安曇野めぐ留

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2006年11月15日更新

第58話 大道芸を見つつ

 朝から雲行きのあやしかった空から、ぽつりぽつり雨が降りだした。何年かぶりに大道芸を観るために野毛へ来た。いつもは唄ったり、手伝ったりするために訪れているけれど、今回は投げ銭を投げる仕事しかない! たくさん小銭を用意して、歩くうちにそれらを包むちり紙もゲットした。なんともいえないドキドキワクワクする心。何年もここに通い、折りたたみイスやら小道具を用意して、暖かい拍手や笑顔でいつも演者を迎えてくれているお客さんたちのその気持ちを、少しはわかったかのように、決して短くはない目的地までの道のりを心から感謝して歩いた。
 到着したころには父のステージは始まっていて、いつもと変わらず紅白幕で囲まれたそこは、ブルーシートの上に座った人、立ち見の人で一杯になっている。
 なんとか最終回まではもったものの、やはり中盤には本格的に降り出してしまい、ずぶぬれになっても唄い演奏する姿に、知らず知らずのうちに目には熱いものが溢れていた。それでも冷静な私の心半分では、こういう場面で人は感動するのだと頷いたりもした。大道芸でいつも踊ってくれるチーム幻の子供達の『野毛山節』の踊りも大人顔負けで相変わらず素晴らしかったけれど、その卒業生達が楽器やメンバーが濡れないように自発的にステージに飛び出し、ビニールシートで屋根を作ってくれている姿に、「こんな世の中でも子供達は立派に育っているんです!」とこぶしを握り締めたりもした。
 最後の『上を向いて歩こう』では、こっぱずかしいような気分になりながらも、口ずさむ。そしてみんなが思い思いの言葉を叫び、「がんばれー!」「日本一!」という声をかけてくれていた。医学の進歩だとか、どこかの国の常識だかわからないけれど、このご時勢で禁止されそうな、また死語になりつつあるものも、野毛の町にはなんの違和感もなくこだましている。やっぱり虚弱な私は、いつもこんな言葉達に、強く励まされ生かされているんだと思う。かっこ悪くても、一生懸命歩いていこう!