ノスタルジック少女マンガ

〜楠桂先生特集〜

 

わたくしが「りぼん」を愛読していた1980年代、決して主流ではなかったが一部のひと(限定するとおそらく後に少年マンガやアニメにのめり込むこととなる、よりマニア度の強い女の子たち)に熱く支持されていたであろうと思われるのが、楠先生の作品である。なにを隠そう、わたくしも当時の「りぼん」作家の中で5本の指に入るくらいに好きでした。

絵のタッチはまるで「ジャンプ」に載っているような感じで、主人公が男の子である確立がかなり高いし、そして織り交ぜられるやたらと派手な戦闘シーンと落差の激しい(今となってみればしょうもないものも多いけど)ギャグ。

オカルト、ホラー的な事を題材にとったものも多くて、怖いもの好きで背伸びしたい年頃の小中学生にはかなり魅力的だったと思う。しかしそのせいか「りぼん」本誌よりも当初は「りぼんオリジナル」の方で活躍されていたようだ。

「りぼんオリジナル」は予算の都合上、かかさずに購入というわけにはいかなかったのでコミックス化されるのを待ってから読んだり、という感じだったが、そのうち「りぼん」本誌に掲載されることも多くなり、うれしかった記憶がある。

現在も楠先生はご活躍されていらっしゃるようですが、今回は私がリアルタイムに読んでいておもしろかった作品を中心に紹介します。


ぼくの学校は戦場だった

(りぼんマスコットコミックス・1984年)

表題作と続編「禁じられた校則」、および初期のラブコメ「何かが彼女にとりついた」、学園のオカルト研究会モノ「夜の倉庫に何がでた!」「妖気にスクールライフ」を収録。

 

平和主義者の主人公 豊臣平和が転校してきた学園、関ヶ原高校は「弱いものを強くする」がモットー。そして年に一回、学校行事として機械を相手に「戦争」を行い、成績順に生徒会役員を決めるというとんでもない学校であった。
豊臣はやはり学園に馴染めない同室の徳川 敬と、学校行事に乗じて校舎を破壊して脱走する計画を立てるのだが…。

 

とにかくこのとんでもない設定とスピーディーな展開が堪らない。「戦争」に対してそれはもう絶対的に悪いことで、話をすることすらはばかられるような教育を施された私にとってはかなりの衝撃であった。
戦車、銃、爆弾というアイテムをためらいなくさらりと使った、迫力あるシーンも強烈。少女マンガじゃないですこれは。

続編の「禁じられた校則」では、前作で生徒会役員になってしまった豊臣と徳川、好戦的なヒロインの織田 戦(いくさ と読む)が宣戦布告してきたライバル校、長篠高校に乗り込んではちゃめちゃな活躍(笑)を繰り広げる。
平和主義者の豊臣くんがいつのまにかすっかりアクティブになっていく様は戦争という状況の怖さを教えてくれる…なんて書いてみましたが、ただもうタンジュンに楽しむのが正解だと思います。

現在読んでもかなり良い線いってると思うので、まだ読んでいないヒトは是非どうぞ。

同時収録のオカルト研究会モノも、ノリが良くて登場人物が毎日楽しそうな様子が想像できるような感じで面白いです。


妖魔

(りぼんマスコットコミックス・1986年・全2巻)

時は戦国。主人公の忍者、緋影は忍びの里を追い出された仲間、魔狼を探す為に旅に出る。しかし先々の村は妖怪の術に支配されていて、ようやく見つけた魔狼は記憶を無くしていた。緋影はその村で顔にあざのある少女、あやと出会い恋に落ちるが、緋影が妖怪を倒し村人を支配していた妖術が解けた結果、あやは自殺してしまい、魔狼はまた行方がわからなくなってしまう。悲しみながらも緋影は魔狼を探す旅を続けるが…。

 

私が楠先生の作品の中でイチバン好きだったのがこれ。
話は暗いし、グロい妖怪は出てくるは、緋影とラブストーリーを演じる女性キャラも全員いわくありげな感じだし、で非常に殺伐としていて乾いた印象なんだけど、当時はこうゆうお話、絵がカッコイイと思い込んでいました。もう主人公の緋影が好きで好きで、友達と争いになるくらいだった(笑)。

アクションシーンは迫力とかをかるく飛び越えて、まさに殺伐、グロテスクな感じさえするくらい。でも個人的にはこの作品の時の絵が一番好きです。

難点は妖怪、敵との戦闘シーンの連続でその印象が強くてストーリーがちょっとわかりにくいかもしれないな、という気もしないでもないこと。
そんな中、緋影と女性キャラクターが次々に演じるラブストーリーがなんともいえず私は好きだ。特に後半に出てくる、くのいち「妖」(あや)がいじらしくて切ない。

ところで前編に同時収録されている「クリーナー・クリーナー」はかなりの爆笑もので、ものすごいギャップが味わえる。異常にキレイ好きで掃除に命を懸けている男の子に恋してしまった女の子のお話。これもオススメです。


たとえばこんな幽霊奇談

(りぼんマスコットコミックス・1988年)

のりにのりまくった感じのオカルト系コメディが詰まった1冊。

「たとえばこんな幽霊奇談」、「奇跡の人」「遺言ですよ」「ノストラダムスはつぶやいた」の4作を収録。どれもこれもストーリー、設定の発想が面白い。
とくにおすすめの「奇跡の人」「ノストラダムスはつぶやいた」は強烈な印象を残してくれた。

 

「奇跡の人」

バス事故で1人だけ奇跡的に生き残って一躍時の人となったヒロイン。だが、実は乗客は全員死亡していて、一番きれいだった死体に医者が遊びでパーツをつなぎあわせたところ(オイオイ…)生き返ってしまったという素晴らしくファンキーな設定。

その事実を知ったヒロインと体のパーツを提供した他の乗客たち(幽霊)がこのトンデモ医者たちにに一泡吹かせる為に立ち上がるのだが、もうこの無法地帯ぶりと、シリアスのあいだにある意味無神経にはさまるギャグにすっかりやられてしまうと言う感じ。しつこいようだが「りぼん」にどうしてこんなものが載せられたのか不思議である。

 

「ノストラダムスはつぶやいた」

子供時代にさんざんたたきこまれた、例の大予言を煽るような作品。今となっては笑えるが当時の怖さといったらもうハンパじゃないです。

精神を体から離して時間、空間を超えて好きなところに飛ばせる「精神飛行」ができるようになった主人公の友人。その能力を使って事故などを次々と予知することが出来るのだが、それにともなって精神が受けたショックを体に送ってしまうという欠点がある。

そしてある日、この友人が1999年の世界を覗きにいくんだが、そこで起こったこととは…。

もう、読んだことを後悔するしかないです。この怖さの演出テクニックはなかなか心憎い。今読んでもわたしはちょっと怖いぞ(笑)。一見の価値ありです。

 


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