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〜風鈴・日本の童謡と民謡〜
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演奏旅行でチューリッヒに滞在したとき街を散歩していたら、店先に飾られていたアラビアの民族楽器ウードがぼくを惹きつけた。お店に入ると人のよさそうなアラビア人が出てきて話し掛けてきた。
「ぼくは、サラ・エッディーンです。アラビアのヴァイオリンを弾きます」
「ぼくはクラシックのヴァイオリンを弾いているんですけど」
「おお、クラシックなんて凄いじゃないですか」
「でも、クラシックって退屈なんですよ。譜面に書いてある音を一つでも間違えるだけで指揮者に文句を言われるんだから」
「そうでしょ!ぼくに言わせればアレは奴隷ですよ。それがいやで今はアラビア・ヴァイオリンを弾いているんだ。そういうおまえさんはどんな日本のヴァイオリンを弾くんだい?」
“日本のヴァイオリン”???ぼくはその言葉に衝撃を受け「に・に・・日本には、日本ヴァイオリンがないんだ」と答えた。
アラビア、ペルシャ、アイルランド、アメリカ等など、その国独自のヴァイオリンが山ほどあるのに、どうして日本ヴァイオリンがないんだろう?ぼくは新しい日本のヴァイオリンをサラ・エッディーンに聞かせたいと思った。ぼくの夢はヴァイオリンで日本の心をかなでることだ。
日本の童謡や民謡を弾くことは、不思議な体験だった。クラシック音楽を弾くときは、様式だの構造だのと、いろいろ心の準備をしないといけなかったのに、童謡や民謡にはそんなカマエがぜんぜんいらない。とっても自然なのだ。それはまるで、やさしい夏の風が風鈴をなでていくような感じだった。(上野眞樹)
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