジゾウ君、コマちゃん・・センジュ君と2人だけで話しが

したいから、ちょっと部屋を出てくれる?」と言うと、ジゾウと、コマはうなずき

部屋を出ていった。サチは切なそうにつぶやく「ねぇ・・センジュ君。あたし、

センジュ君の重荷になってない?」「なってないよ」とセンジュが微笑むと、

「嘘よ!」とサチが叫んだ。サチは肩を震わせぽろぽろと、瞳から涙を流し始めた。

「だって私、弱いしなんの力もないし!センジュ君、私のためにいつも魔羅と戦って

傷ついて!もう、私はセンジュ君の苦しむ姿を見たくないの!傷つかせたくないの!

そのために私、早く悟らなきゃ!強くならなきゃ!私、センジュ君のことが!!」

ふわっ・・センジュは慈悲深い笑みを浮かべると、サチを優しく抱きしめた。

ドキン・・サチの胸が高鳴り顔が真っ赤に染まる。

「ぼくは、もれなく救う千手観音。君は無理をしなくていいんだよ・・?ぼくは君を

助けるためにいるんだから・・ぼくは、いくら傷ついてもいい。君のためなら、

いくらだって強くなれるんだ・・でも、サッちゃんが傷ついたり、苦しむのは

耐えられないんだ。君はぼくが必ず守ってみせる!必ずインドまで無事に送り届けて

みせる!だから、無理をしないで?君が悟りを開いて、大人になって・・全てが

終わったら、サッちゃんに伝えたいことがあるんだ・・それまで、待っててくれる?」

と聞くと、サチは「ありがとう・・センジュ君。うん、待ってる・・待ってるから、

必ず迎えに来てね・・・」と、嬉し涙を流しながらうなずいた。

それから、数十年後・・・サチは大人になり悟りを開き、ガンダーラの(サティ)として

1999年、シャーマンファイトに出場した。強大な敵、ハオはサティが導いた

麻倉葉によって倒され、世に平和が戻った。その後ガンダーラは一時、日本に滞在する

事になり、サチは西岸寺(さいがんじ)に戻ってきていた。心地よい夜風に吹かれながら、サチは

子供の頃のセンジュとのあの約束を思い出していた。どんな時でもセンジュの事を

想っていた。どんなに辛い事があっても、センジュの事を想うと頑張れた。

―――会いたい!会いたい!会いたい!お願い会いに来て、センジュ君―――

サチは強く願った。その時「サッちゃん・・久しぶりだね」声は少し低くなったが、

懐かしい忘れられない優しい声がサチの後ろから聴こえた。サチが恐る恐る振り返ると、

水色の髪、緑色の瞳の長身の凛々しく、美しい青年が月の光に照らされて立っていた。

それは、まぎれもなく

あのセンジュだった。長い間ずっと待ち焦がれていた(ひと)、サチが心から愛した仏が今、

目の前にいる。サチは思わず身体が嬉しさで震え、「本当に・・?本当にあなたは、

センジュ君なのですか・・?」と問いかけると、センジュは昔と変わらない屈託(くったく)の無い

笑顔で「そうだよ!待たせたね・・サッちゃん。やっと、大日如来様のお許しが

出たんだ!おっと、今はサティ様だったかな?」

とウインクすると、サチは首を横に振り「いいえ・・本来の名のサチと、呼んで

下さい・・・」と、瞳から涙をあふれさせて、センジュに抱きついた。センジュも優しく

抱き留める。サチは「センジュ君!センジュ君!ずっと、ずっとあなたに会いたかった・・!」

というと、センジュはうなずき「ぼくもだよ・・サッちゃん。君のことを忘れたことは、

片時もなかった・・あの頃の、ぼく達が子供だった頃の約束・・覚えてる?」

サチがうなずくと、センジュは「じゃあ、言うよ・・今こそ約束を果たす時だから!」

と、言いサチの瞳を真っ直ぐ見つめ、頬を真っ赤に染めていった。

「・・サッちゃん、いや、サチ!ぼくは君を愛している・・!一生君を守りたい!

