「少女マンガ界に咲くドクダミの花」のキャッチフレーズも神々しい、ヘンタイ少女マンガの巨匠、岡田あーみん先生。
大変残念なことに、現在はマンガを引退されてしまったとのことであるが(注:インターネットで得た情報。結婚されたらしい。)、80年代〜90年代の「りぼん」に連載された3本の作品は多くの人の心に残り、そして語り継がれていくものと私は信じている。
そんなわけで、この名作ギャグ作品の魅力をどれだけ伝えられるかはまったく自信はないのだが、まだあーみん作品を知らない方、あるいは記憶の薄れてしまった方のためにもこのコーナーで取り上げてみることにした次第。
さあ、あーみんギャグの洗礼を受けようじゃないか!
(りぼんマスコットコミックス全6巻、集英社文庫全4巻)
80年代当時、250万乙女の恋のバイブル雑誌「りぼん」に燦然と輝いたニューウエイブ・ヘンタイギャグマンガ。私の人格形成上、非常に大きな影響をもたらした作品の1つである。
基本のストーリーは異常な心配性のお父さん(パピィ)が娘の典子とボーイフレンドの北野君の仲を心配するあまりに、周囲をまきこんでドタバタ騒動を起こす、というもの。そこにお父さんの再婚話が平行して進行する。
騒動の度合いは連載期間にしたがい疾走するように上昇。少年マンガでの「強さのインフレ」をほうふつとさせる。
「りぼん」と「ヘンタイ」(カタカナならライトだが、漢字で書けば「変態」。軽々しく口にするんは憚られる言葉であるが、その言葉を使わざるを得ない)、相容れるはずのない2つが重なり合ったときに、あたかもマイナス同士の掛け算の答えがプラスになるかのように、そこには奇跡のような笑いの場が形成されるのであった。
…しかしそんな説明は無粋である。
〜あーみんギャグの魅力〜
このマンガが連載されていた当時、私と親友のジンちゃんは男の子が早売りの「ジャンプ」を求めるがごとく、早売りの「りぼん」を求めた。
そして我々がしたこと、それはパピィや北野、キャプテンらの台詞をむさぼるよう、そして一字一句覚えるかのように読みこむことであった。
発売日からしばらくの間、2人の話題はあーみんギャグをどれだけ忠実に覚えたか、どれだけ意味がわかったか(あーみん先生と我々の間には約10歳の年の差があり、わりと古い元ネタを使われることが多かった為)が中心であった。
「このギャグがわかる私たちってス・テ・キ!」、そしてこのマンガを愛している自分たちは他の女の子たちよりもマンガに詳しいのよ!てな具合である。今となっては片腹痛いが…。
まあ、とにかく一字一句の台詞を覚えなければいられないほど、私たちはそれに魅了されたのである。
現在読み返してみると、1話ごとのラストのオチはさほど斬新でも面白いわけでもない、といったらちょっと失礼になるだろうか。
何といってもあーみんギャグの魅力は1個1個の台詞のベクトルが四方八方への広がりをもち、スピード感を持ったまま突き刺さるところ、そして頭のどこの部分を使ったら考えられるのか不思議な台詞のセンス。
たとえて言うなら打ってもどこへ返るかわからない、そして打った以上のスピードで返る壁打ちテニスを1人でボールを3つ使ってやっているような感じだろうか。
そして暴力的に、衝動的に、本能のままに動く魅力的なキャラクター。どんなに突拍子もない台詞やギャグも、彼らは違和感なく演じきる。
またヤバめなネタの取り入れ方が実に素晴らしい。そうかと思えば、お涙ちょうだいドラマのごとくラスト前でキャラクターを殺して再び生き返らせたりするような展開も。
お父さんの恋と再婚話もまたじわじわといい味を出してるんだけれど、そこはもちろんただの感動、いい話で終わらずオチがついてるところが良い。パピィに釣り合う人といったらそれなりの資質(笑)が必要ということで。
