ノスタルジック少女マンガ パート5

〜あさぎり夕先生の華麗なる世界〜

 

このコーナーでも取り上げた「あこがれ冒険者」「こっちむいてラブ!」などの作品で80年代の「なかよし」誌上で大人気を博したあさぎり先生。先生の作品の魅力は、なんといっても元気で可愛い女の子と様々なタイプよりどりみどりのかっこいい男の子のラブストーリーを軸に、ハラハラのアクションや現実離れした設定(SF、芸能、冒険、運命等)をミックスして作られた女の子の好む世界であること、そしてシリアスなストーリーもそれ一辺倒にならず、どこかしら笑いがあるところ、であると思う。そんなあさぎり先生の作品は、私の小中学生時代において皆が「別マ」を買い始めるまで、絶大な人気を誇っていたものである。

今回は、そんなあさぎり先生の魅力に引き込まれた私が集めた、比較的最近の作品をいくつかご紹介します。ある時期、マンガから別のものに興味が移ってしまいリアルタイムで読んだわけではないので、それがちょっと自分としては惜しい事したな、と思っていますが・・・。


・卒業写真(1989年・KCなかよし・全1巻)

 

「卒業」というリミットが設定されると、どうしてか燃え上がってしまう片思いの恋。「別々の高校に行ったって、2人の愛は変わらない」なんて、あまりにもあっけなく崩れる事が多い現実に目を背け、今だけは恋に酔いしれようじゃないか。

というわけでこの単行本には、ああ、あの人に卒業までにせめて思いを伝えるだけでも・・・、と思う女の子と男の子を、両方の視線から描いた作品1本ずつと、思いが通じて付き合い事ができた後を描いた作品の3本構成になっている。

男女両方から描く手法も手が込んでいるが、なんといってもこの作品の特徴は、ストーリー中に巧みに「流行歌」を流す、というトレンディドラマ的手法を取っていること。ドラマで放送開始45分過ぎると、ヒロインが走り出したり、修羅場ってるところで突然主題歌がかぶさる、というあの手法。

ストーリーに配置される曲(マンガなので歌詞が書かれるだけなのだが)は登場人物の気持を代弁してくれたり、また読者の感情移入がしやすくなったり、なかなか効果的である。

しかし、使われている曲がなんとも「流行歌」なので今みると非常にこそばゆい気持になってしまうこともまた事実である。3曲使われているのだがそのうちの1曲が「光ゲンジ」の曲というのが・・・。個人的に、この作品が書かれた時代と自分の学生時代が思いっきりシンクロしていて、説明のつかない恥ずかしさに襲われてしまった。

ストーリーは3本目(卒業式に告白、両思いになるが2人は別々の高校へ進学した後の話)がなかなかリアルでよろしい。かつて、こんな二人を実際によく見たものである。
当たり前のことだけれど、「告白」はゴールでないということを思い出させてくれる。 


・「女の子の不・思・議」(1990年・KCフレンド・全1巻)

・「女の子のホ・ン・キ」(1991年・KCフレンド・全1巻)

 

この2冊は登場人物が一緒のシリーズ、続きもの。

気が強くてわがままで頭がよくてリアリストの女の子「桐子」、純粋で優柔不断で霊能力のある美少年「暦(れき)」、女ギライの(汗)のロックギタリスト「剛」の奇妙な三角関係ラブコメディー。 

基本構図としては、桐子と暦が両想い、剛と暦はバンドの仲間として信頼しあう(もちろんそれは時として過剰に描かれるのだが)、女ギライの剛が唯一興味を抱けるのは(なぜか!)桐子、そして桐子は優しい男と強い男の二人の間で揺れ動く。

タイプの違う男性2人の間で揺れ動く女の子、なんてそれだけではいかにもよくあるストーリーだけど、あさぎり先生の手にかかると更にストーリーの混乱ぶり、イライラ度が上昇。「恋のライバルは男性だった!」というギャグものにありがちな展開になるわけでもなく、あくまで桐子視点で2人の男を振りまわすサマが描かれる。

今読むと「いか天」ブーム、作中での桐子の人生設計、などが時代を感じさせてくれる。なんとなくバブリィ。

基本的にだれでも(ホモは絶対イヤ!という人は別だが)気軽に手にとって読める、あかるいラブコメ。


 

・紅伝説(1991年〜1992年・KCフレンド・全4巻)

◆オススメ!

