《 夢の宮7 》
十六夜薔薇の残香
作者:今野緒雪
表紙・挿絵:波津彬子
コバルト文庫こ7-10 1997年2月10日初刷
ISBN:4-08-614287-2
おおむね一タイトル一話完結の本シリーズであるが、”薔薇”の名を持つ三作はあわせて一つの物語である。特に前作『薔薇の名の王』と切り離して考える事はできない。
これは、『薔薇の名の王』において茨木の二重身である事を執拗なまでに強調した月季が、個人としてのアイデンティティを確立する物語である。とはいえ、十六年間も隔離された環境で寄り添って育ってきた上に、兄の延長たるべく行動してきた月季がそう簡単に一人立ちできるわけはない。しかも、その半身である茨木は成年に至る前に命を落とす事を予言されている。事実、残された時間はあと僅かでしかない。
二重身ではなく一個人であり、なおかつ自分が存在する事の意味をいかにして月季が認めるかという事が主題となっているわけだ。それができなければ、月季は茨木の死後、生きのびる事すらできないかもしれない。
この苦闘を、前作同様山さの目を通して、読者は見守る事になる。
〈1998/09/04〉
back 《薔薇シリーズ》年代順