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(方廣寺大佛殿の柱に空いた穴を弥次郎兵衛くぐろうとして)
北八「ヲヤどふした。ぬけられねへか
弥次「コレ、手を引ツぱつてくりや
弥次「アイタヽヽヽヽ
北八「よはへ男だ。ちつと辛抱すればいゝ
弥次「あとのほうからあしを引てくれろ
北八「しやうち/\
弥次「あいた/\
北八「ちつとこらへなせへ。よつぽど出かけたよふだ
弥次「腰骨がおれるよふだ。コリヤ、やつぱり前のほうから引出してくれ
北八「ヤアゑんさア/\
弥次「コリヤたまらぬ。初手のよふに、又あとへひきもどしてくれ
北八「ヱヽいろ/\なことをいふ
弥次「まて/\。コリヤどふでも、まへのほうから引イてもらおふ
北八「ヱヽそんなに前へまわつたり、うしろへまわつたり、いつまでもはてしがねへ。コリヤいゝさんだんがある
(そばに見ていたりし、さんけいの人をたのみて)
北八「モシどふぞ、こつちからおめへひつぱつて下さいませ。わしがあつちへまわつて、あしをひきずり出しますから
弥次「ばかアいふな。兩方からひつぱつては出る瀬がねへ
北八「出るせがなくても、兩方からひつぱると、前へまわつたり、うしろへまわつたりするせはがなくていゝわな
さんけいの人「こうさんせ。どこぞへいて槌借てきさんして、つむりをあとのほうへ、打ちこまんしたがよいわいの
北八「なるほど、こいつがはやい理屈だ。
しかしそれではいのちがあるめへ
(ねえよ)
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