「ガンダムバトルオンライン」(ドリームキャスト用、以下GBO)は、バンダイから数多く発売されているガンダムゲームの一つ。
舞台は一年戦争当時の宇宙空間。プレイヤーは連邦もしくはジオンの独立機動艦隊司令として、最大3隻の戦艦と9機のMS、12名のパイロットを指揮して各戦場を渡り歩くこととなります。
「オープニングデモムービーだけでいいや」とか「ジム萌え〜」とか言われるこのゲームですが、あとで褒めるので、最初に文句を言っておきます。
GBOには、一人プレイの「スタンドアロン」に加え、多人数ネットワーク対戦の「オンライン」モードがありますが、「スタンドアロン」で育てた艦隊を「オンライン」に持ち込んで対戦する、というスタイルしかとれません。
各キャラクターには「経験値」と「レベル」が設定されています。また、「スタンドアロン」での戦績によって支給される戦艦、MSの性能も違います。
当然プレイ時間の長いプレイヤーほど有利です。レベルが振り切れているキャラクターや最高級のMSを揃えていないプレイヤーは、緒戦すら突破できないでしょう。まぁ「ボール」だけで戦う強者にもお会いしましたが(^^;)
オンライン対戦では撃墜に伴う「スコア」が評価対象であり、ここで撃墜した成績はキャラクターの「経験値」には反映されません。オンラインにつなぐメリットとしては、他プレイヤーとのチャットによってより高度な戦術を教わる、という点でしょうか。あと、タイムリリースキャラの封印解除というのもありますね。
対戦が弱く、それがゆえに対戦にあまり喜びを感じ得ない筆者としては、GBOのオンラインはあまり魅力のあるものではありませんでした。
これに輪を掛けたのがチーターの存在で、実測上ありえない「モラル値255」に遭遇したことが一体何度あったでしょう。別にセーブデータ書き換えが悪いとは言いません。仮にこうした強敵を倒すことでマイキャラ達の経験値も稼げ、成長する、という仕様であれば張り合いも出るのでしょうが、既存のセーブデータだけが頼りのネット対戦でチートを出したら、興醒め以外の何者でもないでしょうに。というわけでオンラインにつなぐのはほどなく辞めました。
ついでにもう一個、与太な文句を言っておきます。
私が「ザクら大戦」なる遊びをするにあたって、ジオン側のパイロットに可愛い女の子が少なかったのと漢字がほとんど使えなかったのはなんとかして欲しかったですね。
さて、ここからは褒めます。
まず「やるな」って感じたのは、最大(ネット対戦時)3隻の戦艦、9機のMS×4プレイヤー=48個のオブジェクトを一つの座標系の中で同時処理している、という点です。
戦闘フィールドは左側のマップで示されるように、ほぼ正方形で、三次元的な動きをするので立方体(厚みは不明ですが)となっています。この中に48個のオブジェクトがいっしょくたに投げ込まれています。戦艦に移動指示は出せないのですが、MSはこの立方体の中を自在に動き回ることができます(高さ軸はいじれません)。
宇宙空間なので地形などの変化に乏しいのが残念ですが、高速処理の快感と引き換えるなら悪くないです。
また、実は戦艦も微速前進しています。戦艦同士が撃ち合うという絵も見たいのですが、できない仕様になっています。ゲーム中では戦艦同士が接触する前に「MSの稼動限界時間」が来てしまうという設定になっています。約600秒ですね。あと、戦艦のポリゴンはMSのスケールと合わせてるかどうか、ちょっと分かりません。実スケールより小さめに作ってあって遠近法でごまかしてあるのでないかと思います。
各MSは、プレイヤーが設定した目標と接触すると、自動戦闘に入ります。このとき、背景を見ていると、遠くで戦っている敵・味方(のバーニア光やビーム光)が見えるのですが、レーダー表示などと見比べてみると、実際の戦闘を正確に再現しているのです。近くで戦艦が爆発すれば、明るくなりますし、衝撃波の一端すら見えます。地球軌道上など明るい場所では大概のMSの判別もつきます。
