水野俊哉の新刊インタビュー Vol .2 
「弁護士が書いた 究極の法律力」
日時 2010年9月10日(金)
 
◆「弁護士が書いた究極の法律力」(法学書院) 木山 泰嗣 さん
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【プロフィール】 
横浜生まれ。弁護士(鳥飼総合法律事務所)。上智大学法学部卒。
専門は国税を相手に課税処分の違法性を争う「税務訴訟」。
専門性の高い本業のほかに、執筆業にもたずさわり、単著の合計は本書を含め9冊。
「弁護士が書いた究極の文章術」(法学書院)「小説で読む民事訴訟法」(同)などのロングセラー作品を次々と生み出している。
「難しいことを、わかりやすく」が執筆のモットー。雑誌での連載も多い。
USENラジオ(ビジネス・ステーション)への出演、講演・セミナーの講師としても幅広く活躍している。
著書には、「税務訴訟の法律実務」(弘文堂)「事例詳解 税務訴訟」(共著・清文社)、「判例解説 税理士の損害賠償責任」(共著・大蔵財務協会)などの専門書の他、「弁護士が書いた究極の勉強法」(法学書院)「究極の思考術」(同)などのビジネス書もある。
 
ブログ「税務訴訟Q&A(弁護士 木山泰嗣のブログ)」http://torikaiblog3.cocolog-nifty.com/blog/
Twitter  @kiyamahirotsugu

 

 
≪水野≫ こんにちは。
木山さんの「弁護士が書いた究極の法律力」早速拝読させていただきました。
興味深い内容で面白く、とても分かりやすかったです。
究極シリーズは、勉強法からはじまって、読書術、文章術、思考術、そして本書の法律力ときましたが、本書を出された意義について、お聞かせ頂けますか?
 
≪木山≫ 私は以前から、ビジネス書、一般書のジャンルでは、法律のことを分かりやすく
書いた本が少ないと感じていました。
全くない訳ではないのですが、あっても六法とは何か、憲法とは何か、という本ばかりで、法律の名前などを簡単に解説するという内容です。
それを読んだからと言って、何か身近な生活に役にたつというより、豆知識が増えるだけで、あまり役に立ちませんよね。
そこで、実際に使える法律、つまり究極の法律力について読者にお伝えしたいと思いました。
 
≪水野≫ 本のタイトルでもある、「究極の法律力」とはどういうことなのか、まだ本を読んでいない方のために、どのような意味があるのか教えていただけますか?
 
≪木山≫ 「究極の法律力」とは、実は「常識力」のことを言います。予想外に簡単なことだったでしょうか。実は細かな法律の知識を覚えるよりも、常識力が大事だということを知っていただきたいと思い執筆しました。
 
≪水野≫ 常識力とは客観的な視点だと書いてありましたが。
 
≪木山≫ はい。常識力、つまり客観的な視点とは、こういうことです。
例えば、もめ事があった場合、民事裁判を起こした「原告」がいて、民事裁判を起こされた「被告」がいます。それぞれ対立する立場となりますよね。
そこに関係者や利害が絡むと物事は複雑になっていきます。
それぞれの立場にそれぞれの主張があり、正義があり、常識がありますよね。
弁護士は、自分の依頼者の利益のために依頼者寄りの見方をしますが、「裁判」の「判決」はどちらの立場にも与(くみ)しない、客観的な視点にたって、判決を言い渡しているのです。
 
≪水野≫ なるほど。つまり、裁判官はどちら寄りにもならず、客観的な立場で判決を出すということですね。
判決を言い渡されて不服に思う人もいるかもしれませんが、自分のことだからそう思うのであって、人のことなら、もっと冷静に見れるのかもしれませんね。
その第三者的で一般的な「常識感覚」で判決を言い渡すのが裁判なので、細          かな法律を知らなくても、常識的な視点があれば、大丈夫ということでしょうか。
 
≪木山≫ おっしゃる通りです。細かな法律についての知識を身につけられることも大事ですが、それよりも、私は、法律とは、誰の立場にも与(くみ)しない、俯瞰的(ふかんてき)な視点で見た「社会通念」すなわち、「常識力」こそ、法律力だということを、本書を読んで知ってもらえればと思っています。
客観的な常識力とは何かについて、興味を持ち良く理解していただけるように、身近な事例を本書にあげてみました。
 
≪水野≫ 確かに、とても面白い事例が多かったです。
章立ても興味深いものばかりでした。どのようにこの章立てを考えられたのですか?
 
           1章 究極の法律力とは何か?
           2章 契約書に書かれていることは絶対なのか?
           3章 契約書を読んでいない場合には、無効だと言えるのか?
           4章 口約束では契約は成立しないのか?
           5章 結婚している間にした契約は、離婚すれば解消されるのか?
       6章 契約書があれば、いつでも、すぐに権利を実現できるのか?
 
