ひとりぼっちのくま

文:久美沙織

絵:坂崎千春

フェリシモ出版  1999年2月20日初版

ISBN:4-89432-138-6


  出版元を見るとわかる人にはわかってしまうはず。通販会社フェリシモが企画した、端切れを集めてたくさんのちびくまを作り、世界のあちこちへ贈ろう! というボランティア活動のくまが主人公の絵本なのだ。だから、「ああ、あのくま……」と心当たりのある人は結構いるんじゃないかと思うのだ。お話の見当すら、ついてしまうかもしれない。
  それでも、お薦めする。ともかく絵がかわいい。くまがどうやって目覚めるか、どうやって旅したか、それらが、飾らない文章と、色鮮やかだけれども、柔らかい色調の絵で綴られている。ほんの偶然で包装が破れてしまったために、送り先にたどりつく前にめざめてしまったくま。ぬいぐるみでなくとも、そんな目にあったら、心細くて不安になってしまうはずだ。ましてや、このくまは、まさしくその時に自意識が生まれたわけなのだから。けれども、くまが愛してくれる人を必要としているのと同じくらい、人は無条件に愛せる対象が必要なものだ。子供だったらことさらに。まして、それがたくさんの人の想いのこもったくまであるなら、幸せのマスコットとしてこれ以上のものはないんじゃなかろうか。ともあれ、くまが好きな人なら、この物語の名前のないくまには、きっとめろめろになってしまう事と思う。

〈1999/05/08〉