神さんの国へ・尺2寸 9月23日
朝。
突然目が覚めた。
隣にはだんだんさんのウィザードが止まっている。その隣には夢釣人さんの新車がお行儀良く止まっていて、これでめでたくメンツが揃った事になる。
朝の用事を済ませて車に戻ると、だんだんさんはたくさんの資料を持って出迎えてくださった。
資料にはこの辺り一帯の釣場が几帳面に書き込まれていて、なかでも驚いたのはある池全体の水深が丁寧に書き込まれていたことだった。
もはや野のへら釣りは感性だけの釣りではなく、データの釣りであること。地形を読み、水の流れを読み、着き場と回遊を読む。野釣りは、まさに狩猟的感覚の世界であったのだけれど、良い悪いは別にして、今はGPSに魚探、携帯電話を駆使した「近代・野べら釣り」へと恐ろしい勢いで向かっていることを痛感した。
おお、ちょっと余談になってしもた。(^^;;しばし談笑とはじめましてのご挨拶。(^_^)
すっかり夜が明けて日が差し込んできたことを期に、私たちはだんだんさんの先導で浮布池へ車を向けた。
途中、日頃から攻めている池をいくつか案内していただいた。一番最初に寄った池は抜群の環境の中にあって、通い慣れた三重の野池に似た雰囲気が漂っている。鏡のような水面を割って大型のモジリがいくつもあって、「・・・・ここでやりましょう」と思わず口から言葉が飛び出しそうになったのを慌てて飲み込んだ。
神さんの街・走行中 右手には日本海が広がる・・・車は通勤の始まった国道9号線をひたすら西に進む。
出雲の街を抜け、遠くに真っ白な風力発電の風車が朝日を浴びて輝いているのが見える。風車を過ぎると右手に大きく日本海が広がっていた。絶景だわ。(^_^)太田市から三瓶山に向けて国道を離れる。ひなびた小さな村を過ぎ、いよいよ山間部にさしかかる。
正面には変な形の山が立ちはだかっていて、朝日を背に受けてカーブを曲がるたびにその表情を変えて見せてくれた。「アレが三瓶山」と後から教わったのだけれど、そうとわかっていたらもっとよく見ておくべきだったと後悔した。田舎の風情をたっぷりと残した集落を抜け、道のどんつきにひっそりと浮布池はあった。池の正面にはレジャーボートが繋留されていて、ここが三瓶山の水の遊び場であることを物語っていた。
この夏休みもきっと、家族での避暑や林間学校なんかで子供達がどっさりとこの池で遊び、いっぱい思い出を詰め込んで帰って行ったに違いない。(^_^)
静かな静かな浮布池 正面の白い「点」はだんだんさんの雄姿(^^;;だんだんさんの案内で、無理矢理コンクリートで固められた細い道を池の奥に進んだ。
突き当たりにはちょっとしたスペースがあって、ここに車を停める。
小さな岬にはお宮さんが祭られていて、思い空気が漂っている。苔のむした参道を足を取られながら進み、岬のてっぺんにたどり着いた。
「ここでも竿を出せますね」 「二人入れますよ」とだんだんさん。
岬のてっぺんには小さな階段が作られていて、ここはお祭りの時の船着き場であると思われた。出雲は神さんの国である。(^_^)
よそ者がうっかり神さんを背に竿を振るのは申し訳ないような気がして、私と夢釣人さんは池の入り口の護岸部分で竿を出すことにした。
少し減水しているのだろうか、コンクリート護岸から水面まではちょっと高さがあって、まるで三方湖の釣りスタイルである。
幸い車は横付けできるので、夢釣人さんは車から5歩の所に釣り座を構えた。
私は運良く船着き場の小さな階段を発見し、ここに釣り座を構えることにした。
車から歩いて86歩。うむ悪くない。(^_^)お宮さんの階段に入っただんだんさんとは向かい合う位置にある。しかし残念ながらあまりにも距離がありすぎて、だんだんさんの様子はなんもわからない。
大名釣り中の夢釣人さん(^_^)準備しているときに、朝の晴天がウソのように低い雲がたれはじめ、夕方からと言っていたくせに大粒の雨が降り出してきた。
うう、初日からこれかい。先が思いやられるわい。(^^;;10分も打てばウキに気配が出始めてきて、消し込みアタリを合わせると5Cmほどのモロコがぶら下がってきた。おおモロコぢゃ。しかもホンモロコ。
