乗り物酔いをよく知るための実験
乗り物酔いの動物実験
乗り物酔いの研究のために、動物実験をおこなう場合、すべての動物が乗り物酔いの症状を示す訳ではありません。種差が存在します。たとえば、サルやネコやイヌは乗り物酔いの症状を示すために実験動物に用いられますが、ウサギやラットやマウスはまったく乗り物酔いの症状を示しません。しかし、ジャコウネズミ(鹿児島県や奄美大島近辺に生息するネズミ)は、振動刺激によって嘔吐を起こします。
ラットは、乗り物酔いの症状を示さないと述べましたが、回転による加速度刺激によって、異常行動が出現します。異味症の出現です。Picaともいって、普段は口にしないカオリンという瀬戸物の原料になるものを加速度刺激によって、摂食し始めるのです。これが人間の乗り物酔いと同様の扱いとするには異論もありますが、興味深い現象のひとつだと思います。
乗り物酔いを起こしやすくする誘発条件
大型バスを使った乗り物酔いの実験で、高頻度に乗り物酔いを誘発する5つの条件があります。
睡眠不足、空腹、急ブレーキ・急発進、車中の読書、そして乗り物酔いに対する不安感です。これらがそろうと、普段酔わないといっている人でも乗り物酔いの症状を示すことがあります。実験では、睡眠不足、空腹、急ブレーキ・急発進、車中の読書の4つの条件だけで、約90%の人に乗り物酔いを誘発することが出来ました。
人に対する乗り物酔いの誘発実験
乗り物酔いは、船やバスに乗らずとも、それを実験的におこすことが可能です。
代表的な方法は、コリオリ刺激による誘発実験です。コリオリ刺激とは、水平に回転する椅子に乗って、頭を前後左右に振ると、高頻度に乗り物酔いの症状が出現します。遊園地のコーヒーカップに近い刺激です。
このコリオリ刺激による実験により、何日も繰り返し刺激をおこなうと急激に乗り物酔いの症状は消失していきます。
10人に3日間連続でコリオリ刺激を体験してもらった実験で、全員が症状の軽減を示し、そのうち7人は全く症状がでなくなりました。
現実の乗り物酔いも、たとえば、日本からヨーロッパまでの長期間の航海にでたとき、最初の数日間は激しい乗り物酔いの症状を示した人でも、ヨーロッパに着く前には、その症状は消えてしまいます。
つまり、乗り物酔いは、何度も同じ体験を繰り返すと、次第にその症状が軽減して、最終的には、その乗り物に乗っても症状がでなくなります。つまり、乗り物酔いは、克服できるのです。