《 吸血鬼ハンター11 》

D−ダーク・ロード

作者:菊地秀行

表紙・挿絵:天野嘉孝

1 ソノラマ文庫862 き1-43  1999年3月31日初版/2 ソノラマ文庫877 き1-44

ISBN:4-257-76862-2/4-257-76877-0


第1巻

  久しぶりのD。その妖麗さは健在であった。前後編であり、後半は4月に出る……と後書きに書いてあるが、さて、信じて良いのだろうか。期待せず待ちたい。
  とはいえ、Dの世界の謎は、巻を追うごとに深まるばかりのように思う。かつて貴族達と戦ったという異星人は何者なのか? その時人間達はどうしていたのか。そしてD自身は……その正体は最後までわからないのかもしれないが、左手の人面疽がふと口の端にのぼせた「神祖ごとき」という一言が気になる。神祖がドラキュラ伯爵であるとするなら、Dは―――。
  それらのシリーズ全体に関わる謎を措くとして、今回の圧巻は保管庫だろう。無論ただの保管庫ではない。相変わらず仕掛けに凝っている。何故このようなものが設けられたのか。その理由は後半で明かされるのだろうか? こんなにスケールの大きい保管庫が、何故必要だったのだろう。気になる。非常に気になる。しかも、謎の全貌が明かされるという保証がないところが、怖い。それもまた、Dの物語の魅力なのかもしれないが。

〈1999/04/10〉


第2巻

  おお、凄い。本当に予定通りに出た(^^; という驚きは、物語の本筋からはずれているとして。
  謎めいた〈神祖〉とDのかかわりが、次第に(但しほんとうにじりじりと)浮き彫りになってくるのが、このところスリリングだ。ある意味、ばればれと思われる存在を、わざと代名詞や他の言葉に置き換えて、いわば「サングラスをかけてしまえば正体の割れぬ謎の人」状態にするのは、菊地秀行の十八番なのであるが。
  今回は、次々に登場する敵方がいつにも増して魅力的だ。幼い少女の姿ながら、恋に殉じる乙女そのもののレディ・アン、自分の姿に似せて造った強力なロボットを遠隔操作する貴族、そして自らも貴族の一員でありながら、人間はもとより仲間の貴族まで実験材料にしてしまう女科学者……。錚々たる敵手なのだが、際だつのは女性陣だ。不思議と、美しいだけでなく、男たちより一層残忍で、冷血で、狡猾で、しかも儚いのだ。

〈1999/06/30〉