まさかここでモロコが釣れるなんて思ってみなかっただけに、なんかうれしい気分の反面、これから苦労するであろうとこの日の釣りを思った。10時を回った頃だろうか、夢釣人さんが竿を絞った。まずまずの型である。
しかし、取りこんだ鮒さんをいぶかしそうに眺めている。
「これなんやろ?」と私に見せに来てくださる。
形とウロコはへらさんではあるが、口の形がなんか違う。
へらであるかへらでないかというのは釣人自身の判断で良いのだと私はいつも思っているので、判断は夢釣人さんにお任せとなる。
しばらく眺めていた夢釣人さんは納得できなかったようで、限りなくへらさんに近いアイベラくんと判断された。大騒ぎしていたウキが突然おとなしくなる。ゆっくりと床まで馴染み、馴染んだ瞬間にズルッと落ちる。
ギュンと一瞬だけ締め込んで、9寸の汚いマブくんが釣れてきた。(^^;;しばらくしてまたウキが静かに馴染む。間髪を入れずにひと節力強い押さえ込みが出る。ごつんと乗る。
孤舟 15.3尺 硬式鶺鴒は力強くへらさんを浮かせてくる。強い竿だ。
どっしりとした引きと重量感。へらさんに間違いあるまい。
降りしきる雨の中、ゆっくりと時間を掛けて尺2寸を取りこんだ。(^_^)夢釣人さんはいくつかマブさんを拾いながら竿を振り続けている。竿を絞るたびにおだやかなお顔がまん丸になって、実に楽しそうにアタリを拾っていらっしゃる。
そのとき、対岸のだんだんさんが消えた。
この日の浮布池は寒い雨が降り続いたおそらくこの雨の中だから場所移動でこちらに来られると思っていたのだけれど、しばらくしてボートが引っ張り出されたのには仰天した。(^^;;
遠くにだんだんさんのボートが見えるのだけれど、その様子はうかがい知れない。
適当に時間を空けて夢釣人さんはマブさんを釣り上げているのとは対象に、私のポイントはモロコのアタリは続いているものの、一向にへらさんの寄った気配は感じられない。
時間だけは正直にすぎていく。(;_;)
夕方、まだ4時だというのに周囲は雨で薄暗くなってくる。だんだんさんのボートも仕舞われ、我々の場所にお越しになる。
19枚出たということ。さすがである。
釣果もさることながら、この降りしきる冷たい雨の中でボートを出してまで目的を達しただんだんさんの気力と見切りの早さに、両手を上げて降参した。(^^;;
3人でなんやかんやと講釈をたれながら、ボクと夢釣人さんは竿を振り続けたのではあるが、とうとうモロコの猛攻に閉口して竿を納めることにした。結果は尺2寸一枚のみ。まぁ良いではないか。(^_^)夕方。地合が出てきた夢釣人さんは、小さいながらもきれいなへらさんを釣り上げた。
大きな体の夢釣人さんがにこにこしながらへらさんを眺めていると、こちらまで嬉しくなってくる。(^_^)
神さんの国の尺2寸(^_^)はじめての釣場で型を見れたということ。しかも、思い出深い島根の釣り。うれしさは計り知れないものである。
たった一枚ではあったが、この風景の中で釣れたことをだんだんさんに感謝しつつ、暮れ始めた浮布池を後にした。(^_^)松江に向けて移動を始める。
途中にあるだんだん邸に招待いただいた。
お茶だけという事が、いつのまにか奥様とお祖母様が夕食を準備してくださっていた。
おいしそうな食事に我慢できなくなってしまって、普段は茶碗一杯で済ますくせに、このときばかりはしっかりおかわりをさせていただいた。それほどおいしかった。(^_^)
ごちそうさまでした。そしてありがとうございました。お祖母様&奥様(^_^)釣場で撮った写真を見せてくださった。
だんだんさんの性格を表すように、10冊近いアルバムは見事に整理され、その時々のコメントが几帳面に書き込まれていた。
それだけでも驚きなのに、なんと湯ノ花FSだとか甲南池だとか、私には馴染みの多い釣り掘りの写真まで保管されていた。まぁなんと、こんなところまで出没してたんですね。(^^;;「遅くからこの釣りを始めたもんで、3年でみなさんに追いつかないとあきまへん」なんて、だんだんさんの言葉を聞いて納得したりしたけれど、ちょっとあきれたりもした。(^_^)
降りしきる雨の中、だんだん邸を後にして、今夜の宿泊地「道の駅秋鹿なぎさ公園」に到着したときは土砂降りになっていた。
水煙の中、宍道湖の湖面が街の灯に揺れていたのが心に残った。