静かな夜の愛し方
静かな夜の愛し方 エピローグ
「エドワードがいると事件が解決して大忙しだな」
中央勤務のマース・ヒューズが東方司令部に来てしたことは、仕事ではなく家族自慢だった。その後ようやく本題に入る。今回の本題=仕事は先日捕らえたテロリストの引き渡し手続きだった。
「おかしなぐらいに解決する。まったく、なんだってあんなに目立つのか」
「あれは一種の才能だな」
「おかげで私はオーバーワークだ」
ロイの部下が聞いたら「嘘つけ!」と激しく無言のつっこみを入れていただろう。唯一、堂々と進言する彼の副官は席を外して執務室に不在だ。
「普段さぼってるんだ。たまに忙しくても罰は当たらないだろ」
長年の親友はおもしろがっている。
「それにエドワードが絡む事件は、おまえさん楽しそうに仕事してるじゃないか。仕事の選り好みはよくないなぁ」
にやりと笑うヒューズに、ロイは肩をすくめた。自分でも気づいてなかった点まで言い当てられるとお手上げな気分になる。
「楽しそうにみえるか?」
「楽しいんじゃないのか? 女心を得意とするロイ・マスタングも、自分のことにはからっきしときたか」
質問を質問で返された。単純な問いも簡単に返さないのがこの男特有の話し方だ。
口は上手いと自負するロイだが、ヒューズには叶わなかった。
「まあ、おまえは学生時代からそんな感じだったけどな」
ヒューズは勝手に完結する。なにを思い出しているのか、しきりにうなずいたりしていた。
憎めない奴だとロイは思う。過去、それこそ三桁は越す勢いで浮かんだ思いだ。
学生時代から今日まで、思い返す日々には彼がいる。彼への想いを認めなければ、自分の人生の半分は灰色だったに違いないとロイは断言できた。そして、愛を知らなければエドワードの想いは切って捨てていただろう。
自分は愚かな男だと、ロイはしみじみ思った。
「ありがとう」
知らずに呟きが零れた。
鞄から封筒を取りだしていたヒューズが、手を止め「なにが?」と聞き返す。
「気にするな、礼を言いたい気分になっただけだ」
「非常にのろけられた気がするのは思い違いか?」
「のろけならおまえの十八番だろ」
一筋縄ではいかないふたりの核心をつかない会話は不透明だが、本人たちは充分に楽しんでいた。
「おれはのろけじゃなくて真実を話してるんだ。っと、こんな所で油を売ってたらエリシアちゃんのおやすみの時間に間に合わなくなる!」
おらよ、とヒューズは封筒をロイに渡した。
「これは?」
「読んでおけ。最近、異様な勢力を持ちはじめた宗教団体だ。太陽神レト教。リオールを聖地にしてる」
静かな夜の愛し方 エピローグ 終わり