2001年8月号


…福山先生、今回はモートン歯科クリニックにおける歯科矯正治療のお話をしていただけるということですが。福山−はい。一般に歯科矯正治療というと単に歯並びを良くするというイメージがありますが、当院では上下の顎の位置を適正にし、お顔のバランスを整え、それにマッチした咬み合わせを構築するという考えのもとに治療を行っています。これは、当院歯科矯正治療のスーパーバイザーである横田盛先生のフィロソフィー(治療哲学)に則って行っているんですよ。


…具体的に症例をご紹介していただけますか?
福山−成長期にある学童と成人とでは当然治癒方針が異なりますので、それぞれ一症例ずつご紹介いたします。最初に、9歳の女の子の症例ですが、初診時のイグザミネーション(詳しい検査)の結果、咬みあわせが深く、上下の顎骨の位置のズレも著しく、重度の上顎前突症(Skeletal Class II div 2)と診断しました。

…どのように治療なさったのですか?
福山−横田先生の考案なさったMGA (Mandibular Growth Advancer)と顎外矯正装置の併用により、上顎の前方への成長を抑制し、下顎の前方への成長を促進させました。これにより、上下の顎骨のズレ(骨格の異常)は解消され、1本の歯を抜くこともなく、バランスのよい口元と咬み合わせを構築することができました。

…手術をすることなく、下顎を自由に前へ成長されることができるのですか?
福山−はい。ただし、顎の関節がまだ完成していない、成長期にある時期でないとこのようなことはできません。従って男児では13歳位、女児では11歳までにこのような矯正治療を行わなければ、手術をせずに、顎の変形(顎変形症)を含めた骨格の異常を解消することはかなり困難になります。


…そのような時期をすぎた場合は、どのような治療になるのでしょうか?
福山−不幸にして、骨格の異常が残ったまま成長してしまった場合でも、治療法がないわけではありません。ただし、それを解決するためには、外科的矯正治療を併用しなければなりません。このような症例としてご紹介いたします患者さんは23歳の女性で、お口元の突出感と歯並びがきになるとの主訴でご来院なさいました。イグザミネーションの結果、上顎に対して下顎はかなり後ろの位置にあり、上下の前歯は著しく前に突出していました。そのため、バランスのよい口元や咬み合わせを構築するためには、上下顎骨の外科的治療の併用が必要と診断し、それを前提として術前矯正を行いました。その後、入院、全身麻酔下に外科的矯正手術を行い、治療結果に患者さんは大変満足なさっています。しかし、この患者さんも成長期の適切な時期に適切な矯正治療を受けていれば、このように大きな外科的矯正手術を受けずに済んだ可能性が高いと考えています。

…つまり、タイムリーな治療が必要だということですね。
福山−歯科矯正治療に対する関心は、日本においても年々高まっていますが、どの時期にどのようなことをすればよいのかということに関しては、まだまだ認識が十分なされていないのが現状です。お口元や歯並びの問題は、ただ単に快適に噛めないとか、虫歯や歯周病になりやすいといったことだけではなく、思春期以降においては、それがコンプレックスとなり消極的な性格や人格を形成しやすいともいわれています。お口に対する関心が高まることによって、より積極的で充実した人生が開けると私は信じています。
…本日はありがとうございました。