| MORI's Homepage about KOREA | はじめての韓国 | |||||||||
#5. あてのない旅のはじまり (釜山)
例のご夫婦の奥さんが、自分を見つけて言った。 「これからどうするの」 「とりあえず釜山駅の方に行こうと思ってます」 「そう、私たちは甥が車で迎えに来ているので、悪いけどここから麗水 (ヨス Yosu) へ行きますね」 「ぼくの方は、たぶんなんとかなると思います」 「それでは、よい旅を」 これで、本当にひとりになってしまった。 月曜日の午前9時前。今日の天気は快晴。車が慌ただしく通り過ぎていく。街の空気から新たな一週間の始まりであることが、なんとなく感じられた。 それにしても、見渡すところハングル文字だらけ。もう少し日本語もあるのではと淡い期待を持っていたが、皆無。しかも、ハングル文字が読めたとしても言葉の意味がわからないことに今ごろになって気付かされた。漢字なら直感でピンと来るかもしれないが、この文字からは何も連想できそうにない。単なる記号以外の何者でもなかった。 まずは、近くの国内航路のフェリーターミナルに船の時間を調べに行く。明朝はここから高速艇に乗って全羅南道の麗水 (ヨス Yosu) へ行こうと思う。ここでは時刻表の地名が漢字表記併用になっていたので助かった。 さて、明日の予定は確認てきた。では、これから何をしようか。 待合室の隅で、こそっとガイド本を開く。国際ターミナルとは違って、ここなら日本人をカモにする連中もいないだろう。 しかし、本日の予定といっても、今晩泊まる宿を捜すことの他には何も思い浮かばない。そもそも旅の目的がとりあえず海外に出てみるということしかなかったので、研究不足は明らかだった。ガイド本を斜め読み、自販機でジュースを買い、煙草を一服。結局、次の予定を探すために釜山駅に行ってみようと思った。 ちょうど、ターミナルの前はバス停で、都合がいい。 しかし、バスに乗ろうとしても、乗り方のシステムがよくわからない。いや、それ以前に、行き先が全部ハングルで書かれていて、お手上げだ。「えーと、あれとあれが一緒になっているから、"か" で、それから....」なんて読んでいるうちに、バスは次々と通過していく。せめて、Pusan Station と書いてあれば... 「無理だ」 あきらめて、"釜山の街並みを見るのだ" という言い訳をつけて歩くことにした。その方が釜山駅に確実に早く着けそうだった。 |
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| この当時は、自分の廻り対して非常に警戒していて、スキを見せてはいけないとガチガチの状態でした。人前で日本のガイド本を取り出すことも相当ためらってました。 ◆「小遣い稼ぎ」 このとき、釜関フェリーで会ったご主人から、 「免税店でウイスキーとタバコを買ったら、小遣い稼ぎになることを教えてあげれば良かったねぇ」 と言われました。後に「定本 ディープコリア」(青林堂刊)でその言葉の意味を知りましたが、この時買っていたら、ずっとウイスキー瓶をザックに入れたままになるところでした。釜山フェリーターミナルに合計3回上陸していますが、日本製品を買い取るポン引きの姿をまだ見掛けてません。今でもいるんでしょうか? |
#6. 言葉の壁 (釜山)
| 400万都市、釜山のメインストリートを歩く。洗練されたオフィス街というよ
りは、都市が持っているすべての要素を狭いスペースに詰めこんだ印象を受ける。ただ、ゴミの多さが少し気になる。 車の運転は荒そうだ。随所で警笛が鳴らされている。どの車も相当スピードを出していて、それが忙しそうな街のイメージを演出している。 道路のアスフ ァルトの濃い色は、自分が子どもの頃のそれを思い出させる。自分の足元の歩道には、外国との窓口になる都市のわりに、必要以上の経費が掛けられていないようだ。点字ブロックなど全くない。そういえば自転車を全く見かけないなぁ .....日常の生活と違う光景は、ささいなことであっても、すぐ目に付く。それが新鮮に感じられて、面白い。 