a Migratory Herasan

今年は例年になく春の訪れも早かったものだから、あちこちで乗っ込み情報も乱れ飛ぶだろうという予測も見事に外れ、いつものようにいつものところで、いつもとおんなじようにハタキは始まり、そして終わっている。

これも自然の摂理とかいうもんがそうさせるのだろうか、サイクルはいつもカレンダーの上に乗っかっているようで、いくら大自然さまがちょっかいを出したところで、暦の速度はいつもとちっとも変わらない。自然は暦によって動き、操られている。
まぁ、それに気が付いた頃にはとっくにタイミングを逃してしまっているわけで、私の場合はいつものように「時すでに遅し・・・・」である。

巣離れから乗っ込みにかけて今年もたくさんのヘラ屋さんが、悔し涙を流したり、我が世の春を楽しんだりとしている間もなく、あっという間に待望のGWに突入した。

さてGW。毎年のことだけれど、私のGWは京都の丹後半島のてっぺんにある離湖で過ごすこととなっている。

離湖は、京都府網野町にあって、周囲3.8km、最深部7m、水面面積35haの京都府下最大の淡水湖・・・というよりも、ひらべったい「大きめの池」であり、小さな水路によって日本海に繋がっている淡水湖である。

魚影の濃さは昔から良く知られていて、なかでも真鮒や合いべらさんたちはおぞましいほど存在している。もちろん、へらさんの魚影も濃い。しかも、この時期に釣れてくるへらさんは40Cm前後の型が多く、浅いタチから引きずり上げる格闘技にも似たスリリングな釣りに魅せられて、毎年京阪神からここを訪れるヘラ屋さんも多い。

しかし、巨べら狙いの釣り場というよりも、どちらかといえば「何かしらのアタリの見れる釣り場」という意味で、ポピュラーな釣り場として私は位置づけている。
逆にいえば、ダム湖の一発狙いから比べればワイルドさには欠けていて、その点においては物足りないのだけれど、手軽に40オーバーの狙える釣り場という点と、回遊を狙うスリリングな釣りのできる面白さは三方湖の釣りへのエピローグとして、それを充分に凌駕する魅力である。また、ごじゃごじゃ居る真鮒や合いべらの中から、へらさんが出る出ないの極端な釣り場であることもまた魅力のひとつである。

昨年のGWは離湖は大爆発であった。ポイントを選ばず至る所で40Cm級が釣れまくり、へたっピーを自負する私でさえ、二日間で48枚。そのうち24枚が40Cm上で最長寸は44.3Cmという驚異的な釣りを体験した。一方、その前の年は真鮒や合いべらのオンパレードで、這々の体で銀山湖へ逃げた釣り場でもある。

さて今年。どんな釣りが待っているのか。。。。

5月3日

前夜10時にYashi兄弟とともに出発した。京都市内を縦断する車内では、昨年の大爆発の話題で盛り上がるのだけれど、反面、果たして今年はどんな釣りになるのだろうかという不安が、ちらちらと陰を覗かせる。まぁ、とにかく、餌を打たなければ何も始まらない訳だからと、話題を余所に持っていくのだけれど、いつの間にかまた元に戻っている。(^^;;
深夜の福知山を抜け、いよいよ大江山にさしかかる頃には、3人の女々しくかつ幸せなおっさんはすっかり入れ喰い気分で盛り上がっていた。(^_^)

深夜。離湖の湖岸は深い闇に包まれしんと静まりかえっていた。モジリはない。もちろんハタキの気配もない。それに、例年なら駐車場にはずらりと釣り人の車が並んでいるのだけれど、今年は全然それもない。うむ、ヤな予感だわい。
不安が的中したような気分であったけれど、それでもシアワセ気分を引きずったまんまのYashi兄弟は、そのまんま爆睡への準備を整えている私を後目に、いそいそとナイター開始の準備を始め、私が寝床の準備を終える頃には競って餌を打ち始めていた。うむ。水テンカン達めっ。(^^;;

 朝、黄金色の離湖

朝。車窓から差し込む淡い光で目が覚めた。思いっきり爆睡して気分がよい。私はまだ起きていない重い体を引きずりながら、釣り座の準備を始めた。

しっかり朝まで餌を打ち続けたYashi兄弟の様子を伺うと、例によって真鮒と合いべらの猛攻だという。悪いときの離湖を知らないYashi氏は、次から次へとやってくる真鮒の猛攻にいささか参っている表情だ。まぁ、離湖はこんなもんよね。我慢しなさい。(^^;;