GBOの場合、MS9機を指揮するゲームですので、絶えず全てのMSの客観的な座標を把握していなければならないのは確かなのですが、「視界外」ということで表示しないという選択もあったでしょう。実際、今までのゲームであれば、おざなりな爆発光などを置いておくことで充分な臨場感を出せていました。
これを非常に真面目に演算を行った上で表示しているという点に敬意と意地と技術力を感じます。
また、MSは言うまでもなく人型です。自動戦闘中、顔は常に敵の方向を向きますし、射撃のときは正確に敵に向けて撃っています。バーニアも比較的「それらしい」噴射をしています。シールドや頭部などが破壊されれば、もちろんそれらも画面に反映されます。この辺は逆襲のシャアなど既存のガンダムゲームでも再現していたところではありますが、仮に戦闘機であれば、これほどの挙動を再現する必要はなかっただろうに、ガンダムゲームであるばかりに手間の掛かる作業を強いられたわけで、その苦労がしのばれます。しかし、これを実にラクそうに処理しているのがまた凄いですね。
次に凄いのが「管制官ボイス」を採用し、これを活かしきっている点です。
各MSの挙動のうち、主要なものを「だれが、なにを、どうした」と逐一オペレーターが報告してくれます。各MSの状況は画面下部にも表示されているのですが、必要最低限の情報を声で知らせてくれるおかげで、指示を出す上で非常にプレイアビリティに貢献しています。
「ブルースリーが敵機を撃破しました。さすがです」と言われればブルーの3番機がヒマになったな、と思いますが、それと同時に「燃えよドラゴン」も思い出してしまいます。各MSは3機ずつ色分けされ、「レッド1〜3」「ブルー1〜3」「イエロー1〜3」のように呼称されます。MS3機で1小隊というのはガンダムゲームの定番ですね。同様に戦艦は「1〜3番艦」です。戦艦1隻につき3機のMSを積んでいます。
さて、次に褒める前に、GBOの自動戦闘システムについて説明しておく必要があります。バンダイゲームの常ではありますが、独特のシステムは結構慣れないと理解しにくく、これを理解することで戦術にも幅が出ます。
まず、戦闘の基本は「1対1」です。
前衛キャラクターのパラメータのうち最も重要なのが「モラル」値です。高ければ高いほど、敵から攻撃を受ける可能性が減ります。
戦闘は「スキル」を使って進行します。「白兵」「射撃」「狙撃」の3つがあり、3すくみ、ようするに「じゃんけん」で言えばそれぞれグーチョキパーに当たる関係になっています。部隊編成時に、どのスキルをどの順で使用するかを設定しておく必要があります。5番目まで設定できますが、ほとんどの場合3番目あたりで勝敗が決してしまいます。
また、キャラクターパラメータにもこの3つがあり、どのスキルに優れているかを示します。得意なスキルを使えば基本的に有利になりますが、「白兵が強いから白兵スキルだけ使おう」とすると、3すくみの関係上、「狙撃」スキルを使う敵には弱いわけです。このへんのバランスのとり方が難しさであり、頭のひねりどころであり、ベテランに学びたいところなのだと思います。
「カードデュエル」式のゲームは、あまり詳しくはありませんが「強いカード」だけ出してれば勝てるものではなく、「デッキ」の組み合わせが大事、という点で、カードゲーム的な要素ともいえるでしょう。
「スキル」の順序はあらかじめ決めたとおりに進んでいくので、戦闘中にこれを切り替えることはできません。つまり戦闘に入ってしまった前衛MSには事実上「離脱」と「交代」しか指示できないのです。ここが実に巧妙なんですねぇ。
GBOで最もユニークで最もわかりにくいのが「戦闘力」です。「戦闘力」は攻撃の成否を決める、このゲームのキモです。
