《 楽園の魔女たち8 》
大泥棒になる方法
作者:樹川さとみ
表紙:むっちりむうにい
コバルト文庫 き5-14 1998年12月10日初刷
ISBN:4-08-614536-7
泥棒という言葉にはロマンもな〜んにもないが、大泥棒といえば別だ。石川五右衛門、ねずみ小僧、アルセーヌ・ルパン、ラッフルズ……不思議に、彼らは「粋」であり、従ってヒーローたり得るわけだ。思えばそれも不思議ではない。通常の泥棒は、いつ自分たちの金品を奪っていくかもしれない敵なのだが、それに対して大泥棒とは、我々の懐のかわりに、「雲の上」から盗んでくるからだ。それは往々にして「雲の上」が我々の懐から巻き上げたものでもあるので、痛快に感じてしまうというわけですな。無論、ここに登場する怪盗も例外ではない。
とはいえ、どれほど美辞麗句を連ねたとしても、怪盗とて泥棒である事にかわりはない。その「仕事」の過程では、面を覆う事なしには語れぬ恥もあるはずで、そこらへんの苦悩が描かれている点では〈ウォルスの霧〉、ルパンに似たところがあるかも。
てなわけで、今回も、主役達に充分張り合える、ゲストキャラクター群が魅力的な物語なのであった。
だが、それはそれとして、ファリス。いいですねえ。凛々しい美少年顔で、そんじょそこらの騎士など足許にも及ばない実力の持主で、いまや魔術師でもある。立派にヒーロー(失礼。ヒロインと言うべきであろうか?)の資格を備えていると思う。もし、あの過分な気配りと目立ちたがらなさという欠点がなければ、ファリス一人を主人公にしてどんどん違う物語が展開されていくであろう。常に貧乏籤を引くところなどは、まさしく、ヒーローの必要条件であるわけだしね。
〈1998/12/14〉