歯科インプラント

 毎回様々なお口の中の健康についてお話していただくこのコーナー。
今月号では高齢者のインプラント治療についてのお話です。
2004年6月号


Q.現在、上は総入れ歯、下は部分入れ歯ですが、下の残っている歯がグラグラで噛めません。最近新聞でインプラントについて知りました。現在、61歳で治療ができるかどうか心配ですが、いままで歯のことでは苦労してきたので、何とか義歯ではない治療ができたらと思います。一度伺ってご相談したいと思っています。(61歳、女性)

A.義歯(入れ歯)でも、いいものを作ればある程度の審美的・機能的回復は可能だと思います。しかしながら、重度の歯周病で歯を失い、義歯の使用期間が長い場合などは、歯ぐきの土手が痩せ、安定が悪くなりやすく、機能的にはどうしても限界があると思います。また、嘔吐反射(おうとはんしゃ:上顎の天井に少しでもものが接触すると吐き気がする反射)などで上顎の総義歯が使えない人もいらっしゃいます。そのような方にはインプラント治療が最適ですが、外科処置を伴う治療法ですので、恐怖心が強い方も多いと思われます。しかしながら、骨の移植や再生を行わなければ、手術の程度は抜歯と同程度で、想像しているよりも軽いとお考えいただいてよいのではないかと思われます。また、研究の進んだインプラントは、現在その応用範囲が広がっており、ただ単に年齢が高いからできないなどといったことはなくなってきています(世界的には90歳以上のインプラント治療も記録されています)。当院でも70歳以上でインプラント治療をお受けになり、何ら問題なく経過している患者さんは何人もいらっしゃいます。下に70歳、女性の上下無歯顎(全く歯がない状態)のインプラント治療をお示しいたしますが、全身状態が非常に悪い方やご自分で歯の手入れができない方でなければ、多少持病がある方でも安心してお受けいただけると考えています。快適にものを噛めるという喜びとその重要性は、年齢を重ねるほど大きくなってまいります。そのことに気づいていらっしゃるのでしたら、一度詳しい検査をお受けいただき、最善・最良の治療についてご検討なさってみてはいかがでしょうか?

70歳、女性、無歯顎症例のインプラント治療

治療前(初診時)の口腔内所見
下顎の残存歯は歯周病でグラグラ状態。
上下の義歯は不安定で十分に噛めない状態 上顎は嘔吐反射もあり、義歯が使用しづらい状態であった。

治療前
ほほえむと口角は下がり、深いシワができていた。
治療後
しっかりと快適に噛めるようになり、お口元もはつらつとしている。若返ったように思えるとお喜びのご様子です。

治療後の
口腔内所見
義歯とは異なるしっかりとした噛み心地と、
とお喜びのご様子です。現在、術後3年を経
口蓋が覆われていないため味がよくわかる
過し、全く問題なくご健康である。

治療前パノラマX線写真
治療後のパノラマX線写真
上顎の骨は高度に失われていたが、スプリットクレストテクニックや骨移植等により、インプラントの埋め込みに成功している。