| 人工膝関節の手術を受けるタイミング |
人工膝関節の手術を受ける患者さんで一番多いのは変形性膝関節症の方たちです。この病気の場合、安静にしていれば痛みは引いてきますから、人工関節の適応になるほど悪くなっていても痛い動作をやらずに痛み止めや注射で痛みを抑えているうちに次第に痛みは治まってきます。なぜなら、変形性膝関節症では負担のかかる部分に骨が増えてきて、負担そのものには対抗できるようになってくるからです。しかし、変形が進むと動く事によって痛みが強くなるので生活の質はかなり落ちてしまいます。たとえば少し長い距離を歩くと膝が痛くなったり、あるいは今まで行けていた旅行に行けなくなる、などの症状が出てきます。
このような活動性の変化を加齢に伴うものとして受け入れてしまえばあまり痛まない生活がおくれますがやりたい事をかなり我慢しなければいけません。
思い切って手術を受けてやりたい事をやるのか、あるいは手術をされるくらいなら動けなくなっても構わない、と考えるのか。このあたりは最終的にはご本人が決める問題だと思います。ほとんどの人はこの両極端の間を揺れ動きながら症状がひどければ手術を決心しますし、生活の質の低下が我慢できるレベルであれば痛み止めや筋力訓練、関節注射などでしのいでいるようです。
ただ注意しなければいけないのは加齢に伴って色々な内臓の病気も増えてくるという点です。手術をすれば良くなるけれど、怖いからやりたくなくて自宅から出来るだけ外に出ないようにする事で膝が痛くないように何とか生活を送っていた人が、何年かの年月を経た後、ほとんど歩けなくなって来院する事があります。ご本人は手術をする決心をしているのですが、数年前には無かった心臓病が悪くなり、手術が出来ない、などということも実際にあります。この場合はもっと早く決心していれば手術も出来たし、痛い期間も短く、やりたい事もやれていたわけです。
手術をするかしないのか、それを決めるのは結局自分が何をしたいのか、という事に尽きるように思います。「思い切ってやりたい事をやるか?それとも少し生活の質を落として痛みを抑えるか?」いずれにしても患者さん自身が自分で納得できるように決めた人生を送るのが一番良いのだと思います。 |
リウマチ患者さんも膝が悪くなる人が多く、人工膝関節の手術を多く行っています。リウマチの場合、変形性膝関節症と異なるのはリウマチによる滑膜炎が原因となって膝が痛くなり、さらには関節破壊が進行してきている事です。治療としては滑膜炎を抑える事が一番重要なのですが、関節破壊が進行してしまっていると、たとえ滑膜炎を直したとしても破壊された関節面同士がこすれあう事で更なる関節破壊が生じる、という状況になってきます。こうならないためにも膝の滑膜炎は早めに治療すべきであり、現在は早期から抗リウマチ薬を使用するようになっています。薬の効きが悪ければ一時的にステロイドの関節内注射を行う事もありますし、抗リウマチ薬や生物学的製剤が有効ではあるものの膝にだけ効かない、といった状態であれば、関節鏡視下滑膜切除を行う場合もあります。それでも関節破壊が進行してしまって膝がぐらぐらするようになると、これを放置する事で痛みも出ますし関節破壊もよりいっそう進みます。膝のぐらぐらに対してはジョイントの入った膝装具を使用することで不安定感を制御できますから、人工膝関節の手術を行う前に是非一度は膝に支柱のついたサポーターを試してみるべきだと思います。
しかし、それでも痛みが出る場合は人工膝関節置換術の適応になります。この手術は少なくとも歩けるうちにやってしまった方が無難です。歩けなくなってから手術を計画すると、たとえ手術で膝の痛みが取れても筋力が弱くて十分な歩行が出来ないことがあるからです。歩けなくなるほど悪くなる前には手術を考えた方が良いでしょう。
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