準備を終えた私は、出島から北側の様子を見て歩くことにした。やはり不安は的中して、釣り人の姿は例年よりも遙かに少ない。旧桟橋あたりとグランド界隈を除けば釣り人の姿も点在していて、いかにも釣れていない時のショッキングな離湖の光景が目の前に広がっている。
まぁ、とにかく餌を打とう。重い気分で釣り座に戻り、重い気分で仕掛けを作りはじめる体重の重いもじりさんであった。(^^;;

真鮒の猛攻は3投目から始まった。がつがつと、食わしていない子のように真鮒さんは次から次へとやってきて、まるで真鮒の絨毯の上に餌を落としているありさまだ。
さすがの水連 16.2 尺も、果てることなく続く真鮒の猛攻に、クセが戻る余裕も無い。
おりから吹き出した強い南西の風を正面に受け、すっかりあきらめ気分で餌を打ち続ける。

おおぃ。へらさんは何処へ行ったんやぁ??(^^;;、、、、とボヤいたら、尺に満たないチャンベラが立て続けに二枚釣れてきた。やっぱ、ボヤかなあきまへんな。(^^;;

1時間餌を打てば1時間サボる。とにかく、ポイントを冷ましながら、しかし餌を絶やさないように、我々3人はすっかりやる気も失せながら、それでも現実を捨て、ナイターへと期待を一層高めるのであった。(^^;;

 穏やかな離湖。しかし水中にはおぞましいほどの真鮒が、、

夕方。雨が降り出す。南西の風は益々強くなってくる。
Yashiさんファミリーが持ってきてくれた、和牛の霜降りステーキと特選焼き肉をたっぷり腹に詰め込むと同時に、すっかりやる気も萎えた我々は、そのまんま釣り座を放棄し、泥のような深い眠りに突入するのであった。なんまんだぶ。

5月4日(昼の部)

昨夜から降り続いた雨は止み、しかしこの日の空はどんよりとした低い雲に覆われている。湿気を含んだなま暖かい南西の風がねっとりとまとわりつく。
お世辞にも気分の良い朝とは言えないのだけれど、とにかく餌を打ち始める。

 幻想的な離湖の風景


3投目にはまた真鮒さんが釣れてきて、昨日と同じように果てしない真鮒との戦いが始まった。
湖面は至って静かで、南西の向かい風に押されて規則正しい波の動きを割るお魚さんの気配は無い。時々風の呼吸が荒くなったり、静かになったりする以外は、ウキの回りにのみ生き物の気配が残るだけである。

二時間ばかり単調な時間を過ごし、前日に話しかけてもらったM氏に教わった円山川へ転身することにした。まぁ、このまんま退屈な時間を過ごすよりも、少しでも可能性を求めて動く方が、自分を納得させることができるだろう。そして、もし暖かい雨が降り出したならば、再び戻ってくればよい。なぁに、ほんの50Kmほど走ればいいだけだ。おっと、往復だと100Kmだけど。(^^;;

思い立った瞬間、城之崎から円山川に沿って八鹿まで移動する。


 八鹿の溜まり。4WDの恩恵をまともに受ける(^_^)

以前、NHRの開拓釣会で行ったことのある砂利穴に到着する。前に来たときは堤防に車を止めて、丸い石の敷き詰められた河川敷の道をとぼとぼと歩いたものだけれど、4WDだとそのまんま釣り場まで突っ込める。
横着なもじりさんは、丸い石がごろごろしている河原に車を突っ込み、やおら道具を降ろすのであった。(^^;;

地元の鯉氏と出会う。子供連れでGWを楽しむ鯉氏とすっかり意気投合し、話が進むうちに円山川の有望なポイントを教わる。
再び車を転がしだしたもじりさんは、「絶対に釣れる」と保証付きの玄武洞のワンドへ走り出した。(^^;;

玄武洞のワンドは魚の気配も濃厚で、多くのバサーに囲まれてヘラ屋さんも竿を振っていた、しばらく見ている間にも8寸から9寸級のへらさんが浅いタナで釣れている。
型狙いに日本海まで来た私にはちょっと不本意な釣りだったけれど、ともかく竿を出してみようと餌を作り始めた。
マッシュとグルテンを合わせて適当に水を放り込む。うむ?。いつもと手触りが違うど??
もしかして、、、と水に付けた指を舐めてみると、ほのかに潮の味がした。なはは、海やんか。(^^;;

