奥飛騨無情 その1

今年は冬場からそこそこ型が混じったものだから、GW後から夏場に掛けての釣りに期待していた。
なかでも市川の釣りは、昨年の強烈なイメージが強く残っていて、連休明けから足げく通い続けていた。
しかし、まるで昨年の釣果が嘘のように釣れなくなってしまっていて、市川に掛ける熱い思いも足下を掬われたように萎えてしまった。
しばらくご無沙汰だった三重の野池に目標を切り替えたのだが、狙っていた野池は釣り人公害の被害にあって壊滅状態となった。
しかたなく竿を延ばした近くの野池で41.3Cmを拾うことができたのだけれど、空しさだけが残る結果となってしまった。

釣り人公害による野池の破壊は何度も経験しているだけに今更触れたくないのだけれど、いつも悔しさと空しさだけが残ってしまう。我々が直接地元の方々に被害を与えたとか与えてないというのでなく、被害を与えるような状況を作り出したことが一番の原因であって、その釣り場で竿を出した釣り人すべての責任であると私は思う。
ああ、辛いね・・・
そんな空しさだけが残ってしまった今年の初夏の釣りではあった。

さて、いよいよ待望のお盆休み。(^^)
ここ数年、お盆休みはクワマンさんと一緒に釣ることが恒例となっている。
3年前までは信州方面でやることが多かったのだけれど、昨年は市川。いつも行っている場所なのでボクにはちょっと消化不良の夏休みであった。
なら今年はどこでやろうか。久しぶりに信州もいいし、釣りたければ岡山と言う手もある。でも久しぶりにダム湖の釣りもやりたい。
いくつかの候補は出たものの決まらない。んじゃ、いっそ「無計画の計画」ということで、とりあえずは九頭竜湖から奥飛騨界隈のダム湖を放浪することとなった。

8月12日

仕事が終わり次第直行するという計画だったものだから、この日は釣り道具を車に積み込んで釣り姿で出社した。
夏場はシングル・レザーソールの革靴で出勤するようにしているので、足の蒸れは全然気にならなかったのだけれど、この日は終わってから遊びに行く予定だからゴム底のレザースニーカーを履いてきた。
しかし、ゴム底というだけで靴の中は思いっきり蒸れてきて、会社に着く頃には靴下が湿っぽくなってきた。靴底の材料ひとつでこれだけ違うものなのかと変な所に感心した。

さて定時。いよいよ出発だ。
交通情報では名神高速は渋滞が始まっているという。高い通行料払って渋滞に巻き込まれるのも癪なものだから、国道307号線を東に進み彦根から8号・21号経由で岐阜まで抜けることにした。
途中、八日市あたりから激しい夕立に遭遇し、多賀を抜けるまでは超低速走行を強いられた。それでも渋滞もなく快適に車は進み、21号に入ってからはきわめて快適なドライブとなった。

各務原から国道156号線に入り、長良川沿いに北上する。

背後からハリアーがまくってきて、直線で追いかけられるもののコーナーでのぶっちぎりを楽しみながらあっという間に郡上八幡に到着した。

郡上八幡はその昔、niftyの鮎釣りフォーラムのOLMがあって、参加したその当時を思い出しながら通過した。もしうまく時間がとれればあのときに買った「醤油」を買って帰ろうと思った。

郡上八幡から東海北陸道に入る。待ち合わせの「ぎふ大和 PA]には予想よりも早く5時間半の走行で午後11時に到着した。しかし、なんという貧相なPAなんだろうか。自販機のひとつも置いていないなんて、それだけ利用者が少ないということなのかな?

まぁええわい。ともかくクワマンさんに到着のメールを入れる。うむ、返事がない・・・。おかしい・・もしかしたらくたばったのかな?なんて思っていると、5分もせんうちに「今着いたよ」とメールが入る。
おお、来た来た。同じ時間帯にここへ向かって走っていたのね。(^^;;
とりあえず寝よう。明日は九頭竜から始まる。

8月13日

夜中は蒸し暑いくらいだったのだけれど、明け方の寒さで目が覚めた。あいにく天気は今ひとつ良くないが、避暑に来たのだから照り込むよりはうんといい。

白鳥から油阪峠を越えて158号線をひた走る。高度はどんどん上がってきて、車のフィールドモニターは770mを示している。「おお、京都の比叡山よりも高いところに居るのね。」なんて、それだけでもうれしくなってどんどん車を進めた。

ぢつは九頭竜湖は3度目である。しかしいずれも福井県側から入ってきたものだから、この峠を走るのは初めてである。
有料道路ができたことで放ったらかしにされた路面の悪い峠を越え、いよいよ九頭竜湖のバックウォーターに進入した。

クワマンさんがどこからかポイント図を仕入れてきて、しばらく路肩に車を止めて検討する。九頭竜湖のポイントといえば伊勢川筋が有名なのだけれど、この時期は黒いクマさんと出会う確率が非常に高いという。いくらクマみたいなおっさん二人が戦いを挑んでも勝ち目はないので、人の気配のある近辺で竿を出そうと言うことになった。


九頭竜湖・林谷のワンド


うろうろとダム湖沿いの路を足場とモジリを求めて走る。うむ。とにかく巨大すぎてポイントを絞れない。本湖の変化のあるところはどこも出そうな感じがするのだけれど、まったく見当違いのような気もする。モジリの一発でもあればそれできまるのだけれど、湖面は至って静かで気配はない。それに、へら屋さんの姿すら見れない。
さんざん迷ったあげく、可能性のありそうな林谷橋のワンドを攻めることにした。しめしめ、ジャミかなんかわからないけど小さな波紋も広がっている。

