静かな夜の愛し方

瞳を閉じて、そして抱いて2



 優しくして欲しいとは思わなかった。
 ベッドに沈むエドワードの思考は、流されながらもどこか冷静だ。
 取引と称してロイに体を要求した。好意からはじまった訳ではないのだから、ロイがエドワードに優しくする理由はない。
 乱暴とまではいかないが、荒い扱いをされると勘弁してほしいと思う。相手を嫌いになれない自分を思い知り、自覚は辛い想いを確認する。
「考え事か? 余裕だな、鋼の」
 ひとの心を見透かす台詞にまぶたを開けば、照明で影になったロイの顔が見えた。苦笑とも、冷笑ともつかない笑みだ。
 せわしない呼吸で返事もできないエドワードは、首を横に振ってこたえる。
 「存分に」と行為がはじまる前に宣言した通り、ロイは唇や指、吐息や眼差しをも使ってエドワードを追いつめた。慣れない、というよりはじめてに近いエドワードがこたえられるはずもなく、ただ鳴いてばかりだ。
「も、もう・・・」
 体の熱をどうにかしてほしくて、エドワードはねだった。果てたのは一度や二度ではない。散々焦らした挙げ句の解放に、体は敏感になり暴走が止まらなかった。
「いきたいかい?」
 優しい声にエドワードはうなずく。
「なら、そろそろ私もきみに入れさせてもらうが・・・」
 いいかな? と、耳元に口を寄せてささやく声音に、エドワードは震える。
 秘部に侵入してきた指にエドワードは不快さと驚きの混じった顔でロイを見た。
「いきなりは入れられないだろ?」
 呆れるような口調はおもしろがっている。
「じっくりと慣らしてあげるよ」
 時間をかけると、含んだ台詞にエドワードの目尻から涙が零れた。
「泣くんじゃない。きみのためにしてるのに、私が悪いみたいじゃないか」
 ロイの舌がエドワードの涙を舐める。
「辛いようなら私に掴まってなさい」
 何気ない言葉だった。自然にでてくるあたり、普段使ってる台詞だろうとエドワードは察する。だが、ロイにしがみつくのはためらわれた。
「冬だから、冷たいんだ・・・」
 途切れがちな息のなかエドワードは呟く。
 突拍子もない発想も理詰めで片付ける少年の、珍しい説明不足に、ロイは怪訝な顔で「なにが?」と聞き返す。
「機械鎧だから冷たい」
 エドワードの右腕は肩から先が金属だ。熱は持たない。冬は冷気を、夏は熱を吸収しやすい。一年通して彼が長袖、手袋を着用するのは防護の意味も兼ねている。
「冷たくはないよ」
 ロイは空いてる左手でエドワードの機械鎧の右腕に触れる。
「ぬるい、という温度だな。体の熱が伝わってるんだろう」
 そして、機械の指を甘噛みした。
 感覚のない部分から受けた刺激にエドワードは悲鳴をあげる。
「やめ・・・、大佐」
 感覚は錯覚だというのに、今にもイキそうになりエドワードは慌てる。
 エドワードの懇願を聞くロイでもなく、手の甲に口付けしたり、舐めたりしている内にエドワードは一カ所に集まる熱を放った。
 自身のあまりの不甲斐なさにエドワードが本気で泣きはじめると、ロイが頬を撫でて言った。
「これぐらいで泣いはいけないよ、鋼の」
 優しい声音の恐ろしい宣告にエドワードは体が竦む。
 泣いたり、悲鳴を上げたりする自分を意識できない激しさで、夜は更けた。


続く


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