左写真で、画面下部中央の最もデカい数字が「戦闘力」です。その下に若干小さく表示されているのがそのキャラクターの「モラル」値です。
MSが敵と接触した瞬間から「戦闘力」は時間とともに上がっていき、「戦闘力」が敵の「モラル」を上回った時点(かきーん!と効果音が鳴る)で攻撃が成功したことになります。左写真の例でいえば、ジムの戦闘力がザクのモラル(95)を上回っていますね。
その後、使用スキルに基づいた戦闘が表示されます。例えばジムが「白兵」スキルで攻撃に成功したら、ビームサーベルを抜いてザクに斬りつけるといったシーンが入って、この時点でダメージが算出されることになります。
で、この前衛に「近距離援護」と「遠距離援護」を付けることで最大3対3というかたちになりますが、援護機が敵の前衛に直接ダメージを与えることはできないので、結局のところやはり「1対1」なのです。写真の例でいえば前衛が「イチロー」、近距離援護が「コクリコ」、遠距離援護が「グリシーヌ」に相当します。
「近距離援護」は味方の「戦闘力」上昇に関与します。キャラクターパラメータに「援護」があり、この値が高ければ効果も高いです。
「遠距離援護」は、敵の「戦闘力」上昇を抑える作用があります。遠距離援護機は別のMSと接触させることで「引き剥がす」ことができます。逆に味方の援護機が「引き剥がされる」ことももちろんあります。
方程式的に書けば
戦闘力=使用スキルに応じた武器の「攻撃力」+経過時間×(前衛キャラクターの使用スキルの能力値+使用スキルに応じた武器の「命中率」+近距離援護機の「援護」能力値―使用スキルのスキルレベル―敵の遠距離援護機の援護能力)
となります。
攻略を書くのが趣旨ではないので、各パラメータの詳細は割愛します。
敵の「戦闘力」上昇が追い付かないほどに「モラル」が高ければ、敵の攻撃はなかなか当たらない、ということです。
「戦闘力」が上昇している間は各機は牽制を行っている状態です。「遠距離援護」機は戦闘空域から離れようとする敵機を抑えますし、「近距離援護」機は接近しようとする敵を寄せ付けないように発砲するとともに、「交代」ができるように前衛をフォローしています。結局のところプログラムに基づいた定型的な動きをしているだけなのですが、安易な「パターン」にせず、カオの向き、発砲のタイミングなど、MS一つ一つの挙動を作り込んでいるのに好感が持てます。
さて、「戦闘力」の上昇。
普通に考えたら、こんなもん表示しなくてもいいです。
RPGで攻撃の順番を厳密に表示した例としては「グランディア」シリーズがあったり、格闘ゲームもコンスーマー移植されるとトレーニングモードとかで技の発動タイミングが表示されたりもしますが、基本的には内部で処理すべき数値です。どちらの攻撃が成立したかだけ把握できればゲームとしては充分なはずです。
これをなぜ表示しているか、が問題なのです。
さて、ここでオンライン対戦の話に飛びます。
通信ゲームは常に「タイムラグ」との戦いであります。各プレイヤーから入力された情報は即座にゲームに反映されなければなりませんし、ゲーム内で処理された数値は即座にプレイヤーに知らされなければなりません。
DC用に発売されているカプコンのネットワーク対戦格闘ゲームや「バーチャロン・オラトリオタングラム」ではインターネットサーバの機能をマッチメイキングのみに集約し、マッチメイキング後はKDDIの「DoD(Data On Demand)」回線を用いることで、クライアント〜クライアント間の直接交信とし、このタイムラグを克服しています。オラトリオ・タングラムの場合、ミサイルやレーザーといった全てのオブジェクトの座標も転送されており、60フレーム/秒という高速で処理され、実際にこのフレーム差で勝敗が決することもある(らしい^^;)ため、高速回線は必須であったとも言えます。
通常のインターネットはさほど早くありません。とくにDCは内蔵モデムの33.6Kbpsというボトルネックに悩まされます。