『ユウ先生のスーパー・ロマンチックアクション』。(コミックの裏に書いてある)。

これは名作「あこがれ冒険者」の系譜にある作品で、あの世界を和風に、そして極端にダークにし、忍者、超能力、宿命等をぶち込み、咲き誇るのは美形のキャラクター、屈折しまくった人間関係、とあさぎり先生テイストが満載。

ヌード、拷問、ラブシーン、近親相…、そしてお楽しみの美形キャラ同士のステキな関係、ともうお腹がいっぱいに詰め込まれてます。なのでおこさまにはちょっと刺激が強いかも。

かなり先生が好き勝手やってますが、そこが良い。

〜ストーリー〜

クールビューティーな主人公 「紅 彩香」の背中には物心ついた時から、感情の昂ぶりとともに現れる紅の鳳凰の紋章があった。彼女の両親は行方不明で、父親代わりでもあり兄代わりでもある「崖(がい)」(彩香の母親の同級生だった)と二人暮らし。

ある日、帰宅途中に何者かに狙われる彩香。背中に鳳凰があるかを確認するべくのっけから脱がされるが…突然現れた青年「炎(えん)」によって助けられ、事無きを得る。炎は彩香にいきなりセマり、なぜか彩香も彼の事が頭から離れなくなってしまう…。

その後、偶然にも炎と再会する彩香。自分でも不思議なくらいの心の動きを感じて戸惑う。

そこに突然、彩香を狙って現れる謎の男。彼の正体は伊賀一族の四天王の一人、舞王。彩香を守って戦う炎の背中には、鳳凰の紋章が浮かび上がる・・・。

鳳凰の紋章の秘密を狙って、彩香と炎を伊賀一族の四天王が次々と襲う。
紋章の秘密とは、そして紅一族の秘密とは・・・。

 

難点としては、『誰と、何のために戦ってるのか』という一番基本のことが、時として判らなくなってしまうことがあるのがちょっと・・・。まあ、世界や宇宙の平和をかけて謎の組織と闘わなければいけないキマリはどこにもないし。
正義よりも、愛情と私怨が行動原理の登場人物達が清々しい。

とにかくあさぎり先生の魅力を堪能できる作品。絵もキレイで圧倒される。


・夢であえたら(1995年・KCフレンド・全2巻)

 

うってかわってこちらは学園青春モノ。名門高校のアイドルの女の子と、不良高校いちのワル(笑)の男の子のラブラブストーリー。

陸上部のエースで、しかも頭がよくて、その上素直で明るくて可愛い主人公の「萌」の夢に繰り返し出てくるのは、病弱だった幼い頃に一度だけ出会った、名前も知らないマラソン少年。ある日の夢で、成長したマラソン少年が出てきてドキドキ。
そんなある日、仲間が盗難事件に巻き込まれ、取り返すべく評判の不良高校へ向かった萌。そこで一番のワル「和己」を訪ねるが・・・その和己は萌が夢で見続けた少年にそっくり(笑)であった。一目見たときから何かを感じてしまう萌。
次の日、登校した萌の耳になぜか「ワルの和己と萌がつきあっている」という噂が聞こえてくる。そこに現れる和己。和己は萌に、噂を流したのは自分、そして自分と付き合って欲しいと言う・・・。

ここで話が終わるはずもなく、やれあれは冗談だっただの、友達に頼んだ伝言が親切心から歪められて伝わって誤解が生まれたり、優等生とワルということで周りの人に反対されたり、いろいろあるけれども、運命の2人の愛のパワーは負けないのであった。

この混沌とした時代において、折原みと先生ばりにさわやかな純愛ストーリーは見るものの心を落ち着かせてくれる。ただ、恋愛負け組(私のような)にはまぶしすぎて引いてしまう可能性も。

また、萌を褒め称えるモノローグ(ちょっと過剰に感じることも・・・。)には仕掛けが施されているので、注意して読んでいくとラストが感慨深いものになると思われる。

また、2巻に同時収録の読み切り作品「制服の胸に」(バンドマン上がりの臨時高校教師と元追っかけの女子生徒とのラブラブストーリー)も「おいおい・・・」言いたくなる展開が満載で楽しめる。とにかく女子高生のパワーがすごすぎる。

 

 

また、KCなかよしから出ている「あさぎり夕初期短編集」(1987年初版。デビュー当時の作品を集めたもの)は、これまで紹介した作品たちとは違い、登場人物のほとんどがひねくれた、あるいはワケありの青年、少年。舞台は外国がほとんど。ストーリーも暗めで、実験的SFあり難病、自閉症ものまであり、先生の芸域の広さには正直驚いてしまう。絵はかなり耽美風。
あさぎり先生のルーツを知るのに貴重な1冊。これを読んでから他のあさぎり作品を読むのも味があってよろしいかと思います。


マンガ・マンガ・マンガ へ戻る。

トップへ戻る。