≪木山≫ 実は、一般の法律相談には、良くある相談のパターンがあるんです。
そのパターンというか、良くある事例を取り上げて、章のタイトルとして興味をひくようなものにしました。
 
≪水野≫ 実際に相談を受けていらっしゃるだけあって、リアルですね。
 
≪木山≫ この本の例は、良くあることをフィクションとして書いたのですが、実際に執筆中に、事例と全く同じような内容の相談を受けました。
後で自分のことをネタに書いたと思われると嫌だな、と頭をよぎったのですが()、そういうことが起こりえるくらい、一般の人の相談というものには典型例があります。
 
≪水野≫ 良くある事例について、身近なものでお話を伺ってもよろしいですか?
 
≪木山≫ まず、契約書でしょうね。
普通の社会人であれば、マンションを借りる時に賃貸借契約にサインするなど、様々な場面で契約書にサインすることは良くありますよね。
サインは、ただ名前を書くだけだと軽く考えていらっしゃるかもしれませんが、ちゃんと、法律上の効果が発生しているんですよ。その意味をもう少し分かっていただければと思います。
 
≪水野≫ 契約書を交わすにあたって、専門家からのアドバイスはありますか?
 
≪木山≫ 契約書というのは、信頼関係が崩れた時に、そのトラブルをどう扱うかということの取り決めなので、実は契約書は作る側に有利にできているんです。
提示された場合、ひな形としてはあるかもしれませんが、ちゃんと自分で読み、不利だなと感じたらここはどういう意味ですか?と聞いてみる。ここは変えてくださいという提案をしてみるといいでしょう。
 
日本人は「言っては悪いかな」と遠慮する国民性があるのですが、契約書にサインすると納得したとみなされるんです。
信頼関係が前提とはいえ、後々不服が出てくることもあり得ますので、疑問に思うことがあれば、サインや捺印する前に確認してみる方がいいと思います。
 
≪水野≫ 契約書を交わす時は良く内容を読んで、遠慮せず、疑問に思ったら聞く方が、
後々トラブルにならないということですね。
 
≪木山≫ 契約書を提案する側は、自分に都合がいいように作成しています。だからそれでOKしてもらえるとは想定していないはずで、交渉があることを前提にして作っています。ただし、そのまま押してもらえれば一番なので、「お願いします」しか言わないんですよ。
 
≪水野≫ なるほど。簡単にサインや捺印はしない方がいいということですね。
 
≪木山≫ そうですね。ちゃんと読んでいただいて、その上でトラブルに巻き込まれた時
のために、知識を身につけていただきたいです。
弁護士に相談するにあたっても、単に相談すればいいというのではなく、事前に証拠、資料、記録をとっておくなど、準備が必要です。
そういうことも、本書には書いてあります。使える知識として、知っておいて頂ければと思います。
 
≪水野≫ ポイントが分からないと単なる悩み相談になってしまうでしょうね。
有効に専門家の方の知識を活用できなくて、自分が損してしまう場合もあるでしょう。言った言わない、ということをどう考えたらいいかということを説明した章が興味深かったです。
 
≪木山≫ 口約束については、サブタイトル(「口約束では契約は成立しないのか?」)
にもってきたくらい重要なんです。
契約書がないと契約を成立しないと思っている方もいらっしゃいますが、ほとんどの契約は契約書や書面がなくても法律上の効果は発生するんですよ。
 
ではなぜ契約書があるかというと、口約束だけだと約束があったということすら説明できないので、証拠が必要なんです。
本当にトラブルに巻き込まれた時、不当な言いがかりだったり、自分が貸したお金が
返ってこないなど、人は問題が発覚して初めて「どうしよう」と思うものなんです。
本書を読んで頂いて、トラブルとは、あらかじめどんな感じなのかということを知っておくといいと思います。
 
≪水野≫ 他にも、ビジネスの事例もありますね。恋愛中のお金の貸し借りや、結婚した時と離婚した時のお金の章も身近ではないでしょうか。
 
≪木山≫ 離婚はとても増えていますね。
問題になるのは、お子さんがいれば親権、マンションを購入していた場合はそれをどう分けるか。連帯保証はどうか。ローンの分与など。この本は知識としても役に立つでしょう。
 
≪水野≫ ところで、先生の専門は何ですか?
 
