《 竜の眠る海4 》
虚飾の檻
作者:金 蓮花
表紙・挿絵:珠黎皐夕
前編 コバルト文庫 き6-21 1998年7月10日初刷
中編 コバルト文庫 き6-22 1998年8月10日初刷
後編 コバルト文庫 き6-24 1999年2月10日初刷
完結編 コバルト文庫 き6-25 1999年4月10日初刷
ISBN:4-08-614482-4/4-08-614493-X/4-08-614549-9/4-08-614577-4
〈前編〉 タニミナを迎えにくる途中、一時は遭難したかと思われたダーシャが、無事オディロカナへ入港する。不幸な恋人が幸せな結末を迎えるか、これで万々歳……と思われた途端、ダーシャが驚天動地の言葉を発する。さて、しばしばこのシリーズでは、本来そうあるべき姿を隠して登場人物が偽悪的な行動をとる事がある。果たしてダーシャの心変わりは、それに該当するのだろうか。前・中・後編という構成をとる本作では、さすがに前編を読んだだけでは後の予測がなかなかつかない。ダーシャの一言によって広がった波紋は、ミレアプロの思わせぶりな一言、ガイゼルとタニミナの逃走など、将来は一つに繋がるであろう幾つもの事件を発生させるばかりで、物語は動き出したばかりなのである。
〈1998/12/17〉
〈中編〉 本作には二つの焦点がある。一つはタニミナを中心とするダーシャとガイゼル、そしてギース兄弟。もう一つはエシャンテのアサノ女王と元国首であるタキエダ領主カズサである。中編では、主に後者について語られる。ただ、語られるとはいっても、天秤は大きくアサノ女王に傾いているといえよう。彼女がどのような幼年時代を過ごし、どのような女王となったか、それが物語の中心となっている。そして、彼女とカズサの間にあるものですな。前編でも、まだ物語のとば口にすぎないと感じさせられたものが、中編に持ち越しているように思われるのだが、それも物語が二つの焦点を持っているのであれば、やむを得ない事かもしれない。
〈1998/12/21〉
〈後編〉 今回は実に展開が遅い。その分、人間関係は複雑に絡み合っている。その模様は、後編に至ってようやく形が見えてきたといえよう。いわば、前編と中編を通して断片的に語られてきた事が、やっと一つに寄せ集められたようなものだ。ダーシャ−タニミナ、アサノ−カズサという二つの物語が、リューイ−ジェイを中心に、釣り合いをとったところだと言ってもいい。また、「虚飾の檻」というタイトルが何を意味するかも、判った。
物語の中心は正しくタキエダに定められている。開かれた魔導の書。天驚と天鼓という二羽の鳥。アサノが生い育ったところ。難破したダーシャがうち寄せられ、療養したところ。郭公と鶯の兄弟の喩えは、何を意味しているのか……?(そういえば、天鼓は女性だったのですねえ。)
物語の全貌がいま、明らかにされようとしながら……引く(
‥)/
〈1999/02/10〉
〈完結編〉 というわけで、全貌が明らかにされたのだった(^^; 前回のヒキがあったせいか、推理小説で犯人が名指しされた部分だけを取り出して読んだ時ような気分がする。まぁめでたしめでたしなのだが……それにしても、一抹の不満は残る。それは、アサノとカズサの物語がラストに大きくクローズアップされたがために、ダーシャとタニミナがいまひとつ浮き上がってこなかったという点だろう。彼等に利用されたのがダーシャであり、リューイであった……という事になってしまうのだが、ダーシャがカディア皇帝としてオディロカナを訪れ、タニミナを見初めて(という事にして)改めてカディアに連れ帰る、というのが、手前の物語の大団円にあたるわけだから、この扱いはちょっとあんまりではないかと思えてしまうのだな。重ねて言おう。アサノとカズサの物語は、ダーシャ達から独立したものとして書いて欲しかったぞ。
郭公と鶯の喩えは、エシャンテに伝わる物語と、そのもととなった事件、そしてそれが投影されたかのような現在のエシャンテを見事にあらわしたものだったのだが、そのあたりの仕掛けがうまいだけに……やはり残念だ。
〈1999/04/05〉