両替の時にもらった千ウォン札がなくなってきた。山ほど持っている 1万ウォン札は日本の 1万円札同様に自動販売機では使えないから、とても不便だ。それで、通り掛かりの銀行に飛び込んでみた。 すぐに日本でも見かける自動両替機らしきものを発見できたので、列に並ぶ。そして、自分の番が来た。 「うっ、液晶画面まですべてハングルか...」 ここは外国・韓国だということを忘れていた。日本でも液晶画面は日本語表記だから、ごくあたりまえのこと。文字を読んでみようと思ったが、すでに後ろには列ができている。 これはいかん、と窓口へ移動。こういう時にまず口に出てくるのは英語だったが.... 「Excuse me exchange」 中学校以来、足掛け10年も英語をやって、これが精いっぱいなのが情けない。窓口の男は疑問の表情を一瞬見せた後で何かしゃべっているのだが、これがまた韓国語なのでさっぱりわからない。仕方がないので、まず 1万ウォン札を見せた後で、次に 5千ウォン札と千ウォン札を見せ、最後に 1万ウォン札を 5枚手渡した。 男は、「何だそういうことか」という感じで事務的に札を替えてくれた。少し恥ずかしくなって、その場から逃げ出した。
これは困った。時刻表って韓国語では何と言うのだろう。2階の待合室に場所を替えて、ガイド本に載っていないか隅々まで調べると、あった。観光交通時間表 (クァングァンキョンドンシガンピョ)。東京特許許可局の様な言い難い単語。 早速、別の売店に行き発音するものの、やっぱり理解してもらえない。ガイドブックを見せて指差したら 「オー、シガンピョ。」 やっと通じてホッとする。 時刻表の値段はと尋ねると、"サム・チョン・ウォン"と聞こえたので、3000ウォンか。 1000ウォン札を3枚差し出す。正解。もっとも、ガイド本にも値段が載っているので、わかって当然なのだが。しかし、韓国人の言っていることが聞き取れたのだと思うと、嬉しくなった。やはり数字を覚えた成果か。 しかし、実のところは、そのやりとりすら正確に聞き取れてなかったことになる。すぐに挫折はやってきた。 |
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| 韓国語の会話集も持たずに韓国に出かけた私がアホでした。いや、韓国語の会話集が販売されている事を知りませんでした。賢明な読者の皆様は、そのあたりは大丈夫ですよね。 今回以降の韓国語のセリフには、さまざまな間違いがあります。当時はこれが正しいと信じ込んでいましたので、そのつもりで読んで下さい。もっとも、今でも信じたままというのも多いのですが。
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#7. 地下鉄に乗って (釜山)
| 「とりあえず地下鉄でも乗って、どこかに行ってみよう」 釜山駅からの地下鉄沿線のみどころを探してみると、韓国でも有名な温泉地 東莱 (トンネ Tongnae) が見つかった。そういえば、昨晩はフェリー泊りで風呂に入っていない。ここはひと風呂浴びて、湯上がりにビールでもクイッと飲みたいところ・・・・・ 行動計画が決まれば、話しは早い。 釜山の地下鉄は1路線のみ。料金体系は基本的には 「近く」 と 「遠く」 の2種類だけで、大雑把なところが韓国らしくていい。しかも、50〜60円程度の運賃は、日本の感覚でいうと非常に安い。 まずは、券売機の前で現地人が買うのをジロジロと観察した後に、実戦に移る。切符の種類の選択のやり方がイマイチわからなかったが、適当にいろんなボタンを押していたら、ちゃんと切符が出てきた。また、最初は牛乳の自動販売機かと思っていた機械が、よく見ると 1000ウォン札の両替機だった (なんという見間違いや)。ここぞとばかりにまとめて 500ウォン硬貨に両替する。そして人の後ろに続いて、自動改札を抜ける・・・・・これはバスと違って、なんとかなりそうという感触がつかめた。 地下鉄自体は日本と全く変わらない。車内は満員。すぐに四方を体格のいい細い目のオッサン達に囲まれ、身動きが取れなくなった。 