そこで、狭い回線を有効に使うため、回線上に乗せる情報をいかにコンパクトにするか、が問われます。通常、最もコンパクトなのはコントローラに入力されたボタン情報でしょう。人間の入力速度なんてのはコンピュータからすればかなり遅い部類に入りますので、処理は余裕でしょう。ボタン情報が送受信されれば、あとはクライアント側で処理すればよいので、サーバの負担も軽くなります。「エアロダンシングi」などマッチメイキング型モデルはおおむねこのパターンだと思われます。GBOもマッチメイキング型です。
さて、GBOに戻ります。
結論から先に言ってしまうと、「入力されてから命令が実行されるまでにえらく時間が掛かる」ということが凄い、のです。多少タイムラグが出たところで、ゲーム上まったく問題にならないのです。
先にも述べたとおり、一旦戦闘に入ってしまった前衛機には「離脱」と「交代」しか命令できません。しかし、これが入力されてから発動されるまでには、通常の戦闘と同様、味方の戦闘力が敵のモラルを上回るまで待たなければなりません。前衛が既に攻撃モーションに入っていたら、そのダメージ算出が終わり、次のスキルを使い始めるまで命令は有効になりません。
例えば、対戦格闘ゲームでこんなことやったら普通のプレイヤーは頭にきます。「ガードボタン」「キャンセル技」を挙げるまでもなく、命令は即実行されねばなりません。大技を出せば「硬直」が発生しますが、この駆け引きも対人対戦の醍醐味でしょう。ネットワーク対戦格闘でタイムラグが問題になるのはまさにこの点です。GBOは言ってみれば「硬直」だらけのゲームだと言えるでしょう。
しかし、この「硬直」をプレイヤーに納得させてしまうのが「戦闘力の上昇」なのであります。「戦闘力がまだ上がってる最中だから、今出した命令はまだ発動しない」のだとプレイヤーは考えるでしょう。そう誘導するために「戦闘力の上昇」が画面にデカデカと表示されているのではないでしょうか。
また、これは推測ですが、GBOでは「ボタン入力」をそのまま転送しているのではないと思われます。ボタン入力以上にコンパクトなデータがGBOにはあります。
「ステータス」とでも言いましょうか、画面下部に3隻9機分並んでいるアイコンで示されるところの、各MSの現状一覧です。どのMSがどのスキルを使用しているか、どの機体の援護に入っているか、気絶しているのか死んでいるのかが一目で分かる(一目?^^;)あれです。おそらく1プレイヤー分でもせいぜい数10バイトにしかならないでしょう。
「ステータス」は確定した命令の集まりですので、ボタン入力をいちいち転送するよりはるかに効率がよく、また転送するデータ量が一律というのは、データ設計上非常に有利であると考えられます。また、戦闘中チャットなどの不確定情報を排除しているのもそうした設計の現れでしょう。
あとはこの「ステータス」に基づいてクライアント側で処理すればよいのです。先の方程式で示したように、このゲームが乱数の入る余地がほとんど無い、非常にロジカルなゲームとなっているのも情報軽減に貢献しているのでしょう。
さらに意地の悪い推測になってしまいますが、対戦相手のステータスは敵の前衛MSのそれ以外、プレイヤーからは見えませんので、ステータスの転送でタイムラグが発生しても、プレイヤーはそれを察知することもできません。画面表示はリアルタイム性に富んでいますが、通信と言う面からみれば、限りなくズルができる仕様なのです。
だからといって「つまらない」などと短絡な結論を出すわけではありません。これらの巧妙な工夫は、ただ一点「ゲームを面白くするため」に非常に練り上げられたものだと言いたいのです。
プレイヤーにそれと悟らせることなくタイムラグを克服し「準リアルタイム」とでも呼ぶべきネットワーク対戦ゲームを実現したことこそ、GBO最大の功績といえるのではないでしょうか。
以上。