《 夢の宮8 》
神が棲む処
作者:今野緒雪
表紙・挿絵:波津彬子
コバルト文庫こ-12 1997年8月10日初刷
ISBN:4-08-614358-5
このシリーズにしては珍しく素直な物語ではなかろうか。全く違う心持ちで絵を描くために反発する相弟子や、初恋の少女と気に入りの侍女……蘇芳の正体が謎めいているといえば謎めいているものの、鸞神の託宣があるわけでもなければ、陰惨な企みがあるわけでもない。まあ、自分の娘たちを側室にしようとする大臣たちの策謀はあるが、これも露骨なだけにかえってさばさばとしている。
ロマンスを彩る絵と絵師についても、さらりと触れられているに留まる。あえて見るなら、大義名分があって絵を描く事が絵そのものに精彩を与えるタイプの絵師である主人公の相弟子、[石朱]衍と、一族繁栄や栄華を求めて鸞王の側室になる事を望み、また、おそらくはそれ故に競って美しい名家出身の侍女たちが、重なるといえば重なるというくらいだろうか。