コミックスに収録されてる「あーみんの好き放題劇場」、トークも必見。
(1989年〜1992年・りぼんマスコットコミックス全3巻)
時は戦国、お姫様と彼女を守る3人の忍者見習いの少年たち(極丸、危脳丸、満丸)とお師匠さま、そして未来(現代)から送り込まれた刺客のターミネーター(笑)が繰り広げるヘンタイギャグ。またもやヘンタイとか書いてしまったがそう言うより仕方ないだろう。
パピィの危ない部分と暴力的な部分が、それぞれのキャラクターに引き継がれ、いっそう過激になって行く。
ギャグの暴力性、スピード感は「お父さんは心配性」以上にきわめて衝動的で過激。
ええ、もう近頃のキレる若者なんて目じゃないくらいものすごいです。
お嬢ちゃんたちの夢とロマンと希望溢れるお話ばっかり載ってる「りぼん」誌上で流血、失神、失禁(汗)などなどをガシガシ描くあーみん先生。でもそれは先生なりの照れ隠しなのだ。よくよく見るとその裏にはお姫様を守るためなら自己犠牲もいとわない3人の忍者見習いの姿、お師匠様への尊敬、冷酷なロボットが人間の温かさに触れて初めて知った愛、などなどこれでもかのヒューマンなストーリーが隠されているのである。
台詞のテンポと個性的すぎるボキャブラリーは相変わらず素晴らしい。
オススメのお話はコミックス1巻に収録されている「第10回」。
「りぼん」の品位をさげるような連載をされて困った(笑)編集長が登場キャラクターをこらしめるために現代から刺客を送り込むのだが、いろいろあって登場人物たちが現代にやってきてしまい、さらに前作「お父さんは心配性」のパピィ、北野、典子と遭遇、そして何とあーみん先生自らも出演。何とも言えず豪華なキャスティング。
ギリギリの危うさを持つギャグに心ゆくまで身を委ねるがいいだろう。
(1992年〜りぼんマスコットコミックス全3巻)
ヒロイン「夢実」は両親の海外主張の間、全校生徒の憧れの的で孤高の貴公子 「天湖 守夜」君の家で一緒に暮らすことになった。希望に胸膨らむ夢実、しかしそれは波乱の幕開けであった…。
守夜を溺愛する母「ゆり子」、夢実に思いを寄せる学園のアイドル「愛咲 ルイ」、夢実をライバル視するイジワルお嬢様「薫子」などのキャラクターが織り成す「あーみん風少女マンガ」ラブコメディー。
設定からして、よくある少女漫画や青春ドラマのパロディ風。作中のギャグもパロディテイストが濃厚で、お好きな方にはたまらないかと思われる。
ラブコメということで、あーみん先生が絵柄をかなり少女マンガ風に変えて挑んでいるのだが、予想以上にキレイな絵に仕上がっている。守夜の美少年ぶりもナカナカのものだし夢実ちゃんもヒロインらしく可憐。しかしあーみん先生風ということで、たんなるラブコメディーで済む訳がなく、そのキレイな絵柄の中で前2作よりも暴力性こそ薄れたものの、ヘンタイ色がかなり強まった(ヤバさは3作中で1番だろう)ギャグが炸裂、コロコロと絵柄がギャグ風に変わる。読む方も振り回されるが、これを書く先生はもっと疲れるだろうな、と思わずにおれない。
注目のキャラクターは、アイドルの愛咲ルイ君。彼の台詞、言動はあーみんギャグの進化形。特にお気に入りの台詞を、作中から引用させていただく。
「こんな虚飾(うそっぱち)の世界
ふたりでひっかきまわして逃げちゃおうぜ!
『あばよ』って!?」
「学校なんかやめちゃって
デカダン酔いしれ暮らさないか
白い壁に『堕天使』って書いて!?」
・・・この言語感覚にはクラクラさせられる。「堕天使」か・・・。
とにかく少しでも心に引っ掛かった方は、今すぐ本屋へゴー。笑いって奥深い。