ノスタルジック少女マンガ パート3

「こっちむいてラブ!」(著・あさぎり夕昭和57年〜58年)

 

わかりやすく基本に忠実、キャステイングといい脚本といい真ん中高めストレートのドラマ「ビューチフルライフ」が大ヒット、というわけで今の時代は「原点回帰」こそがトレンディ。

(なぜ『あれほど』うけたという問題や、なぜ「原点回帰」か、ということはややこしくなるから省略。そういう前提で頼むよ。ただ、ウチの親でさえ毎回見なくともストーリーについていけるといっていたことは今後のドラマ制作において考慮するべきかもしれない。)

そんなわけでこのコーナーでも「原点回帰」。少女漫画らしく夢いっぱい、恋いっぱい、そして背景にはお花がいっぱい、の世界をご紹介します。
きっとこのタイトルには覚えあるでしょう。「なかよし」連載「こっちむいてラブ!」。
マイブーム、あさぎり夕先生の作品でございます。

 

ストーリー&キャラクター

明るく元気だけれど容姿にコンプレックスを持つ主人公、野々村 愛里(ラブ)はカメラマンの優しい兄(まーくん)と2人暮らし。ラブは人気アイドルの準一に憧れていて、準一の新作映画の相手役オーディションがあることを知るが、タレント志願の美人の同級生 千加も応募すると知り、諦めてしまう。千加が1次審査に合格、準一にせめて一目でいいから会いたいと審査会場についていき、そこで出会ったみずからを「魔法使い」と名乗る、有名カメラマンの息子 草(そう)さんのツテで中に入るもののがトラブル発生、オーディションはメチャクチャに。憧れのアイドル準一までもラブのことを「じょーだんじゃないあんなチンクシャ、やっぱ美人でなきゃだめさ。」などと影で言い出すしまつ。ラブちゃん号泣。

(ラブ)「シンデレラになれるのは・・・きれいな子だけよ!
どうして あたしもっと美人に生まれてこなかったんだろ
そしたら こんな思いせずに済んだのに・・・!」

(草さん)「魔法をかけてあげようか きみがのぞむなら。
ぼくがきみを だれもがふりかえるような
すてきな女の子にかえてあげるよ。」

てな具合でラブは髪型、ドレス、化粧を変えることで美少女に変身、モデルになれば準一にもまた会えるという期待もあり、ラブの笑顔に惹かれた草さんの写真のモデルを勤めることとなる。

いっぽう、ラブの住むアパートの隣の部屋に引っ越してきた青年 暁(あきら)、やんちゃでちょっぴりワルなプレイボーイ(笑)なのだが後ろ姿、雰囲気などが映画で見た準一に似ていて、ラブにとっては次第に気になる存在に。そんなある日、あこがれの準一に恋人がいることを知ったラブがショックを受けていたところに暁が現れ、「おれが準一の代わりになってやろうか」といってファーストキスを奪われてしまう。ギクシャクする2人の関係。しかし実は、暁の本業がスタントマンで、準一の映画でアクションシーンを担当していたのが暁であったことを知る。映画の中での準一は実は暁だったのだ!暁に惹かれていくラブ。その後不良に絡まれている所を助けようとして、反対にポコされたりするという出来事など経て、さらに愛を深めていくラブと暁。

その後、ラブは草さんの撮った写真が評判になり、謎の美少女モデル「アリサ」(ラブ=アリサということは世間にはヒミツになっている)として、優しく支えてくれる草さんのもと、CM、グラビア、さらに映画でも活躍。もちろんその裏では、草さんのラブに対する恋愛感情があった。だがあくまで優しい草さんは、ラブと暁の恋を応援する。しかし、草さんは実は心臓に持病があり、あと2年もつかどうか、という命なのであった・・・。
草さんの周囲では、最後まで好きなことをさせて、彼の残り少ない人生を輝かせてあげたいと願い、草さんとラブが恋人同士になれる様に、暁と別れさせるように仕向ける・・・。

とまあ、こんな感じで華やかな芸能界を舞台に繰り広げられるラブストーリー。
(えい、やー!と1回ネジって両端をくっつけると・・・「ビューチフルライフ」?)