発車すると女性の声の車内放送が流れる。韓国語で「次は○○です。出口は右側。お降りの際は足元にご注意下さい。まもなく○○です」のような事を言ってるのだろうと想像できる。この「まもなく○○です」の部分が、「ネッタッピィ ○○」に聞き取れる。駅をいくつか過ぎる頃には、そのフレーズがパチンコのフィーバー機のメロディの様に脳の中で反芻するようになった。 30分ぐらい乗った頃、「ネッタッピィ トンネ(東莱)」と聞こえた。駅名標の英字表記を見ても間違いない。 さぁ、次は 温泉・温泉・ビール・・・ という意気込みで東莱駅を後にしたが、いつまでたっても温泉らしき風景に出会わない。おかしい。もう一度、ガイドブックの地図をよく見ると、東莱温泉はここから更に2駅先の温泉場駅で降りないといけない事実が判明。おいおい、これから東莱駅に戻るか・・・ いゃ、それも面倒。だいたい、公衆浴場に行ったとして荷物やパスポートは大丈夫なんだろうか。そうでなくても言葉が通じないのに・・・ 。いろいろなことを考えるうちに、一気に戦意喪失してしまった。 こんな時、一人旅で便利なのは、即座に行程を変更できるところ。地図を見ると西に約 2キロ先に「釜山百貨店」がある。韓国のデパートにはどんなものを売っているのか非常に興味があるし、隣は高速バスターミナル。下見をしておくのも悪くはない。いろいろと収穫がありそうなので、その方向に歩いていく。 しかし、30分歩いてやっとたどり着いた釜山百貨店には、金属製の鉄格子のシャッターが降りていた。今日は月曜日。定休日であろうか。その時、どこからか12時の音楽らしきものが流れてきた。もう半日を消化してしまったことになる。 こんな調子でこれから一週間の旅行に耐えられるのか、とも思えてくるが、まぁ、いいか |
| 釜山の地下鉄も、1999年春に 2号線がオープンします ◆ 車内放送の 「ネッタッピィ ○○」 ずっと韓国語にちがいないと信じておりましたが、よ〜く考えてみると 「Next Stop is ○○」ですねぇ。心に余裕がないと聞こえるものも聞こえないし、見えてるものも見えないもんです。 (附記) 先日、釜山の地下鉄に乗った時には 「This Stop is ○○」と聞こえました。英語能力の低さを露呈してますね。まったく 。(1999.4.1) |
#8. 勉強したはずなのにわからない (釜山)
| 高速バスターミナルの見学。構内に入ると、このままバスに乗ってどこかへ行ってしまいたいような衝動に駆られてしまう。電光掲示板には行先別に次の発車時刻が表示されているようだ。しかし、ここの表示はハングルだけ。地名についてはなんとか読めるものもあるが、バスの種類らしき文字の意味がわからない。
おまけに、ずらっと並んでいる売り場のどこで切符を買えばいいのか見当がつかない。 あぁ、やっぱり高速バスには乗れそうな気がしない。 ターミナルの一角は食堂になっていて、更にその入り口付近に屋台らしきものがある。湯気に包まれている鍋には串が一杯入っているのが見えた。これはいったいなんだろう。妙に気になる。 しばらくすると性格のきつそうなOLがひとりでやって来て、それを注文した。串には肉らしきものが数片あり、2串分を汁に盛って出してくれるようだ。じっと観察 していたら、おばさんが手招きするので、OLの隣に腰掛ける。 食べ方もチェック。ネギの入ったタレを付けるようだ。早速、真似をして食べてみる。 むむっ。肉のようなものの正体は魚介練り製品。単体では味がとても薄く、酢醤油のタ レを付けて丁度いいぐらいだ。しかし、これはなんという料理名なのだろうか。今晩にでも調べてみようと思う。 さて、勘定だが、よく考えてみるとここでは、メニューも何もなく金額不明。いくら出せばいいのか迷ってしまう。もしかしたら、ボラれてしまうのではという不安も解消できない。 覚えている数少ないハングルで恐る恐る値段を聞いてみる。 「オルマムイカ ( いくらですか?)」 「*****」 えっ、今、なんて言ったんだ。「ウォン」なんて言葉は少しも聞き取れなかった。隣のOLにジェスチャーを交えて尋ねる。直ぐに、ぶっきらぼうな返事が返ってきた。