《 夢の宮2 》

諸刃の宝剣

作者:今野緒雪

表紙・挿絵:かわみなみ

コバルト文庫こ7-2 1994年9月10日初刷/1994年11月20日2刷

ISBN:4-08-611892-0


  鸞国での夢は、大抵の場合、鸞神の託宣である予知夢が主役である。けれども、本作ではそれにあたらない。何故なら、夢を見るのは鸞国人ではなく、鸞国に滅ぼされた剋国の王女であるからだ。彼女は復讐を企てるけなげな、そして激しい娘ではあるが、その夢は幸せだった頃の、剋国の夢だ。といって、例の予知夢が全く登場しないわけではなく、相手役たる鸞王昭寧は王位を継ぐ男児が生まれるかどうかについて巫女の予言を得てはいる。ただ、それが前面に出てこないだけなのだ。
  物語中の時代としては、鸞国がどんどん周囲を併呑しており、かつての仇敵はもとより、友好国、例えば麓国などもすでに滅亡している。どうやら剋国はかなりの辺境にある新興国と見られるので、鸞は帝国と呼んでも差し支えないほどの広大な国土を誇るようになっていたであろう。他国との戦争は語られても、領土拡張について言及されたのは、ただこれ一作であり、まさしく時代の転換点である事がうかがわれる。ならば、剋の元王女の夢と、予知夢という二つの夢のうち、王女の夢の方が重く扱われているという事は、これをもって託宣としての夢に王室が導かれる時代の終焉を告げているようにも思われる。

〈1998/09/04〉