Title:MilkAge

おすわり
お座りができるようになった時期をいうのは難しい。座らせること自体 は、3ヶ月もすれば始めていた。が、次第に傾いてくるのは延々と続いた 気がする。

座らせての遊びは、結構私が楽しませてもらった。とにかく次第に傾いて 来るので、なにかしら「つっかえ棒」が必要になる。黙ってみていると、 結構派手に頭から落ちて行く。勿論手の操作も慣れていないから、自分で 手を差し出すこともしない。「あぁ、やっぱり頭が重いっていうのは本当 なんだなぁ」と、支えながら悠長に考えもした。

「つっかえ棒」には、布製のものならなんでも利用した。座布団やヌイグ ルミを、脇にどんどん挾み込むように入れて行く。10分もすると、布製 の山の中に埋もれているのか座っているのか判らない息子が、できあが る。

日頃、夜中の泣き声や抱っこで苦労させられているのだから、それ位はニ ヤニヤしながらやってもバチは当たらない。此方がニヤニヤニコニコして いると、息子も何故か大抵は上機嫌である。それを良いことに、遊ばせて 貰う。静かな息抜きタイム。

写真
大手不動産屋が開発したビジネスパーク内に、我社はある。会社の周りは その名の通り、まるで公園のようになっていて、平日でも何組かの親子連 れがくつろいでいたりする。

ある日、小さな娘2人を連れているお父さんを見かけた。手には、大きな カメラがある。高そうな望遠レンズ付きである。娘を並ばせて、一生懸命 いい写真に挑戦しているのだろう。大声で、もう少し立てとか座れとか号 令を発している。

「はーい、笑って!」

「もう少し右...」

「ほらっ!、笑えって言ってるだろッ、コラッ!」(怒りの声)

「よ〜〜し、いい写真だ」

いずこも苦労しているなぁ、子供も大変だ。

白い歯
悠澄4ヶ月、ここで歯がお目見えする。「なんだか、下前歯茎が白いんじ ゃない?」が、その発端だった。歯はみるみる増えて行くが、同時に2つ の新たな葛藤が始まった。

1つは、妻との息子の「噛み付き闘争」。今までは、まぁまぁ静かにオッ パイを飲んでくれていた、いや、オッパイ・タイムが唯一の静寂の時だっ たかもしれない。それが、「コラッ!噛み付くな!」の掛け声がかかるよ うになって来るのだ。男の私にはその痛みは判らないが、相当痛いのだろ う。「コラッ!痛いって言ってるだろう!」、妻には悪いが私はニヤニヤ しながら、この妻子プロレスを眺めている。

もう1つは、よりひどい夜中の泣き声である。歯が出て来るのは、歯茎を 破ってその奥から歯が出て来ることを意味する。当然ながら、息子は痛が る。やたら泣くのである。いつもは抱き上げれば泣き止むのに、それがな い。しかも、何故か夜中にばかり集中したように思う。またしても、ボー ッとしながら夜中の抱っこ散歩をする羽目になった。

しかし、出たばかりの歯と言うものは、こんなに綺麗なものかと感心させ られる。歯抜けの笑顔も可愛いが、チョコっと出た純白の歯がそこについ ていると、可愛さが倍増する。

同時に、ヨダレがどっと出て、常にヨダレかけが濡れている状態になるの だが。

青森に帰る
就職以来殆ど出張などなかったのに、子供が生まれてからは、時々命じら れる。やっている仕事柄、どの時期に出張が必要かは自分が一番分かって いる。そして大方の場合、場所は本社のあるアメリカ東海岸(ボストン付 近)であり、期間は1ヶ月程度。会社の中で少しは認められてきたのかと 嬉しく思う半面、家族が離れて暮らすことが辛い。

この海老名の地に、乳飲み子を抱えて妻を残していくことは、近所付合い が少ない今は不可能である。ということで、親孝行を兼ねて、妻子をその 実家・青森に送ることにする。出張の1週間ほど前に、私も一緒に青森に 行く。そして、私も心の洗濯をして、ひとり戻って来て、渡航する。出張 が2週間を越えると、大抵このパターンで、私も津軽の取り立ての魚にあ りついた。

私は大阪生まれの大阪育ちである。それなりに田畑はあったが、「田舎」 とは呼び難たい。ところが青森の実家は、家のちょっと先には陸奥湾が広 がり、後ろを向けば田畑の先に津軽山地がそびえている。この地に住み続 ける体力も根性も私にはないが、「故郷」としては魅力を感じる。塩を含 んだ風を吸い込みながら、忘れてはならない事をここで子供と共に学んで 行きたいと思った。

出張先のホテルにて
Image 慌ただしく出張に飛び出して、仕事に精を出す。言葉が英語に変わるの で、恥ずかしながら私の語学力では身振り手振りで補わないと通じない。 おかげで、日本に居る時の2倍は体力も神経も使う。

アメリカは、夜が早い。家族持ちは先ず夕食を家族と共にとるのでさっさ と帰る。出張者は、一人でできることがなくなれば、話す相手がいなくな るので帰るしかない。孤独に食事を済まして、慣れないチップをやって、 ホテルに戻る。

いつもは帰宅後、5 kgほどの肉塊との格闘が待っている。ここには何もな い。誰も待って居てくれない。

結婚してから1年少ししか経っていないのに、この独身生活が少し淋し い。いや、妻には申し訳ないが、どちらかと言えば子供が恋しい。かとい って開放感がないわけではない。なんだか久々に持てた自分だけの時間と 言った感がないわけでもない。けれど、何をすればいいのかが浮かばな い。仕事一筋の会社人間が、定年退職した時にもこう感じるのだろうか。

持って来た日本の本にも、あまり没頭できない。どっぷりと育児漬けにな っている自分を感じる。

しかし帰国すれば、息子を抱きながら、あぁ自分の時間が欲しい...と嘆 くのだが。

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