今度は聞き取れたのだが・・。 「チョノ」 わからない。「チュ」とか「チ」の様にも思える微妙な発音。数字の「7」のことだろうか。そして、やっぱり「ウォン」とは一言も言ってない・・・ どうにもならないので、持っている硬貨を少しずつ渡していく作戦に出た。 まず 500ウォン硬貨を出す。まだ足りない。 次に、100円硬貨の感覚で100ウォン硬貨を渡していく。1枚。2枚。3枚....... 4枚めで手持ちの硬貨はなくなってしまった。すると、おばさんは、「もういいよ」といった感じの表情を見せた。 結果的に900ウォン。900ウォンは「クー・ペク・ウォン」じゃないの? まだ、韓国の物価に対してのスケールができていない。果たしてこれでよかったのだろうか。闇の中である。
だいたい釜山駅の方角がいまいちわからない。道のどちら側の停留所で乗ればいいのだろう。 迷っているうちにバスは次々とやって来て、廻りの人間はすっかり入れ替わってしまっている。なかなかお迎えの来ない保育園児の様な、取り残されている感覚。 結局、最後まで踏ん切りがつかなくて、バスに乗るのをあきらめてしまった。唯一勝手の分かる地下鉄で帰ろう。同じ道を引き返すのは面白くないけど、それ以外のことが思い浮かばなかった。 朝からただ歩き回っているだけ。それほど重くないはずのザックが肩に食い込んでくる。それでも、歩き続けるしかなかった。 |
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| 先日、釜山の高速バスターミナルに2年ぶりに行きました。当時は、バスの種類「優等」「高速」の文字が読めなかったのです。 このナゾの食べ物は、韓国風おでんと発覚しました。韓国の屋台の標準から考えてみて、このおでんの値段は1000ウォンと思われます。ぼったくり恐怖症どころか、逆に全額支払っていなかったのです。今になってわかる、おばさんの気持ち。 ◆「オルマムイカ ( いくらですか?)」 「オルマイムニカ」が正解ですが、しばらくはこういう風に覚えていました。しかし「オルマ」が "いくら" という意味だから、大勢にはには影響しないか。いゃ、韓国人はこちらが最後まで言うのを聞かずに、たいていリアクションがあります。もちろん、私が訳のわからないことを言ってるというのもありますが。 ◆「チョノ」 数字の千を意味する「チョン」+「ウォン」を、2文字のリズムで発音する「チョヌゥォン → チョノン」が正解。日本語の感覚では連音化することなど考えも付きませんでした。 同様に、すべて2文字のリズムで 百ウォン 「ペグゥォン → ペゴン」・千ウォン 「チョヌゥォン → チョノン」・万ウォン 「マヌゥォン → マノン」 こいつをセットで覚えて、先頭に数字をつければいいです。 しかし、今になって思うのだが、筆談することぐらい思いつけよ〜。ちょっと恥ずかしいです。 |
#9. 宿さがし (釜山)
| ドアが開き、外に押し出される。そして、開放感に浸るひととき。 釜山の地下鉄はどうしてこんなに混んでいるのだろう。運行本数や、月曜日の白昼の時間帯を考えると不思議なくらいだ。需要と供給のバランスが取れてない感じがする。 日頃の運動不足がたたって脚は棒のようになっているのに、韓国人に廻りを取り囲まれ身動きも取れずに東莱駅から40分あまり。釜山駅の待合室のベンチに腰を下ろすと、思いっきり脚を伸ばした。この待合室もそうだが街の随所に ATM機がある。囲いらしきものはなくて、開放して設置されているのには驚きだ。 さて、そろそろ今日のねぐらを探してもいい時間だと思う。見知らぬ土地では今日帰るところが決まっていると精神的にも落ち着く。明朝は、全羅南道の麗水 (ヨス Yosu) 行きの船でスタートするので、今晩はできるだけフェリーターミナルの近くに宿を決めようと思う。 さぁ、やる気が出てきた。 しかし、待合室を出て5分もたたないうちに、いきなり釜山駅隣の「アリランホテル」の入口に日本語のビラを発見。 「季節特別料金 1st class (☆☆☆☆) HOTEL ツイン、4万 → 2万ウォン」 素晴らしいディスカウント幅。