湖岸に降りれそうな路をクワマンさんが見つけてきて、四駆の特権で湖岸まで降りる。
湖岸は釣り人が入ったと見られる形跡が残っていて、それだけでも心強くなってくる。
さらに奥にはあきらかに釣りをした形跡があって、しかもエサ袋がほかしてあったり、竿受けの枕が落ちていたりと、「ここでへら釣りをしましたぜ。ここでやりなさい。」と言わんばかりである。

ワンドの出っ張りにクワマンさんが入り、私はその下流に釣り座を据えた。余談だが、このポイントは訳あって「青タン岩」と名付けた。
先日クワマンさんにいただいたカーボンの18尺をデビューさせる。タチは三本。水はエメラルド色に澄んでいて、2mあたりまでしっかり見えている。
こんな環境で3本のタチはどうかと思ったのだけれど、とりあえずエサを打ち始めることにした。
数投も打てばウグイの猛攻となり、2本まで棚を上げたり床に落としたりと、あわただしい釣りが始まる。
クワマンさんも状況は同じで、ひたすらウグイと格闘している。

標高は550m。日差しは熱いものの吹き抜ける風はひんやりと気持ちよい。ジャミの猛攻で熱くなりかけた頭を、さわやかな風が癒してくれる。いいですねー。やっぱ夏は山に入るに限ります。
お昼頃、車のダッシュボードで暖めたカレーとご飯を掻き込んでごろりと湖畔に横になる。あまりの心地よさにいつの間にか本気で寝てしまった。


怪しげな白い粉をこねこねするクワマン兄

午後2時。いつまでも続くウグイの攻撃にとうとう音をあげた私たちは、期待していた九頭竜湖の釣りに見切りを付け、事前に聞いていた近くのダムへ転戦することにした。

ロックフィルの雄大な九頭竜湖の堰堤を眺めながら移動する。
途中の道の駅には帰り支度の観光客が群れている。腹の掃除をしたくても車を停めるスペースすらない。しかたがない、我慢するか・・・
小一時間のドライブで目的のダム湖に到着する。先日来の大雨で湖は思いっきり増水していて、青々とした葉をまとった柳が水没している。まだ大雨が降り続いたことを証明するように、流れ落ちる滝の音と、赤茶けた濁りが湖面に縞模様を描きながらゆっくりと広がっていた。

さて、どこにかかろう。上流から下流までくまなく見て回るのだが、とても一般人の降りれる場所はない。ようやく見つけた駐車スペースに車を停める。水辺を見渡せば流れ落ちる滝のすぐ際の浅場に、40Cmくらいの鯉が群れている。ん!? もしかして今頃乗っこみ??。
運良くダム湖を渡る橋の付け根にようやく竿を出せる場所を見つけた。

大雨で満々と水を蓄えた名も知らぬダム

今にも大雨が降り出しそうな低い雲が垂れ込み、まだ午後3時だというのに周囲は薄暗い。なんか、異様な雰囲気の中で強引に竿を出すことにした。

私は橋の下に陣取り、手を伸ばさなければかろうじて10尺の竿を立てることができる窮屈な釣りを始めた。ひょいと手を差し伸べれば届くような所を、黒い鯉どんがゆっくりと泳いでいる。うむ、際を回っている限り可能性はあるな。

クワマンさんは橋の際に釣り座を構える。(余談だが、このポイントは「頭突橋」と名付けた)

タチは1本半。もうちょっと浅いことを期待していたのだけれど、思った以上にタチがある。
エサを打ち始める。2投目でジャミが触る。しばらく打ち続けると落ち込みで触り出す。ちょっと強いアタリを合わせると20Cmくらいのウグイが釣れてきた。
ジャミあたりはどんどん活発になってきて、落ち込みを合わせればウグイ。床に落とせばモツが食ってくる。

時々真っ暗になってざぁーと強い雨が降り付ける。1時間ほどせっせとエサを運んだのだけれど、へらさんが周りにいる気配はない。
しばらく周囲を見渡していると、橋の対岸上流ではいくつもモジリが出ていて、しかも岸近くでそこそこの大きさの波紋が広がっている。
残念ながら一般人には水辺に降りる芸当は難しいのだけれど、百戦錬磨のダム屋さんならターザンみたいにして鼻歌まじりで降りていくだろうなぁ。

時間の経過とともにあれほど濁っていた湖面が綺麗になってきて、2mばかり沖目に沈んでいた岩がはっきり見えてくる。水位もじわじわと下がり始めてきて、こりゃもうあかんな・・・とあきらめた矢先、クワマンさんの竿が大きく伸される。


10尺・2本で乗る!



10尺で2本半のタチがあるポイントの宙とのことだったが、竿先の動きはまさしくへらさんだ。
型は37Cm。肩のぽこんと盛り上がった野武士のようなへらさんだった。
初めて40上を上げた時の喜び以上だ・・・なんて大喜びのクワマンさんとは対照的に、ボクの釣り座は急速に澄んできた。あかん・・・・(^^;;

6時半までがむばったのだけれど、とうとうへらさんは顔を見せてはくれなかった。

一応食ってますので・・・(^^;;

白鳥の街で見つけた「鮎雑炊」屋さんでなぜかみそカツ定食を食う。
やたら甘くてこてこてした味に、胸をもたれさせながら一気に腹に詰め込むもじりさんであった。(^^;;

郡上八幡では夏祭りの真っ最中で、夜を通して盆踊りが開催されているという。お隣の白鳥でも規模は小さいながら、夜を徹して盆踊りがあるという。「行ってみなはれ」と薦める女将に銭湯の場所を教わり、白鳥IC近くの「美人の湯」で疲れを流した。

一息ついて荘川まで走る。深夜のくねくね路にへばりつくように、眠気と戦いながらようやくIC近くの道の駅に到着した。

さて、寝るか。。。明日は御母衣湖。ここはあこがれのダム湖でもある。