炎のロマンス

(上原きみ子・講談社漫画文庫 全5巻)

 

オビの宣伝文句によれば「文庫化してほしい少女漫画NO.1作品!」だそうで、ついにこのたび待望の完全復刻。

25年前の作品で、当然リアルタイムでは読んでおらず文庫で初めて接したわけですが、まあよくいうアレだね「初めて見たのに懐かしい」。そして「私のおもしろいと思うものがすべてここに詰まっていた」と言っても良いくらい。宣伝文句は伊達じゃない。

それでは、この素晴らしい怒涛のラブストーリーを少々ご紹介させていただきませう。


◆ストーリー

ちょっぴりドジで泣き虫なヒロイン、亜樹が高校に入学するところからこのお話は始まる。

親友のまゆみや中学時代の憧れの君、敬さまと一緒のクラスになった亜樹。自己紹介の時に風変わりなことを言ったミステリアスな同級生、須田譲治のことが気になるが、彼はなんと出会って早々、才色兼備で行動力あふれ、カリスマ性をもったまゆみにプロポーズする。

あまりの展開に戸惑いを隠せないのは読者だけでなく亜樹ちゃんも同じで、さらにその後、須田くんが何故か青い目と金髪を持ちかつらで隠していることまで知ってしまう。不思議な魅力を持つ須田くんのことがどんどん気になってしまう亜樹。須田くんも次第に亜樹に思いをよせるようになる。
しかしそれもつかのま、須田くんは突然姿を消してしまい、彼の家を訪ねようとした亜樹は何者かに拉致されてしまう…。

怪しい船で亜樹が連れていかれた先はなんと南太平洋の孤島、2人の王子が王位を争うコーラル王国であった!この王国では代々、黒髪の女性を女王として国王の妻に迎え入れることになっており、亜樹をさらったのは、何としてでも王位を手に入れたい王子、ルイであった。そしてもう1人の王子、レドビィが実は須田くんなのである。彼は花嫁探しの為に日本にやってきていたのだが、亜樹を王位争いに巻き込むのがしのびなく帰国していたのであった…。

やがて亜樹とレドビィ(須田)は再会を果たすが、その先には過酷すぎる運命が待ち受けていた…。

 

この後のストーリーはもう七転八倒、大河ドラマに東海テレビ制作昼のドラマをぶち込んだようなな怒涛の展開で突っ走る。

愛のない結婚、女王として生きることへの目覚め、ルイとレドビィの策略につぐ策略の王位争い、上原先生お得意の一筋縄でいかない親子兄弟関係ネタ、そして亜樹とレドビィの激しく燃え上がる「炎のロマンス」。

それらが一体となって、物語は止まることなく流れつづける。特に後半(4〜5巻)はスピーディーで次々に「実は…」「実は…」のどんでん返しが続く辺りは、注意しないと置いていかれてしまうほどのめまぐるしさ。


◆みどころ

冷静に考えればいろいろと無理はあるのだろうが、なにはともあれ第1巻からいきなり飛ばしすぎのストーリーにやられてしまう。
いきなり怪しい船で拉致されるところなんてデンジャーどころじゃない。これで向かったのが北方面だったらしゃれにならないところだが、まあ南方面なので一安心といったところか(苦笑)。その先の展開も読み方を変えると非常に「革命」とかそういう社会派な匂いも感じられる(冒頭の学園ストーリーの辺りにもその片鱗はあると思う)のだが、まあそれは置いておこう。

メインストーリーはもちろん亜樹とレドビィの恋の行方だが、ここに当初は亜樹に対して特別な感情を持っていなかったルイ王子も絡んできて形成される、女の子好みの心苦しいシチュエーションがまたよろしい。

レドビィとルイ、タイプの異なった美形の王子(すごくおおざっぱにくくるとレドビィが「公」を重んじるタイプで、ルイはその反対)はストーリーが進むに連れていろいろな面が描かれ、魅力的である。

ストーリーの凄まじさに時として思考がストップしてしまうこともあるのだが、加えて表現技法のストレートさにも心を直接わしづかみにされてしまう力がある。
見開きの大アップ、反復されるモノローグ、臆面のないピュアな風景や心情の描写など。悪人は顔を見ただけでそれとわかり、ルイやレドビィの周りには花びらの嵐が舞い、時として衣装が古代ギリシア風のモノになってしまったりもする。
どういう事が「感動」という感情を起こす為に効果的であるのだろうか、とかそんな事を考えたくなってしまうほど、素晴らしい効果である。

 

まあ結局のところ、

「恋愛→若い結婚=幸せ」

を啓蒙する作品という気もしないでもなくて(冒頭で将来設計のはっきりしたまゆみに対して、亜樹は「何になりたい」というのがなく平凡に結婚するんだろうな、と考えるのが精一杯。)、なんだか突っ込みたい気持ちもあるのだけれど、あまりのパワーと巻き起こる「感動」に負けてしまう。

決して「ああ、あるある。」とヒロインと自分とシンクロさせて楽しむマンガではないが、それゆえに時代を隔てても、この非日常な物語の世界を純粋に楽しむことが出来るのも良い。

絵柄(私は大好きであるが)を見て敬遠するのはもったいないどころの騒ぎではない。
これが少女マンガで、ドラマである。

ラストの見事なまでの後味の良さも併せて、多くの人に自信をもってお勧めしたい作品である。


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