(上原きみ子・秋田文庫・2000年)
1973年に少女コミックに掲載された作品がこのたび文庫化。作者はこのサイトでひそかに話題の名作「まりちゃんシリーズ」の上原きみ子先生。マンガ関係の本などで作品の名前だけは聞いたことがあったものの、わたくしは当時まだ生まれてもいなかったので、これが初見であります。「数々の困難に、明るさと元気(パワー)で立ち向かう。
少女ロリィが愛馬(ハッピー)と共に繰り広げる青春ロマン」
(文庫のオビより)もうそのまんまこうゆう話なんですけど、もそっと詳しくご紹介。
舞台はアメリカ。フランス人夫婦、ルネとポールは愛馬のエンゼルを連れて旅をしていた。そしてある町角の花売り少女、この物語のヒロインのロリィと偶然出会う。突然産気づいたエンゼルから生まれた子馬にロリィは「ハッピー」と名づける。
家庭の事情でフランスに帰国しなければならなくなったポール夫妻は、ロリィにハッピーをプレゼントするが、ロリィの家庭は例によって貧乏(パパはすでに死亡、ママは病弱で高価な薬が必要)であり、このうえ馬まで飼う余裕なんてとてもない状況。
ロリィはハイスクール進学を諦め、母親と妹の生活の為に働くことを決心する。
なかなか仕事が見つからないある日、行方不明になったハッピーを探しに隣町まで行ったロリィは、クレオという男の子(実は財閥の御曹司で家出中。ハッピーを欲しいと思っている。)に出会う。なりゆきでクレオはロリィの家に居候することになるが、クレオの義理の兄が現れ、クレオを家に連れ戻すためにハッピーを買い取ろうと、町中に策略を巡らす。
見つかりかけた勤め先に断られ、ママの病状は更に悪化、残されたお金は無くなる、なわけでついにロリィの妹、カーラまでもが働かざるを得なくなりニューヨークへ旅立つこととなる。
やがてロリィはハッピーと一緒に家の庭で採れるフルーツを売ってお金を稼ぐようになる。一旦は家に連れ戻されたものの、ロリィとハッピーに惹かれて戻ってきたクレオとともにつかの間の幸せな日々を過ごすが、ママの病状が悪化…。
妹のカーラは手紙をよこすものの、所在不明。そんなことをしている間にもママの病状はさらに悪化、ついに天国へ…。
ロリィとクレオは悲しみに暮れながらも、生活の為に2人でフルーツ売りを続けるのだが、そんなある日、馬術の天才少女、ダリア嬢がハッピーに目をつけ(ちなみにクレオにも目をつけるのだが)なんとしても自分のものにしようとして、後々ロリィを更にさらに苦しい道に誘いこむこととなる…。
ダリア嬢の誘いで馬術大会を観戦しにいったロリィとクレオ、そしてハッピーはすっかり馬術に魅了され、クレオは調教師を目指してダリアの父の牧場で働くことを決心、ロリィも周りから薦められて一流の競走馬にする為にハッピーを牧場に預けることにする。
クレオ「ぼくの夢はね・・・・・・ぼくとハッピーとロリィで世界のひのき舞台にとびだすんだ。」
しかしロリィのサインした誓約書がまた問題で、ダリア嬢以外はハッピーに乗ることが出来ないという内容のものなのであった…。
そしてある日、今まで連絡の取れなかったカーラが突然帰ってくるが、カーラはママの死を全く知らず事情も知らず、ロリィの所為でママが死んだと思い込み、姉妹の間には亀裂が入りまくり…。
と、大体ここまでが1巻のストーリー。
ハッピーはロリィを乗せて走れるのか、そしてロリィとカーラは仲直りできるのか、ロリィとクレオとハッピーの大それた夢は叶うのか、そしてそして2人の愛は、青春は…。
そして怒涛の2巻では、ハッピーを取り返す為に馬術大会に出場して好成績をおさめなければならないことになったロリィとクレオの奮闘、カーラのクレオへの叶わぬ恋、何としてもハッピーとクレオを手に入れたいダリア嬢の猛烈なロリィへのイヤガラセ、など目が離せない展開が続く。もはや何がクライマックスなのやらわからなくなってしまうくらい!
まるで舞台、ミュージカル化を意識しているようなロリィとクレオの長いモノローグがふんだんにちりばめられ、クラクラときてしまう。
ロリィ「なんてすばらしい朝日・・・・・・
ああこんなふうに 太陽の光をあびたことが 今までにあったかしら・・・・・・
この朝日の中で あたし・・・今 心に決めました
あたしにハッピーとクレオのいるかぎり 今日から決して泣きません
ええ、もう泣きません。」
このあとクレオのモノローグが続き、最後は二人で声をあわせて正面むいて語ってしまう(笑)のだが、笑うよりもなんだか感動してしまうんだよね・・・。
「やりすぎな感じ」なのはわかっているのだが、読み進んでいくうちに免疫ができてしまって、ちょっとやそっとのことでは驚かなくなってしまう。
そして「天の声」による華麗な状況説明。
私はダリア嬢登場のシーンが特にお気に入り。
「そう・・・・・・美人であった
この美人がロリィを今より
さらに苦しく さらにきつく
いばらの道へさそいこむことになろうとは・・・・・・
だれが想像したか・・・・・・」
とまるまる1ページ使ってダリア嬢のアップと乗馬姿(もちろん背景にはバラの花の絵が!)が描かれているのだが、この様式美にいやおうなしにおぼれさせられてしまう。
ストーリーをつら抜くのはもちろんロリィとクレオの「愛と青春」なのだが、それとともに非常に強く「金持ちVS貧乏」が感じられる。むしろそっちの方がテーマなのかもしれない。
お金さえあれば、お金の為に、お金にものを言わせて、などなど。
それゆえ、いっそう緊張感、悲壮感のようなものが漂うストーリーとなっている。「そりゃないよ」というストーリーにも、そこはかとない説得力があるように思わされる。それでも「まりちゃんシリーズ」の怒涛の展開よりは大分普通なのですが。
こういういわゆる昔の少女マンガ作品は、とてつもないギャグマンガとして捉えるのが最近の傾向だが、何故か私の頭がそれを拒否してしまう。
多分「偉大なるB級」のカテゴリーに入るものなんだろうけれど、いやこれは名作なんじゃないかと思ってしまう私はすでにこの作品にやられてしまっているのだろうか。
あらゆる感情とドラマの要素の詰まったこの作品、読んだすべてのヒトが私と同じようなことを思うわけではないだろうが、それでもあえてお勧めしたい。