うなだれ花と遊ぶ〜カライトソウ異聞

カライトソウはとても魅力的な素材です。モ本でも、葉壇のコーナーでそのプロフィールに触れておりますが、まだまだその素晴らしさは語り切れておりません。そのため、今回、本HP上でカライトソウのワンマンショーを企画してみました。
カライトソウSanguisorba hakusanensis は、北陸地方の高山に自生するワレモコウの仲間です。その存在は子供の頃から図鑑等で知ってはいたのですが、自然状態のものは、1990年の夏、白馬岳八方尾根で初めて目にしました。その時は唐糸そのものと言えるピンクの花穂に驚き、魅せられました。
2001/07/14 2001/07/07 西日に輝くカライトソウ

浅山英一先生(故人)はその花穂について、次のように解説されております。
カライトソウを唐糸草と書くのは、その花の様子が「唐糸」に似ているからである。それでは、唐糸とはどんな糸かというと、ちょうどカライトソウの花のような紐である。カライトソウとはどんな花かというと、ワレモコウの花を二十倍ぐらい長く大きくした花で、そのピンクのおしべが長く飛び出していて、まるで唐から渡来した絹の紐糸のようなのである。
このような話ばかりしていると、まるで糸巻きに糸を巻いたりほどいたりしているようで果てしがない。
(創元社・刊、花ごよみ「夏の花」から抜粋)

私がこの本に出会ったのは、1991,2年頃だったと記憶してます。その頃、私は急激に園芸にめざめた時期で、新たな知識を得るべく、いろいろな園芸書を漁っておりましたが、当時書店にあったのは、栽培ノウハウや写真を羅列したタイプの本ばかりでした。これらの本は園芸をやる上では確かに参考になりますが、それ以上のものではありません。いわゆる園芸のよろこびまでは盛り込まれてはおりません。従って読んでもあまり面白くない。
ところが浅山先生が解説文を書かれた「花ごよみシリーズ」は別でした。写真は夏梅陸夫氏。最近は叙情的な写真が主体の同氏が、当時(初版発行は1982年)は極めて正確に、すなわち図鑑的に花を写しておりました。それでも同氏の写真はとても生き生きしており、音楽のようなものを感じることもありました。それは解説が浅山先生だったから、よけいそう感じたのか。たぶん写真と文章が共鳴しあっていたのでしょう。

この本を読んだ翌年の植木市で、私は憧れのカライトソウを入手しました。最初は鉢に植え、現在の家に移ってから、地植えしました。花が咲くようになったのは地植えしてからですが、いざ咲いたら、ちょっとがっかりしました。開花と同時に紐の重さで花茎がだらしなく曲がってしまうのです。雨が降ると、糸のような花穂は水を含んで更に重たくなり、地面に付くまでにこうべを垂れます。こうなるとさすがにみっともないので、支柱と針金で花茎を縛るようにしております。あと咲いて数日もすると、穂は白っぽくなり、次いで茶色に変わります。こうなるとボロイトソウですね。
こんなあんばいですので、最近、花にはあまり感動しなくなりましたが、そのかわりカライトソウの新たな魅力を発見しました。それは葉っぱです。こちらは春の芽だしの頃から夏近くまで長期間にわたって愉しむことができます。少し青味を帯びた色合いといい、羽状複葉の形やテクスチャー(質感)も皆ユニークです。更に株が大きくなるにつれ、その葉むら自体も独特の存在感を増して行きます。
1999/05/04 2001/04/15 
2001/04/30 2001/05/13

またカライトソウの葉は特殊な水玉芸を身につけております。雨が降ったり、打ち水をした後など、葉の表面にはきれいな水玉が残ります。更に、格別、雨が降ったわけでもないのに、早朝、葉の縁にごく小さな水玉が飾りのように並ぶことがあります。これは凄い発見だ!と小躍りしましたが、昔どこかで聞いたような気がする。そうです。この件についても、浅山先生はとうに語っておられました。

五月の朝早く、庭に出てカライトソウの葉を見ると、夜の間に吸い上げられた水分が、複葉の葉の一枚一枚の先端からあふれ出て水玉がきれいに並んでいる。これはなかなか美しいものである。
あえてバラ科の植物に例をとるなら、オランダイチゴの葉もまったく同様に朝には水玉の出る葉を持っている。
(こちらも創元社・刊、花ごよみ「夏の花」から抜粋)

結局、何を言っても、浅山先生の掌から逃れるすべのないモウズイカですが、今後もこういった形で植物の愉しみを探求してみたいと思っております。
最後に今までに私が出会ったカライトソウの仲間を幾つかご紹介致します。

シロバナトウウチソウ S. albiflora 1990/08/19 鳥海山にて。
この種類は東北地方特産です。時々ピンクがかったものもありますが、
基本的には白で(^o^;)あんまり綺麗とは言えない。
シロバナトウウチソウのアップ。
1992/08/11 焼石岳にて。

カライトソウ。
1990/07/29 白馬八方尾根にて。
ナンブトウウチソウ S. obutusa 1992/08/29
早池峰山固有種です。カライトソウに較べると
ピンクはちと薄い。近くにはシロバナトウチソウもあり、
両者の中間的な個体も見られる。早池峰山にて。
(^o^;)さて、これは
何トウウチソウでしょうね。

答えは 

ポンポコポン!(^^;)どうやら騙されたようですね。
これ(上右の紐)はカライトソウ(バラ科)とは全く縁遠いイネ科のPennisetum(チカラシバ)
の一種です
(徳島のロベリアさんから戴きました)
ただ、カライトソウの属すワレモコウ属はバラ科でありながら、花弁を亡くした異端者です。
虫媒花から風媒花へ変化する途上にある植物群ではないかとの説もあります。
遠い未来の話とは言え、ちょっと気になる話です。


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(本頁は2001/08/04にアップしました)