Title:MilkAge

ハイハイ
つかまり立ちをしながら少し歩けるようになると、今度はハイハイの時代 になって来る。順序としては、ハイハイが先だと思っていたが、そうでは ないらしい。特に最近は、狭い住宅事情を反映してか、ハイハイをしない で歩きだす子供もいるそうだ。とにかく、息子は犬のように手足をつい て、えっちらおっちら移動する。

それまで悠澄のゆっくりとしたスピードに慣れてきたのに、突然家中が慌 ただしくなる。ハイハイのスピードは加速度的に高まって行く。ちょっと 目を離した隙に、思わぬ所まで達しているのだ。

オムツを黙って替えさせてくれないのもこの頃からか。足の筋肉を使わな ければ損とでも思っているかのように、どたばたと空中を蹴り、隙あらば 脱兎のごとく逃げ出す。

活動範囲がどんどん広がって行く。その分、今までなかった危険にもさら される。子育てが、「静」から「動」へと質的に変化して行っていた。

家具−その低さ−
狭い部屋を少しでも広く見せようと、我家にはなるべく背の低い家具を揃 えた。これは、妊娠中から妻からのヒンシュクを買った。一応は、2人で 決めたにも関わらずにだ。

何が不便かと言うと、大きく迫り出して来るおなかがつっかえて、背の低 い家具の奥には手が届かなくなるのだ。

この非難は、出産後には一旦止むが、小悪魔がハイハイしだした頃に第2 の波がやって来る。とにかく、どこでも手の届く所は全て開けないと気が 済まないらしい。最初は少しでも力のいる所は、幼児の非力さ故に無事で ある。が、その防衛線は瞬く間に後退して行く。

毎日のように、会社から帰ると、私はこの防衛線の後退のニュースを聞か された。「今日は、あの扉は無事だったけど、あと何日もつか...」。日 中の、妻子の攻防戦の激しさは見ることができないので、妻の文句を左か ら右に聞き流しながら、私は息子の知恵に実は感心していた。

1LKという狭い空間の中に、閉じ込められていれば、誰だってその辺の ものを開けたくなるだろう。しかしこの攻防も、息子の行動力の増加と、 好奇心の拡大で次第に鎮静化していった。他のオモチャ等に注意が行き、 1人遊びをするようになって行ったのである。ともかく、これで私は家具 選びの文句から開放された。

決まり文句
1才が近くなるにつれ、悠澄には、自分でやりたいことを持っているこ とを強く感じるようになる。私が御飯を食べさせたくともオカズを食べ たいと主張する。私が抱っこしたくても、私の手を振りほどき座りたが る...。

しかし、時にはやってはいけないことをしたがる。石を舐める、汚れたも のに触ろうとする、ナイフなど危ないものを欲しがる...。そんな時、私 がいう「お前のためなんだよっ」。

何をいっても悠澄は自分のやりたいことをやろうとする。やれなければ泣 き出す。そんな息子を見て苦笑いをしてしまう。何のことはない、私が親 から散々受けた言葉だ。

親が考えてくれた最良の道を、幾つ無視してここまで来たろうか。悠澄 よ、思い切り頑張って反抗してみなさい。真正面から受けとめてあげよ う。

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