《 夢の宮9 》

かなえ
叶の果実

作者:今野緒雪

表紙・挿絵:波津彬子

コバルト文庫こ-14 1998年2月10日初刷

ISBN:4-08-614426-3


  これはどちらかというとサスペンス・ドラマのように展開する物語だ。梨果(本当は「梨」は正字の方だが、JISにはない……)は十歳で鸞に嫁いで来てから、真実をずっと見極めきれずにいる。しかも、考えなしの願い事で姉を殺してしまった、という自責の念から、毎晩悪夢が梨果を襲うようになっている。実際にはその悪夢を招いた願い事、願掛けの叶の果実については迷信であるし、姉が死んだ時に故国にいた彼女が、殺せようはずもないのだ……そう説明されても、真実を見極められない梨果は夢から出る事ができない。
  最後に、梨果が勇気をもって真実をつかんだ時、その悪夢は泡のように消えてしまうのだが、さて。本当に叶の果実への願掛けは迷信だったのか。願い事がどれもちゃんと叶っているようにみえる。勿論、叶の果実に一生一度の願掛けをすれば、願い事が叶うという事……それだけの思いこみがありさえすれば、どのような願いでも実現できるだろうという隠された智慧が、そこにはあるのかもしれないが。
  そういえば、果実はなくともそのようにして幸福を掴んだカップルがもう一組、物語には登場する。