餌を打ち込んで10分も経っただろうか、ばたばたと5枚ばかり8寸級の入れ喰いが始まったと思ったら、なんと対岸から渡船がたくさんの観光客を乗せて向かってくる。そして、いつの間にか玄武洞の駐車場は観光客の車でぎっしりと埋まっている。
カメラを首からぶら下げた観光客や家族連れの異様な視線を感じながら、へらさんを釣り上げる事に違和感を感じたもじりさんは、降り出した暖かい雨に誘われるように再び離湖に向かって走り出した。雨だ。しかも暖かい雨だ。これを逃せば末代までの恥!である。(^_^)

パタパタと釣り座を納め、離湖に向かって再び車を転がすもじりさんであった。(^^;;

しかし、離湖の事態は一向に変わらない。
Yashi氏兄弟はいつまでも懲りることなく、1時間餌を打っては1時間サボる規則正しい生活を実行していた。(^^;;

いつも出会う、たふまんさんの例会組もへらさんが出ない現実に苦しんでいる。

夕方、雨はしとしとと降り続く。
なま暖かい南西の風が少し柔らかくなって、ようやく事態が好転しはじめたのだろうか、あちらこちらでボラが飛び出し、へらさんのモジリも時折見れるようになってきた。いよいよか。パンツまでしっかりと濡れて冷えてきた体とは逆に、わいの希望はすこしずつ燃えはじめてくるのであった。(^_^)

5月4日(夜の部)

岡田さんが到着した。
岡田さんとは、二年前のGWに離湖で知り合い、自作のナイターウキをプレゼントして頂いて以来、電話でのお付き合いをさせて頂いている。奥様の実家が網野にあって、毎年GWには帰省するついでに、ここで竿を振っている常連さんだ。しかし、昼間は竿を振らない。なにしろ、保有しているウキケースには、昼間のウキは1本だけという典型的な夜這い族だ。

細長い雨が時々強くなったり弱くなったりする湖面を割って、へらさんのモジリはあちこちで出始める。よし、これからだっ。(^_^)

モジリに背中を押された岡田さんは、私の隣に釣り座を作りはじめた。Yashi夫人もご主人の隣に釣り座を作り、餌を打ち始めている。

長く降り続く雨に、じわじわと水は増えてくる。

薄暮の頃、更にへらさんのモジリは多くなってきて、雨は更に細くしとしとと降り続ける。新しく加わった岡田さんとYashi夫人を含めた我々5人は、希望と期待に胸を膨らませながら餌を打ち始めるのであった。

しかし、真鮒さんの猛攻は相変わらず激しく続いている。打てども打てども7寸くらいの真鮒が釣れ続き、おや?アタリがおとなしくなったなっ?と思ったら亀さんが釣れてくる。しかも、赤耳と呼ばれるミドリ亀の巨大化したやつで、うっかりと指をかまれたりしたら食いちぎられてしまう危険なヤツだ。ほんまに。。。。小さな時は人に飼われてかわいがられていたのだろうけど、野に放された凶暴な赤耳はどん欲に餌を食い、驚くほど巨大化している。ほんま、無責任なヤツも居るもんだ。

7時過ぎ。へらさんの大きなモジリはさらに近くなってくる。

しばらくしてYashi弟さんが竿を絞った。すっかり暮れなずんだ湖面に、へらさんの「ごぼっ」とした重い音が響き、タモの中に収まった乾いた音が続く。
「出たでっ!42Cmやっ!」
湖面に渡る声を聞いた途端、私の頭の中の血管がぴちぴちと音を立ててちぎれるほどの緊張と興奮に包まれ、ひたすら、波間に見え隠れする電気ウキに集中するのであった。

午後8時。へらさんの気配を感じる。その前にボラさんがやってきている。三方湖の経験から、ボラが来ればへらさんが来る。そんな確信みたいなものが私にはあった。

不思議なモノで、その時の集中力が高ければ高いほどへらさんが寄ってきた気配を感じる時がある。今回もそうだ。まだウキは軽々しい真鮒の動きを伝え続けているのだけれど、餌の回りにへらさんの気配をはっきりと感じ取れる。
しばらくして、ウキの動きが止まる。そして、重々しい動きに変わってくる。来たかっ。<---おお、わいは超能力者か。(^^;;

ウキが立ち、ゆっくりと馴染みはじめるともやもやとくる。餌が床に着いていきなり1節の明確なアタリが出た。ごつんと合わせるとぎゅーんと沖目に向かって走り出す。うむ、型がいい。両手に矯めて耐えていると、びっくらこいたへらさんは全身の力を振り絞り、更に沖目に向かって走り出す。

そのとき、、、ばしっ!。 あぁ〜〜あ。穂先を抜かれてしもた。(^^;;

運良く沖目で鈎が外れたものだから、無事回収。(^_^)