≪木山≫ 企業や個人の方の税務上の法律問題を専門としています。税務訴訟といわれる分野です。
 
≪水野≫ そうですか。金融と法律を合わせた本も是非読んでみたいですね。
 
≪木山≫ それは確かに、私も書いてみたいと思う分野です。
マネーリテラシーと法のリテラシーを組み合わせて、読者の方の役にたつ本を書けたら嬉しいです。
 
≪水野≫ 日本人は法律について無知だと本書にも書いてありますが、いかがでしょうか。
 
≪木山≫ その理由は日本には法教育の土台がないからなんですよ。
小学校6年生で憲法について学びますし、中学の公民でも憲法や相続について学びますが、試験前に丸暗記するだけの知識で、大人になれば全て忘れてしまいます。
実際に社会で生活をしていて、問題が起きた時に個人の方が自分の身を守る。
自分の権利を実現するためにこそ、知っておいた方がいい法律の知識があるんですよ。実際に身近な分野をもっと小中高で教えた方がいいのではないかと思っています。
 
≪水野≫ 木山さんならどこが大事だと思われますか?
 
≪木山≫ 例えば裁判とは何かということがあります。
裁判は、刑事裁判ばかりが脚光を浴びていまして、有罪か無罪かのシーンは有名ですし、裁判員制度なども注目されていますよね。
ところが、一般の人にとっては、民事の裁判がすごく重要なんです。
例えば、人と人とのトラブルが起きた時に、貸したお金が返してもらえない。友人に貸したけれど返してもらえない。その裁判に勝つためにはどういう準備をしておけばいいか。
訴えられないように防御するには、どういうことをしておいたらいいのかということを伝えたいと思います。
 
≪水野≫ 法知識がないというのは、無防備に感じますね。
 
≪木山≫ ええ。現実として専門家である弁護士と、一般の方の法律の知識はものすごく差があります。あって当たり前ですが、最低限、契約書に署名して、ハンコを押すというのは、どういう意味を持っているのかくらいは、知っておいてほしいです      ね。契約書ではなくて紙切れに書いた場合は有効になるのかというのもありまして、書けば有効になるという知識は、日常的に使える部分です。
 
≪水野≫ お金、結婚、離婚、ビジネスでのトラブルなどは、実際に経験しなくてすめばいいのですが、いざとなった時のためにも最低限、前もって知っておいた方がいいこともありますよね。
 
≪木山≫ 人は経験をして、初め学ぶんです。それはそれで実践的な勉強法ではあるんですが、そうなる前に知っておいてほしいと思います。
困った時は弁護士に相談すれば、それだけで解決することも多いですが、事前にある程度知っておいた方が、不安がなくなるのではないでしょうか。
 
≪水野≫ 弁護士さんのことが、怖いとか、高いんじゃないかという理由で行けない人もいるのではないでしょうか。気軽に相談していいものなのですか?
 
≪木山≫ 困った時は、是非、弁護士に気軽に相談して頂きたいです。
仮にこんなことで相談していいのかな。お金がかかるんじゃないかなど、心配になると思いますが、1回の法律相談は1時間1万、2万など事務所によって違いますが、病院にいって面談料がかかるのと同じです。
不安で一人で悶々としているのなら、聞いてスッキリした方がいいと思いますね。
相手が弁護士であっても遠慮しないで、疑問に思うことは全部聞いてください。
 
ただ、私も病院に行って、お医者さんに診てもらった時、ぼそぼそとした短い説明のみだと不安になります。病名を聞くと答えてくれますが、結局お医者さんも忙しいので、自分のことは自分で勉強しないと良く分からないと、その時感じました。
  
法律のことも同様で、弁護士に相談するとなると緊張するかもしれませんし、聞いたことのないような難しい専門用語をシャワーのように浴びせられると ドキドキしてしまうのではないでしょうか。
そういう分かったようで分からないような、もやっとした時に、お役にたてる本を書きたいと思いました。本なら分かるまで何度でも読んでいただけますし、じっくり理解していただけますよね。
 
≪水野≫  本当に木山さんの本は、非常に読みやすく、理解しやすいと感じています。
何か工夫されているところはありますか?
 
≪木山≫ はい。本書ではルビを多く使っています。
実は、私が大学の法学部ではじめて法律の勉強をした時、大学から指定された本の漢字が外国語みたいで全く読めなかったんです。
理由はルビが振っていなかったからです。
難解な漢字が読めないと、言葉の意味が分からず、内容が頭に入ってこないという現実がありました。
そこで、私の苦労した体験を生かして、編集者の方からは、「ルビが多すぎではないですか」と言われるくらいルビを振りました。
一般の人は法律用語になると漢字が読めないことも多く、読めないことによって挫折してしまい、それが原因で知識をふやしてもらえないのは残念だからです。
 
≪水野≫  とても細やかな心配りですね。
その辺りは専門家の法律家の先生でありながら、読書術、勉強本など一般向          の方に分かりやすく書いていらっしゃる方だからこそ、気づかれるのでしょうね。シリーズのどの本もわかりやすく書かれている印象がありますね。
 
