2000年1月号
…福山先生、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
福山−こちらこそよろしくお願いします。
…先生、今回は”単独歯欠損インプラント”のケースをご紹介していただけるんですね。
福山−はい。咬み合わせは、上下の歯並びが全体でバランスをとっており、たとえ1本の歯でも失われるとバランスは壊れていきます。ですから単独歯欠損でも放置することはできず、咬合が崩壊しないように何らかの補綴処置が必要となってまいります。単独歯欠損の場合、通常図1のようなブリッジによる補綴処置がなされますが、臨在歯がむし歯のない無垢の天然歯である場合、歯を削るということに抵抗を感じる方は多いと思われます。また、前歯部においては、審美的要求も高くなり、より自然に近い治療結果が強く望まれます。今回ご紹介する患者さんも、抜歯が必要な歯の臨在歯を削らずに治療したい、より審美的に治療してほしいということで、単独歯欠損のインプラント治療を希望され、遠方よりわざわざいらっしゃいました。
…初診時のイグザミネーションの結果はいかがだったのでしょうか?
福山−一見するとどこにも問題がないように見えるのですが、右上顎側近歯(A)に著しい動揺と接触痛がありました。歯周ポケットも深く、X線検査からも明らかですが、抜歯適応の歯と診断しました。そして、ご希望どおりに単独歯欠損のインプラント治療をすることになりましたが、抜歯予定の歯の周りの骨が吸収しているため、通法どおりに抜歯後しばらくしてインプラントをした場合、歯間乳頭(歯と歯の間の歯肉)が下がってしまい、審美的問題を引き起こす可能性がありました。
…実際にはどのように治療なさってのですか?
福山−十分な消炎処置の後、抜歯と同時にインプラントの1次手術(人工歯根の埋め込み手術)を行いました。この際、最終的な結果が審美的になるような位置にフィクスチャ−(人工歯根)を挿入し、露出したフィクスチャ−上方部の周囲には骨移植を行いました。また同時に、吸収性メンブレンを用いて骨の誘導再生をはかりました(図2)。6ヶ月後の2次手術(土台の連結手術)においては歯間乳頭が退縮しないような切開方や縫合法を行い、インプラントの上部構造の土台には、より審美性の高いセラミックを使用しました(Bの左)。1次手術から2次手術までの間、歯牙欠損部は、人工歯を両隣在歯に接着し、審美的問題を解決しました(Bの右)。
…治療期間はどのくらいかかったのでしょうか?
福山−遠方からいらっしゃった方で、予定通りの通院が難しく、治療開始から終了までに約1年かかりました(実質通院回数は10回)が、通常は6〜10ヶ月程度で終了します。
…治療後の患者さんの反応はどうでしたか?
福山−治療過程も含めて、ご自分の予想以上の結果に大変満足していただいております(C)。現在のインプラント治療は、機能面のみならず、審美的にもすばらしい結果が出せるようになってまいりました。患者さんの高度なご要望に応えられるように、頑張りたいと存じます。
…本日はありがとうございました。