しめしめ、まだ気配は続いている。気を取り直して餌を打ち始めると、馴染んですぐにずんっ!と来た。走り回るへらさんを無理矢理浮かせて取りこむ。ずっしりとしたタモの重量感を確かめるように検寸台に乗せてみると42.6Cm。残念ながら格好の良いへらさんではなかったけれど、まずは一安心。

 

42.6Cmのへらさん
41.9Cmのへらさん。両方ともぶさいくだ。(^^;;


同じ頃Yashi兄弟も竿を絞り、Yashi夫人も41Cmを釣り上げる。
岡田さんも、型は細かいもののへらさんをGET!する。

来たぞっ。へらさんの群れが回ってきた。回遊を狙う釣りの醍醐味はこの瞬間である。膨らみ続けていた希望と期待が、この瞬間に爆発する。もう、私の頭の中には何もなかった。ひたすらウキに集中するのみであった。(^_^)

午後10時。再び群れはやってきた。スレとバラシの嵐に見舞われながら、結局はそのまんま群れを捕まえることはできなかったけれど、Yashi弟さんと岡田さんはしっかりとへらさんをGET!した。Yashi氏もがっちりと釣り上げたのだけれど、40に少し足りない。ぼやかないぼやかない。それが人生ってやつですなぁ。(^^;;

もう気配は無い。カニさんが釣れてくる時、回りには真鮒の気配すら消え去っていた。

午前0時。みたび群れが回ってくる。
きっちりとした押さえ込みで41.9Cmがやってくる。よし、この次は尺半だっ!と気合いを入れて餌を打ち続けるのだけれど、日付が変わるとともにへらさんの気配は消えていた。
それでもあきらめきれない我々4人はしつこくと餌を打ち続ける。午前2時半を過ぎるころ、ねっとりとまとわりつくような雨に濡れ、冷え切った体に耐えきれず車の中に潜り込んだ。

この後、残る3人は餌を打ち続けたのだけれどそれ以降の地合は出なかったという。それでも、回遊を捕まえた我々は、Yashi弟氏が42Cmを頭に3枚。私が2枚。Yashi夫人が1枚の40上を引っ張った。Yashi氏と岡田氏はいずれも40Cmに届かない釣果だったけれど、全員がしっかりと離湖のへらさんをGETした。

5月5日

朝。離湖は深いモヤに包まれていた。たっぷりと湿気を含んだ粘っこい空気に包まれ、けだるい気分で目が覚めた。
あれほど興奮と感激を生み出した湖面はいつものように無愛想で、強弱のない柔らかい東風に小さく波立っている。
ああ、今日も天気が悪いのか。

仕事で、午前中で切り上げるYashi兄弟はすでに餌打ちをはじめている。
一方、今夜またここで頑張る岡田氏は車の中で爆睡している。
私は、いつものように人気のあるポイント付近を見て回ることにする。

 

ずらりと並んだYashiファミリー

明るくなると岡田氏は爆睡中

しかし、日にちの経過とともに釣り人の姿はすっかりと少なくなってしまっていて、賑わう離湖に見慣れた私は寂しさを感じずには居られない。
たふまんさんの例会組は前日と同じように深場を中心としたポイントに散らばっているのだけれど、今日も離湖は場所を問わず真鮒さんが活発に仕事をしている。

釣り座に戻り湖面を見回す。釣れそうな気配が全くない。でも、なんもせずにこのまんま時間を消費するのもナニなもんだから、また餌を打ち始める。
3発も打てばまた真鮒さんの猛攻が始まりだしてきて、前日に劣らない攻撃を繰り返す。釣っては放し、釣っては放しの機械的な作業が泥のように続く。それでも、夜中に向かってすこしでも希望を残しておきたい一心で餌を打ち続ける。

昼前。岡田さんが一時的に帰宅した。夜にはまた戻って来るという。
Yashi兄弟は、息子さんが迎えに来た車で帰宅した。
道路際のポイントに陣取っていたたふまんさんの例会に参加した人々も、午後3時には帰路に就いた。

あれほど賑わっていた私たちの釣り座も、とうとう私一人が餌を打つだけとなる。

東からの風がだんだんと強くなり、冷たい風へと変わってくる。湖面には大きな白波がざわめき、防寒服を着込み、背中を丸めながら真鮒との孤独な戦いを続ける私にもそろそろ限界が訪れた。
もう一晩。ここで勝負を賭けようと張りつめていた気合いも、冷たい東風と霧雨にすっかり萎えてくる。

午後7時。
無表情で湖面を見つめる岡田さんに別れを告げ、予定より一日早く切り上げ帰路に就いた。