2月はシーズンオフで客が余程来ないのだろうか。ガイドブックによると、このホテルでは日本語も通じるようだし、もうここでいいんじゃないの。決めちゃえよ..と気持ちが傾いてきた いやいや。ホテルなんかどこに行っても泊まれるし、宿が見つからなかった時の最終手段として考えよう。やはり韓国に来ているのだから、旅館とかオンドル部屋にこだわるべきだ〜..と強がって、安気な選択を見送ってしまった。それでも最悪の場合の保険ができたと考えると、気分がずいぶん楽になった。 今朝歩いたのとは別の路地に入ってみる。いろいろな商店がずっと続く。看板の意味はまったく分からないから、店の中を見ながら観察。日本でも見かけるコンビニのマークが心強い。 そうこうしているうちに地下鉄でひと駅分歩き、中央洞に着いていた。このあたりは、宿の集中地域らしく、韓式旅館を表わす「温泉マーク」を至る所で見つけることができる。しかし、ホテルは拒絶したとはいえ、いきなり訳の分からぬ宿に飛び込むだけの度胸はまだない。まずは、ガイドブックに3軒載っている旅館を上から順にあたってみることにする。
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| ◆釜山 中央洞の「ソウル荘旅館」 各種ガイドブックに紹介され、いろんなホームページの旅行記でも頻繁に名前が出てきます。「韓国がはじめての日本人」が釜山ではじめて泊まる旅館としては、なかなかいいと思います。詳しい内容は次回に書きます。 ちなみに写真の建物の中央は食堂(テジクッパ)で、旅館の入口はその横のドアです |
#10. これがオンドル部屋?? (釜山)
| 「・・・・・・」 覚悟を決め気合を入れて開けた「ソウル荘旅館」のドアの向こうには、階段しかなかった。 おいおい、本当に営業しているんだろうか。そのまま薄暗い階段を上がっていくと、踊り場の部分に小さなガラス戸が見える。どうやらそこがフロントのようだ。中を覗き込むと、3畳ほどの部屋の中で、男が何か事務処理をしている。隣にストーブの炎が赤々と見えた。 ガラス戸をコンコンと叩く。男が顔を上げて、戸に手を掛ける。 さぁ、会話開始。最初が肝心、何度も反復練習した、あの一言を。 「パン・イ・イッスムニカ (部屋がありますか?)」 一瞬、間が開く。 やばい...通じなかったのか... 急いで日本語も一緒に使ってみる。 「今日、部屋は空いてますか?」 返ってきたのは、聞き慣れた言葉の方だった。 「ありますよ」 男はそう言うと、内線電話を掛けた。すぐに、階上からおばさんが手招きする。どうやら、これで最初の儀式は終了したようだ。 2階に上がってから薄暗い通路を2回曲がり、一番奥の部屋に案内される。まずは、部屋を見てくれということらしい。客室のドアが開けられると、廊下の景色がカラー表示になる。ちゃんと窓は付いているようだ。 「・・・・・・」 しかし、これがオンドル部屋なんだろうか。4畳半の薄い黄色のリノリュームの床に煎餅布団がひとつ敷いてあるだけ。枕はなぜかふたつある。続いて、バス・トイレも見せてくれる。築後25年のビジネスホテルのような感じ。まぁ、これで十分だけど。 「OK! イルパク・オルマムイカ (一泊いくら?)」 と、再び日本語を添えて聞いてみる。すると、おぼさんもカタコトの日本語で答える。 「2万」 たぶん、2万ウォンとは思うが(日本語で返ってきてるから当たり前か)、念のためにノートを取り出し"20,000 W"と書いて見せる。おばさんは、頷く。ここで筋書き通りに不満の表情を浮かべる。そして、次の言葉を出す瞬間、絶妙のタイミングでおばさんが反撃。 「ディスカウント だめ」 この宿はガイドにも紹介されているだけあって、日本人が泊まりに来ては同じ事ばかり言うので、その対応を覚えてしまったのだろうか。もう少し粘ってもよかったが、価格はガイドの通りの2万ウォンだったので、別に不満はない。それでも日本のビジネスホテルと比べてもかなり安い。 「OK!」 ここで良いですと、表情とジェスチャーで訴える。そして2万ウォンをその場で支払った。 おばさんはすぐに宿帳を持って来て、日本人向けマニュアルに沿った対応をしてくれた。実年齢を書くと、顔を見上げて笑った。ここでも、日本の学生と思われていたらしい。最後に、外出する時はドアの鍵をこういう風にして掛けて下さいと実演し、帰っていった。