≪木山≫ 毎年400冊以上本を読んでいて、ふだんは読者の立場にいるので、読者の立場で本づくりを考えられたらと思って書いています。
途中で挫折してしまう本や、難解なものだと忙しいビジネスマンには歓迎されないでしょう。
なので、難しいことでも、できる限りわかりやすく書くことを心がけ、推敲段階でなんども書き直し、わかりやすい文章になるように努力しています。
 
≪水野≫  日経アソシエ2010年8月号の読書特集で、「読書術のマトリックス」を私が担当したのですが、木山さんの「弁護士が書いた究極の読書術」を取り上げさせていただきました。選ばせていただいた理由としては、木山さんの本は読みやすく、面白いからです。
それにしても、普段弁護士さんのお仕事をされていながら、2年間で8冊出版していらっしゃるのはすごいですね。弁護士さんは資料も沢山読んでいらっしゃるし、多忙だと思いますが、どうやって本が書く時間を作っていらっしゃるんですか。 
 
≪木山≫ 私自身が読書が大好きなんです。1年間に400冊、500冊読んでいて、圧倒的に99%読者の立場です。ですから、執筆の時間は私にとっては至福の時であり嬉しい時です。
執筆は本業が終わって夜の12時から夜中に書いています。この本を書いている時は、3時前に寝たことがないという生活を1カ月間続けていました。書いている時は結構きつかったです。
 
≪水野≫  それは大変でしょうね。本業もお忙しいのですから。
 
≪木山≫ 1冊書き終わると、あまりにしんどいので、もうやめようと思うんです。でも、
書店に並んでいるのを見た時の喜びは、本当に言葉にできないほどです。
そして、読者の方がブログで感想を書いてくださったり、読者カードを送ってくださることがとても嬉しいです。
フィードバックをいただけるのは、出版ならではの醍醐味で、じゃあ、次は何を書こうか、というモチベーションに繋がります。
後は、自分の両親などに読んでもらえると一番嬉しいですね。
両親が生きているうちに出せる時にどんどん出していきたいです。
 
≪水野≫  読者からのメッセージは、とても心強いですよね。分かります。
ちなみに、年間400冊もの読書の時間については、本業、執筆で忙しいのにどうやって読書の時間を捻出されているのでしょうか。
 
≪木山≫ 読書の時間は、隙間時間を使います。電車で通勤しているので、電車の中は当然ですが、駅のホームで立っている時も読んでいますし、お昼休みも1人でスタバで本を読みながら過ごしています。
夜の通勤の帰りの最寄り駅の喫茶店で30分読んだり、夜中に読んだりして時間を作っています。
 
≪水野≫  なるほど。隙間時間を使うとかなりまとまった時間になるんですね。
木山さんは今後、どんなテーマでの出版を予定しているんですか?
 
≪木山≫ 既に出版が決まっているのが何冊かありますし、来年の春には今までとは全然違う本も企画しています。
チャレンジしたい分野としては、一般の社会人向けの勉強の本を書いてみたいと思っています。後は、小説を書いてみたいです。過去に小説形式の法律の本は2冊出していますが、そうではなく、純粋な小説です。
 
≪水野≫  これからが楽しみですね。それでは、読者への一言をお願いします。
 
≪木山≫ 多くの方は法律を、勉強まではいかなくても、知っておいたら得だと思っていらっしゃるでしょう。でも、難しいので後回しにされているのではないでしょうか。
会計は会社で働いていると、より使わざるを得ないので、一生懸命勉強するでしょう。
法律も会計と同じくらい重要なものですので、本書「弁護士が書いた究極の法律力」を何度も繰り返し読んでいただき、究極の法律力でもある、客観的な常識感覚を掴んでいただければ嬉しいです。
 
≪水野≫  今日はためになる法律のお話を、存分に有難うございました。
 
≪木山≫ こちらこそ有難うございました。
 
                                                                                          (構成 金子美子)
 
◆インタビュアー 水野 俊哉
 
【プロフィール】1973年生まれ。ビジネス書著者。
著書一覧 「成功本50冊勝ち抜け案内」(光文社)「成功本51冊もっと勝ち抜け案内」(光文社)「お金持ちになるマネー本厳選50冊」(講談社)「知っているようで知らない 法則のトリセツ」(徳間書店)「「ビジネス書」のトリセツ」(徳間書店)「モテ本案内51」(ディスカヴァートゥエンティワン)「誰もが無理なく夢を引き寄せる365日の法則」(きこ書房)「ビジネス本作家の値打ち」(扶桑社)「マトリックス図解思考」(徳間書店)「徹底網羅 お金儲けのトリセツ」(PHP研究所)「ビジネス用語の常識・非常識」(双葉社)
 
 取材/日経新聞、日経ビジネスアソシエ、日経キャリアマガジン、ゆかしメディア他
 
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