短歌−蓑虫の揺れ
 

 

 

風となるまで

 
 
 
 

太陽が昇る東方紫の光あつめる田の水面(みなも)

山里の雲の割れ目にこぼれゆくひかりを吸って雑木の林

棚田に水が流され春雲ひとつのぞいてゆけり

かわひらこ紫陽花の顎にとまりいて丸めた口をときはじむ

雨はとおくより来て水の田を凹ませながら見えなくなりぬ

浮き草が稲穂のとなりに葉を広げ初夏へむかう風波のなか

蜻蛉(あきつ) 空気の闇に生まれくる透明な羽たたませたまま

夕暮の幹をつかむ蝉の殻 わ れ て 声の立つ

赤とんぼ草の穂先をつかまえて地球のめぐり風のゆれ

みどり風稲穂のとがりかきまぜてかきまぜてゆく風となるまで

しずかに時は流れて立ち葵ひとつひとつの花の閉じ口

オハグロトンボ緑の内に染まるようつんとしっぽを差し出しており

雑木林のゆきの あさひが影を のばしつづける

茅葺きの民家の扉がすこし開き老婆がまわす臼の音

棚田の畔をゆく人にほつりほつりと闇のかさなり

 

 
 
*初出:[BLEND]創刊号(2002年8月)
 
 
 
 
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© Mizuho TAKAHASHI  http://homepage3.nifty.com/mino-mushi/
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