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小浜逸郎 『学校の現象学のために』 大和書房 ★★★

教育はどうあるべきかを説く評論家は多いが、教育がどのように語られてきたかは、あまり検証されていないのではないだろうか。著者はこの本の第1部で、教育評論家たちの言説を類型化して批判している。そこでは、教育に対する過剰な思い入れが、その教育論全体をいかに損ねているかが明快に解き明かされる。第2部では塾経営者の視点から見える現実の生徒たちの姿を描き、マスコミを通じて伝わってくる生徒像がいかに実態とかけ離れているかを示す。この本もだいぶ古いものとはなったが、今でもこのレベルに到達したものは少ない。Amazon.co.jp

小浜逸郎 『子どもは親が教育しろ!』 草思社 ★★

小浜逸郎氏による教育論。全5章のうちの最後の章が、本書のタイトルになっている。まずは教育評論家たちの無責任な言説を論破してから、教育問題をどのように見るべきかを提唱し、次いでそれまでの教育改革案がなぜ有効でないかを説く。また、ただ評論するだけでなく対案を出せという声があったのか、自分なりの教育改革案も提唱している。ただ、その改革案の実現可能性や施行されるまでの時間のことを考えると、現場の教師には興味の持てない内容かも知れない。かつての著作より、文章はずっと読みやすくなっているし、議論も分かり易くなっている。 Amazon.co.jp

正高信男 『ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊』 中公新書 ★★

「サル」とはずいぶん挑発的なタイトルだと思ったら、著者はサルの生態をよく知る専門家だった。現代の生徒の行動様式を「家のなか主義」と表現したのは的確だと思う。学校を公的な場として成り立たせようとする教師の努力が困難な理由がよく理解できる。Amazon.co.jp

『教育勅語―教育に関する勅語』 ライフ社

普遍的な徳目を掲げているにもかかわらず戦後廃止された「教育に関する勅語」、いわゆる教育勅語の本。大原康男氏の解説で、教育勅語が作られてから廃止されるまでの歴史的な経緯が分かる。漢訳・英訳・仏訳・独訳も掲載されているが、欲を言えば現代語訳もあればよかったように思う。わずか数十ページの小冊子ながらも、なかなか立派なハードカバーの装幀がうれしい。 Amazon.co.jp

森信三 『修身教授録―現代に甦る人間学の要諦』 致知選書 ★★

昭和12年から2年間にかけて師範学校で行った修身の授業の記録。森氏は当時の修身の教科書に満足せず、自分の体験をもとにすべて自分の言葉で授業を行おうとした。それで、生徒の側に記録が残るように、一字一句を筆記させたのである。将来教壇に立つ学生たちに対して、教師としての生き方や国民教育のあり方を説いた森氏の話は、教員を目指す学生だけでなく現役の教員にも大いに有益であると信ずる。 Amazon.co.jp

草柳大蔵 『絶筆 日本人への遺言』 海竜社 ★★

草柳大蔵氏が闘病生活の間に書いた教育論に、教育と人生訓に関する原稿を加えて一冊の本としたもの。その教育論は、古今東西の実例に範を求めているので、どれも説得力があり頷けるものばかりである。 Amazon.co.jp

グスタフ・フォス 『日本の父へ』 新潮文庫 ★★

栄光学園の初代校長であったグスタフ・フォス氏が日本の父親に向けて書いた教育論。自分の父親の想い出を交えながら、自信を持って子育てができない父親たちを叱咤激励する。フォス氏のようなカトリックの神父が家庭や子育てについて論じても、結婚もしていないし子供もいないからという理由で軽んずる人がいる。しかし、本書を読めば、結婚や家庭の意義を一番深く理解しているのはカトリック教会*である、ということも理解されるであろう。最後の章は、教え子の結婚式でのスピーチを集めたもので、内容の重複をいとわず、家庭づくりの大切さを繰り返し説いている。 Amazon.co.jp

外山滋比古 『空気の教育』 福武文庫 ★★★

英文学者の外山滋比古氏がエッセイ風に綴った教育論。文庫化される前は、「しつけのための七章」という副題が付いていた。「空気の教育」とは、家風や校風や風土によって、自然と必要なことを身に付けていくような教育のことであり、そのような「空気」を作り維持していくことが肝要であると説く。子育てに役立つ知恵が満載の書。 Amazon.co.jp

外山滋比古 『子育ては言葉の教育から―幼児教育で忘れてはならない39章』 PHP文庫

かねてから言葉の教育が大切だとは思っていたのだが、近頃は、言葉を教えることが教育であるとさえ思うようになった。良く育てようと思えば、良い言葉を教える必要がある、という具合である。そんな折りにこの本を読んでみて、意を強くした。著者の外山氏は英文学の教授ではあるが、日本語についての著作も多く、幼稚園の園長を兼任した経験もある。言葉の専門家として、育児と言葉との関わりを鋭く観察している。 Amazon.co.jp

岸本裕史 『見える学力、見えない学力』 国民文庫

この本は、陰山メソッドで有名な陰山英男氏の師匠であり、百ます計算の元祖でもある岸本裕史氏が、20年以上前に書いたものである。旧版のときから良書だと思っていたので、改訂版が出たときは大きめのソフトカバーの方を買い求めたくらい気に入っている。この本の特徴は、単に家庭学習の大切さを説くだけではなく、生活のあり方にも目を向けているところである。特に、学力の基礎としてことばを重視しており、日常の読書はもちろんのこと、親の語りかけ方や、テレビが与える影響にも気を配っている。と言っても、某弟子のように「学力が上がる16か条」などと煽ったりはしない。見出しは控えめであり、本文は小学生の保護者会で語るように書いてあり、非常に読みやすく分かりやすい。出版社の大月書店は左翼系だが、この著書に関してはそのような雰囲気がそれほど感じられないので、安心して読むことができる。 Amazon.co.jp

E.D.ハーシュ 『教養が、国をつくる―アメリカ建て直し教育論』 TBSブリタニカ ★★

原題は Cultural Literacy で、本文中では文化常識と訳されている。その文化常識の具体例として、巻末に「アメリカの基礎教養五〇〇〇語」が収録されている。国民が共有する文化常識を持ち合わせないということは、社会に参加する上でハンディを負わせることになる。従って、国民に必要な常識や読み書きの能力を、確実に身に付けさせることこそ、教育の要諦であるという。そう言えば日本の私立の学校では、プログレス Progress in English という英語の教科書が使われている。そのテキストには英米文化を知るための読み物が沢山載っているが、同じような狙いがあったのかも知れない。 Amazon.co.jp

鈴木鎮一 『愛に生きる―才能は生まれつきではない』 講談社現代新書 ★★

数々の名ヴァイオリニストを生み出した鈴木鎮一氏による教育論。その教育法は「スズキ・メソッド」として世界に普及している。辛抱強く繰り返し練習すれば、どんな技術も習得できるという考えは、別段目新しいものではない。しかし、失敗したり、上手く行かなかったりすると忘れがちなのも確かだ。ときどき読み返して、そのことを思い出すといいだろう。また、クラシック音楽*の演奏家の師弟・交友関係などが分かるのも興味深い。 Amazon.co.jp

Quotes

こうして理念を声高に論ずること、また理念に理念を対置して批判の泥仕合をくり返すことが、教育の現実を把握することと等しいという錯覚がいくらでも許されることになる。 ― 小浜逸郎


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