人工股関節では金属などの異物を体の中に入れるわけですから、運悪く細菌感染などを生じるとその表面についた細菌を殺す事が出来ません。なぜなら、人工物は血液が流れていないため、細菌を殺す免疫担当細胞や抗生物質などがたどり着く事が出来ないからです。その為、人工関節が感染を起こすと抗生物質などのお薬だけで治すことは難しく、多くの場合手術が必要です。しかし、最近ではこの手術自体も関節鏡を使用するなどMISでのアプローチが使われるようになってきました。人工股関節の場合でも股関節鏡が使用可能です。しかし、そもそも感染を起こさない事が一番大事ですから人工股関節の手術はバイオクリーンルームと言われる非常に細菌の数が少ない部屋で行い、また術者も宇宙服のようなヘルメットをかぶって手術を行います。このような工夫により、感染を生じる割合は非常に低く抑えられています。
血管の中で血液が固まって血栓というものを作る事がありますが、これの大きいものが出来ると肺の大きな血管を詰まらせてしまい、最悪の場合死亡してしまう事もあります。このような状態をエコノミークラス症候群と呼び、飛行機などで長距離を同じ姿勢でいると発生しやすくなります。この合併症を防ぐために血液が固まりにくくなるお薬を使用したり、下肢にマッサージ機を取り付けて大きい血栓が出来ないように注意しています。
人工股関節は関節の袋を破って手術を行うわけですから、手術後早期には脱臼しやすい状態になります。また、設置した人工関節のソケットとステムが当たることによって脱臼する場合もあります。そこで脱臼を防ぐために大きな骨頭を使用したり、脱臼しにくくなる手術方法を採用したりと様々な工夫がされています。 |