暁がスタントマンであることから、事故に巻き込まれそうになったり、はたまた本当に事故に遭ってしまったり、人気アイドル みゆきが暁に横恋慕したり、はたまた「アリサ」の正体を探ろうとするマスコミ、オーディションをメチャクチャにされてラブにうらみを持つ同級生 千加の嫌がらせ、などがストーリーを華麗に彩ります。ラストは皆さんのご想像通り。

 

みどころ。

美少年・美青年。

当時はわからなかったことでも、今ならわかるよ・・・。それが何かというと例によって例のあれ(笑)だね。
暁くんと草さんというメインの男2人、その2人にはまたそれぞれ「親友」というか「片腕」のような人がいるのだけれど、そいつらも
「おネエ言葉でしゃべる財閥の御曹司兼美容師 京介さん」
「暴走族の親玉 レッドさん」(本名が出てこないのさ)
などファンキーでアクロバティックな方々。

彼らは
「草さんに何かあったら、お前を殺してやる!」
「たとえ世界中の人が京介さんを悪人呼ばわりしようと ぼくは京介さんを信じている!」

のように熱く激しい台詞回しをしてくれます。す、すごいです。
男同士で殴り合いのケンカも、結構多いです。それでそのあと仲良くなるの。

薄幸の美青年 草さんが後半、発作を起こして苦しむさまも何とも言えずなまめかしいです。(不謹慎ですみません。)

 

目を開けたまま夢を見るんだ!

全体的には、女の子がもつ「シンデレラ願望」を臆面もなくまんま実現してしまうストーリーである。安直とかいうのは簡単だけれど、いいんだよこれで!

・ガケは崩れるがヒーローが必ず助けに来てくれる!
・年齢とか免許なんてどうでもいいから、とにかく絶対スポーツカー!
・僕が王子さまで君がお姫さま。
・悪だくみをするライバルはかってに自滅。
そういうこと。異世界と魔法と生まれ変わりがなくても十分ファンタジーです。

このシンデレラストーリーと平行する、草さんの感動闘病ストーリーにも注目。
「クオリティ オブ ライフ」にまで踏み込み、命が縮むことになろうとも残された日々を好きな写真を撮りつつ生きる様子は感動を呼び、読者の心臓もドキドキものである。

 

努力VS才能=中身VS外見

スポーツものマンガで繰り返される左辺の構図は、ラブラブ少女漫画では右辺の構図に置き換えられる。まあ教育的配慮からすると「努力」「中身」の方が勝つことが望ましいのだろうが、厳しい現実においてはままならず、失望と怒りと切なさに心を覆われてしまう。
(性格良ければいい そんなの嘘だと思いませんか〜?by広瀬香美「ロマンスの神様」)

繰り返される「過去のだめな私があなたに出会った日から美しく強いステキな私に」という命題に心を痛め、できない自分は「ブスは何やってもだめ」「顔もブスなら性格も悪い」なのではないかと思いつめる。(だって私自身もそうなんだもんね。)
それでも「やっぱ中身だよ〜」としらばっくれるコトが多いなかで、この作品では本音でとりあえず外見を変えてしまい、成功。実にポジティブですがすがしいです。で、それはあくまでキッカケであって、暁くんと草さんが惹かれるのは、変身した「アリサ」ではなく、自信がついてさらに魅力的になった素顔のラブちゃんの方。外見も中身も大事だよってことで、キレイゴトを押し付けるでもなく、うまくまとまっている。悩める少女に勇気を与える1冊である。

 

読んでるうちにラブちゃんに感情移入してしまい、またラストが「ビューチフルライフ」ばりの展開なので、涙腺が危険な状態に陥ることがあります。注意して読まれることをオススメします。
多分1冊100円くらいで古本屋で手に入ると思いますので、見掛けたらぜひどうぞ。


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