《 竜の眠る海3 》

黄昏の伶人

作者:金 蓮花

表紙・挿絵:珠黎皐夕

コバルト文庫 き6-18  1998年1月10日初刷

ISBN:4-08-614411-5


  リューイの力は炎の精霊に働きかける事。それだけでなく、癒しの力も併せ持つのだそうだ。炎によって浄化し、心を癒す力があるからこそ、鎮魂の業を成し得るのかもしれない。今回の物語は、特にその「鎮魂」という性格を強く打ち出しているように見える。
  それにしても、何故伶人なのであろうか。伶人、すなわち楽人である。だが、特にここに登場する”伶人”は竪琴を奏で、歌を歌う者である。竪琴は古代、葬儀の際に鎮魂の目的で奏でられた楽器であるそうだ。もしやそのあたりに、内容とタイトルとの関連があるのではなかろうか。また一方、鎮魂されるべきものは、古代の星譜師である。星の位置から運命を読み取る者、すなわち占星術師であり、古代の天文学者でもあるわけだが、古来、神秘学的な天球図ではそれぞれの天体に固有の音または音階があてはめられていた。このあたりにも、あるいは伶人と星譜師の繋がりが見出されるかもしれない。

〈1998/12/16〉