布団の上にうつ伏せになりテレビを点ける。韓国では昼間の放送はないと聞いていたのだが、3チャンネルほどオンエアーされている。アイドル系の歌番組のようで、黄色い声が耳に残る。 少し眼を閉じてみた。いけない、このままでは寝てしまいそうだ。 |
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| この当時は、韓国語だけでは自信がなくて、日本語を併用していました。これは、韓国でも多少は日本語が通じるということを聞いていたからです。しばらくはこの状態が続きます。 ◆「パン・イ・イッスムニカ (部屋がありますか?)」 ガイドブックのひらがなの通りに日本語で発音しました。実際には続けて話すと真ん中の「イ」は連音化して音変化するので発音が難しいです。今は「スッパク ハゴシップンデヨ (宿泊したいのですが)」の後で、単純に「パン・イッスムニカ?」「ピンバン(空き部屋)・イッスムニカ?」と言ってます。 |
#11. 辛いものが食べたい (釜山)
| ザックを降ろして背中が軽くなると、少しだけ体力が回復してきた。ジャケットのポケットに忍ばせたガイドブックをこそこそと見ながら、ソウル荘旅館から南方向へと歩いていく。 小さな商店が軒を連ねている。日本のようなアーケード街とか飾りつきの街灯はないが、むしろ看板のカラーが鮮やかで絵になる。どの店も営業していて、歯抜けの様なさびしいところは全く見られない。 レコード屋があったのでふらふらと立ち寄ってみる。韓国のアーティストのコーナーも、日本の50音順配列の様に並べられているようだが、それがわかっても何にもならない。韓国歌手の名前など、チョー・ヨン・ピルぐらいしか知らないのだから。 ジャケットを見て中身の音楽を想像しながら、探す手を動かしていく。さっき、テレビに映っていたアイドルの顔もある。結局、ジャケットのチマチョゴリ姿が韓国らしい女性歌手のCDを手に取った。韓国では政策上日本の歌謡曲が解禁されていないから、全曲が日本アイドルのカバーバージョンだったというのは、まずないだろう。 これといった目的もないので、適当に角を曲がっていく。雰囲気がだんだん賑やかになると、こちらも次第に急ぎ足になる。人の波はどんどん厚くなり、蟻の行列のように真っ黒な歩道が、はるか前方まで続いている。両側路上駐車で道幅の狭くなった道路は、渋滞で固まったまま。どうやら、この周辺が釜山の商業の中心みたいなので、この人波に飲み込まれてみる。 日本でもお目にかかる有名ブランド店。華やかな外観でウインドウショッピングを楽しませてくれるたくさんの店。カップルの姿も多いが、女の子同士が手を組んで歩いているのがもっと多い。 ふと入った路地裏に、大判焼き4個で1000ウォンという貼紙のある屋台があった。こういう風に金額がわかっていると、安心して買える。そういえば高速バスターミナルで妙なものを食べてから何も口にしていなかった。フーフーしながら、食べ歩き。疲れた身体に、この甘さはなかなか心地良い。調子に乗って一気に食べてしまう。
スパナをトンカチで叩きながら、「これは丈夫だ」とマイクで絶叫して実演販売している親父の廻りを大勢の人が取り囲んでいる。みんな真剣な眼差しで見つめているのが面白い。どの屋台も、オモチャ箱を見ているような楽しさがある。 足の疲れもどこかに忘れて、屋台の群れの中をずっと歩き回っていた。 来た道を引き返していると、途中に石段が見えた。ガイドブックを見ると釜山のランドマーク「釜山タワー」のある竜頭山公園の入口とわかったので登って行く。そこは小高い丘なのだが、登っているうちに息切れしてきた。そして、甘さで胃がもたれてきた。口直しにコーヒーを飲もう。 やっとの思いで頂上に着くと、売店へ直行。パック入りのコーヒーがあったので、1000ウォン札を渡すと600ウォン返ってきた。400ウォンだったのか。 煙草に火を付け、コーヒーにストローを差込み、一口飲む。それは、チョコレートジュースだった。 |