ぼくのお嫁さんになってくれないか?」サチはセンジュの胸に顔をうずめ

「はい・・喜んで、私も愛しています。センジュ・・」と幸せそうにつぶやくと、

センジュの緑色の瞳と、サチの茶色の瞳が交差し、2人の唇がゆっくりと重なった。

それからセンジュと、サチは皆に祝福され夫婦になった。センジュは西岸寺の若き住職

になった。幸せな日々・・その矢先、欲界から欲界の王(波旬(はじゅん))が手下の魔羅どもと共にセンジュと、

サチを亡き者にしようと、攻めてきた。波旬は不気味にニヤリと笑うと、

『グフフフフ・・ミロク、そして千手観音よ。わし自ら滅ぼしてやろう・・・』

波旬と魔羅どもと戦うセンジュ、『ミロク、死ねえ――!!!』波旬がサチに攻撃を

してきた。「サチは、ぼくが守る!!」ガシイッ!!なんと、波旬の巨大な拳をセンジュの

千手天衣が受け止めた。次々と繰り出される攻撃をひらりひらりと、よけていくセンジュ。

「その仏像から放れろ!波旬、ぼくは仏像を壊したくない!!」とセンジュが叫ぶと、

『甘い考えだ!死ね!千手観音――――!!!』と、波旬が襲い掛かってきた。

センジュ「そうか・・ならば、ぼくは世を救うため、お前を倒す!!!」

波旬の最凶の技がセンジュを襲う、だが、今や如来クラスの強さになったセンジュの敵

ではなかった。「食らえ!これが、ぼくの究極の仏理攻撃、(因果応報)だ!!!」

「うおおおお―――!!!」千手天衣から繰り出される物凄い勢いのパンチが波旬を

叩きのめす、波旬『ギャアアアア―――!!!』波旬は断末魔の叫び声をあげて、

消し飛んだ。波旬の死により、欲界と魔羅は滅んだ。その時、空に大日如来が浮かび

センジュと、サチに告げた。「センジュ・・そして、サティよ・・よくぞ、欲界の王

波旬を滅ぼしてくれました・・・褒美にサティが死した後も、生まれ変わっても永遠に

センジュと共にいられるようにして、さしあげましょう・・・」その言葉を聞き、

センジュとサチは喜び「「ありがとうございます!大日如来様!」」と、深く頭を下げた。

そして、2人は見つめあい甘い口付けをした。その日からしばらくして、サチは縁側で

センジュにお茶を入れながら切なげにつぶやいた。「ねぇ・・?センジュ。私は、

あなたとの子供が欲しいのです・・でも、あなたは仏・・生身の人間ではない、

所詮は(はかな)い夢でしかないのでしょうか・・・?」というと、センジュは茶をすすりながら

「出来るよ・・?」と、呆気なく笑っていった。サチは呆気に取られ「えっ?どうやって・・?」

とセンジュに詰め寄ると、センジュは頬を染め、にっこりと微笑み。

「あのねぇ・・ぼくの魂のカケラをサチの体内に送り込むの!ほら・・こうやって・・ね!」

というと、センジュはサチに口付けをした。センジュの口からサチの体内へ魂のカケラが

入っていく・・・数ヵ月後、サチはセンジュの子を身ごもった。

―――――大好きだよ!サッちゃん。ずっと、ずっと一緒にいようね!―――――

その後、センジュは如来に進化しダイニチと名を変えた。ダイニチとサティは共に

世界中を旅し、人々をもれなく救うため、苦しくも楽しい日々が続いたという。

■■■■■■後書き■■■■■■

ここまでお読み頂き、ありがとうございました。

シャーマンキング完全版でセンジュ=ダイニチが、公式発表されましたよね。

センジュ君とまた、会えて嬉しかったのですが、正直な感想・・・

ダイニチに進化したのに幼児化してるーーーー!!?(大ショック!!可愛かったけど笑)

というのが、本音でございました。だってね。仏ゾーンの本編で言ってたじゃないですか、

「魂が成長すれば姿も成長する」って、だ・か・ら成長したカッコイイセンジュ君を

期待してたんです・・サティ様の想いせつな過ぎるっす。(涙)

それで、せめてお話の中だけでも成長したセンジュ君と、幸せになって欲しい!

と、思って書いたのがこの話でした。少しでも楽しんで頂けましたら幸いです。

その他イラスト部屋に(センジュ君、ジゾウ君、サッちゃん)を加えました。

よろしければ、見ていってください。


2009年 4月3日


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