1999年11月号


…福山先生、今回ご紹介して頂く”顎変形症”とは、そのような病気なのでしょうか。
福山−はい。顎変形症というのは、上下の顎の骨の形態、位置や顎間関係の異常によって顎顔面に変形や美的不調和・咀嚼・発音障害等の機能障害を起こしうる疾患です。今回ご紹介する患者さんは、29歳の女性で、口唇や顎のゆがみ、受け口が気になる、快適に噛めない等の主訴で、ご来院なさいました。



…初診時のイグザミネーションの結果はいかがだったのですか?
福山−下顎の変形(左方への偏位)、反対・交叉咬合、歯の叢生(そうせい…凸凹とした歯並び)等の不正咬合が認められ、臼歯部の数本の歯でしか十分に噛めない状態でした。また、開閉口時に左の顎関節に雑音があり、顔貌から明らかですが、X線検査でも下顎骨の変形が認められ、顎変形症と診断しました。

…なぜ、このような変形が起こったのでしょうか?
福山−顎変形症の原因としては様々でありますが、先天的原因(出生前)と後天的原因(出生後)とに大別されます。この患者さんの場合、小さい頃からの写真を分析しましたが、中学生までは顎変形が認められず、それ以降から徐々に変形が起こったようです。原因としては、この頃にうつ伏せ寝をして腕枕をしたり、頬づえをよくしていたということで、後天的原因(悪習癖)によって引き起こされたものと推察しました。

…うつ伏せや頬づえで顎が変形するのですか?
福山−はい。持続的な圧迫によって歯の移動はもちろん、顎顔面の骨の変形は容易に起こりうるのです。特に、成長期には著しい変化が起こりますので、好ましくない寝方や頬づえ、片側噛みなどの悪習癖には気をつける必要があります。

…治療期間はどのようになさってのですか?
福山−正面・側面のX線規格写真の分析、咬合も模型の診査などから、保存的な矯正治療では十分満足のいく結果は得られないと考え、患者さんと十分にディスカッションし、外科的矯正治療を行うことにしました。この治療法は、以前にも本誌でご紹介しましたが、著しく歪んだ下顎骨を外科処置により理想的な位置や形態に修正する方法です。本症例の場合、術前の矯正治療を約1年間実施し、入院下に外科的矯正術を行いました(術者:福山)。入院期間は3週間で、術後の矯正治療や要処置歯の治療に10ヶ月を要しました。

…治療過程で考慮なさった点は何でしょうか?
福山−外科処置を伴う矯正治療ということで、治療に対する恐怖心を無くすように、患者さんの精神面のケアに配慮いたしました。このような大きな処置をお受けいただき、すばらしい結果を達成できたのは、私たちの配慮に対する患者さんのご理解と信頼感があったからこそと、スタッフ共々うれしく思っております。患者さんに対する最大限の配慮は、最善最良の治療を行う上で大変重要であり、これからも心がけて行きたいと思っています。

…本日はありがとうございました。