1965年、アメリカ・フロリダ生まれ。10代後半で来日し、横田基地で働く父とともに東京で暮らす。1986年、ニューヨークに渡り、サウンドプロデューサー、クラブDJとして活躍。1989年、HIVポジティブと判明。1993年、クラブDJとして来日。DJ、サウンドプロデューサーとして活躍する一方、HIVポジティブとしての取材や講演も行なう。先ごろ、本サイトへの連載に大幅加筆して『パトリック・ボンマリートの生活と意見』(木魂社)を上梓。
2004年10月20日更新
[PART 5]

絶対に…… 4

 僕はもともとポリシーのないヤツなんだ。
 ある意見に接することで、意見もどんどん変わっていっちゃう。そのことは自分でも認めている。
 でも、ポリシーが変わるってことが、ただただ悪いことなの? 悪い面があることは分かるけど、良い面だってあるはずなんだ。
 たとえば、僕、今年になって新しいDJの仕事をはじめた。ずっと僕はヒップホップのDJにはなれないと思ってたの。嫌いだから、ヒップホップが。ところが、今ではそのヒップホップも楽しくやってる。
 やってみたら、いままでやったことないテクニック、流れを経験できる。音楽を楽しく思ったりできる。
 だからとといって、ヒップホップが好きになったわけじゃないよ。いまも嫌いなことは嫌い。自分からは聞こうと思わないもの。
 だけど、ダメだったものがOK、許せるようになったことも確か。僕は嫌いだけど、周りのみんなが楽しめるって分かった。だから、レコードをかけられる。
 人間の本能は変わらないけど、幅は変わると思うんだ。許せる、というか、許容範囲が変わっていく。広くなるだけでなく狭くなることもある。でも、変化はしていく。それが、大事。
 年齢も関係しているよ。若いころって、自分が「変わる」って分からないもの。永遠に自分は変わらない、自分の考えは変わらないと思ってた。だから、「これが正しい」と思ったら、もう言い張っちゃったりしてたよね。
 それが「ゼーッタイ」になっていく。
 元カレシにもそんな話をしたけど、なかなか分かってもらえなかったなあ。
 若い人に理解されない、そのこともまた、よーく分かるんだ。だって、彼らの言ってることのほうが正論なんだもの。
 僕、付き合いはじめたら浮気はしないよ。いままで、たいてい、そうだった。その人だけ見ていた。でも、「絶対に浮気しない」とは言えない。浮気したくなる気持ち、分からないこともないからさ。きっと、しないだろうとは言えても、絶対にしないとは言えないの。
 すると、相手は「じゃあ、浮気していいの」と言い返される。相手が正しいよね。「絶対に浮気しない」って相手は言うし、僕にもそのことを求める。
 うん、反論できない。
 ただ、「したくない」ということと「可能性がある」ということの違いが分からないし、認めたくないんだ。
 だってさ、付き合っている男の子がいても、カッコいい子に会えば、「あ、いいな」と思うもの、僕は。行動に起こすかどうかの違いだけで、「いいな」と思うことは確か。それは避けられない。
 そして、いま目の前にいるカレシと出会ったんだから、当然、また別の誰かと衝撃的に出会うことは十分にありうる。それを言ってるんだ。
 若いって、案外と堅いんだよね。すごい頑固。そのかわり、ルーズなところはとってもルーズなの。
 社会って、あるいは世界っていろんな顔をもっているし、いろんな匂いをもってるし、いろんな味をもっている。出会ってないこと、いっぱいあるし、きっと死ぬまでに出会わないことのほうが多いはずなんだ。
「ゼーッタイ」と言い張ってしまうことで、そんな出会いの芽をつぶすことになる。
 もっと自由になろうよ、そして、もっと肩の力を抜こうよ。自分のことを決めつけてしまわないで、生きていこうよ。
 そう信じてるんだよ、僕は。



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