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| ◆はんぺんのような食べ物 「ホットク」という名前のお菓子です。小麦粉や砂糖を使った生地を、お好み焼きの様に鉄板の上で円形に焼きあげ、餡を包みこんでできあがり。鉄板にはとても多くの油が敷かれていたため、揚げ物と間違えました ◆このとき買ったCD
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#12. 長い一日の終わり (釜山)
| 長い一日が終わろうとしている。日頃、車に頼るばかりで、日に800メートルぐらいしか歩いていないのが、今日一日で軽く15キロは超えているのではなかろうか。太股もふくらはぎもパンパンに張っていて、もう言う事を聞いてくれない。早く布団で横になりたい。
それでも、ビールと朝食を買いに、日本でもおなじみのコンビニ 「サークルK」に立ち寄る。 レジに並んでいると、先客の米国人がもめはじめた。どうもドル紙幣で支払いをしようとして、店主がそれはできないと拒絶している様子だ。まぁここは韓国なんだからウォンで払うのが当たり前だろうと思いながら、なにげなくレジの金額表示を見た。そこにはハングル文字が踊っている。今朝の銀行と同じシチュエーションだ。 「ゲッ、韓国では支払い料金の表示までハングルでやるのか。ガイドブックは旅館に置いてきたし、やばい」 瞬間的に頭の中で「1はイル、2はイー」なんて反芻しているうちに、自分の番が来た。 「W 5,000」 ふ〜。それまでの表示が数字に変わって、我ながらホッとしてしまった。きっと「いらっしゃいませ」といった表示なのだろう。何か一日中、ハングル文字に振り回されている感がある。 ソウル荘旅館に戻り、風呂に入ろうと着替えを準備していたら、パンツがないのに気付いた。ザックをひっくり返してみてもない。何か忘れ物があるのでは思っていたのだが、よりもよってパンツだったのか。しかし、現在装着している物を履き続けるのは嫌なので、仕方なくサークルKへ逆戻り。 日本でもそうだが、コンビニのパンツは高い。 「W 5,500」 先程の夕食よりも割高ではないか。しかも「1000ウォン紙幣を 5枚取り出す」のが「1000円紙幣を 5枚取り出す」感覚になっていて、パンツごときに5000円も使った錯覚に陥る。 とにかく、いろいろな事に対して感覚がつかめなくて、手探りの状態。だから、外国なのだろうけど。 風呂上がりに韓国ビールの「CAFRI」を一杯。ワインの様な酸味が後口に残る変わった味。しかし、酔いの廻りが非常に早く、2本目を開けるのはやめて、横になる。テレビの韓国語の発音が耳障りなって消した。身体中の疲れが頭に集まってきているような感じで、いつまでたっても眠りに就けない。 夜が更けるにつれて、オンドルの効果が徐々に発揮されてきた。オンドルの場合は最初から暖かいので、人肌で徐々に温めていく日本の布団の感覚でいると、これまたうまいこといかない。最初はジャージの上下を着て布団に入っていたのだが、暑くて寝られたものではない。最後には、真冬 (2月上旬) というのに、Tシャツとパンツだけになってしまった。それでもポカポカで、ふとん乾燥機と一緒に寝ているようだ。 ・・ということは、洗濯物もオンドルの床で乾かせばいいのでは・・・と思い、早速、布団の廻りに広げてみる。目の前に妙な光景が展開されている。 さあ、明日はどんなことが起こるだろうか。とても、楽しみだ。 |
| ◆韓国の冬の旅の服装について 屋外での寒さだけしのげれば、あとは大丈夫。オンドル部屋に泊まる限り、寝る時の服装は何も持っていかなくていいです。逆に、オンドルの効き過ぎで熱気充満、別府血の池地獄状態にハマる可能性があります。特に、少し料金が高めの旅館がアブない。 |
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