HAPPYまりちゃん

(上原きみ子・講談社漫画文庫)

昭和40年代末〜50年代生まれのみなさん、「小学館の学年誌に掲載されていた妙にシリアスでちょっと時代遅れっぽいキラキラした絵のバレエ漫画」に覚えはありませんか?確か、まりちゃんという女の子が主役で、お母さんが本当のお母さんじゃないとか、やたらイジワルな女の子が出てきてジャマしたり、記憶喪失になったり目が見えなくなったりするような事件がわんさか起こったり…それが上原きみこ先生による名作「まりちゃんシリーズ」であります(「ハーイまりちゃん」についての紹介はこちら)。
まあ例によって私も大好きだったのですが、途中で他のマンガ雑誌を買い始めたりというようなこともあって、最終的にどうなったのかなど気にはなっているものの話が追いきれなくなっておりました。単行本(てんとう虫コミックス)もなかなか手に入らないし…と半ば諦めていたところ、ここにきて上原きみこ先生の昔の作品が続々と文庫化されてきて、シリーズの中の作品「HAPPYまりちゃん」が文庫化されて帰ってきました(拍手)!いやー、ついに、いよいよ、待ちに待った、満を持して、などとありったけの言葉を並べてもまだ足りないくらいであります。

・ストーリー&キャラクター
3歳の時、エンゼルホーム(孤児院。上原作品では多用されてます)の前に置き去りにされた少女、まりちゃんが主人公。7年後のある日ママが迎えに来る…のですが残念ながら本当のママではない様子。しかしその女性(名バレリーナの小石川真也(マヤ))は、まりちゃんを自分の娘として自宅に引き取って育てることにします。
真也は自分の娘とオリジナルバレエ『エレナの赤い花』を踊る夢があり、まりちゃんにバレエを教え、やがてまりちゃんもバレエに夢中になっていくのですがそんな矢先に「自分こそが本当の小石川家の娘である」という少女、真理絵が現れここからストーリーは上原先生ならではの面倒な展開(出生のナゾ、怪我&病気&手術&輸血、正気の沙汰ではないイジワル、パートナーの男子を巡るゴタゴタ、渡されない手紙、いとも簡単に海外進出、まだ若いのに婚約とか結婚とかetc…)が目白押しになっていきます。が、それらは非常にスピーディーに繰り広げられてストレスを感じる間もないぐらい(ちょっとは余韻を与えてくれよ!と思わなくもない)。

まりちゃんの母親探し、バレエでの成功、そしてパートナー男子との恋、を基本の線にしながら七転八倒するストーリーが読んでいるうちになんだかいとおしくなってきさえする(のは私だけ?)。


・みどころ
20年位前のお話で、対象年齢が低いのもあってまあその、なにか深いテーマだとかこれを読んで議論をたたかわせたりする類の作品ではないと思われます。そんなわけで、この偶然に偶然が重なるようなムリヤリのお話の運びや「くさい」人間ドラマをつっこみながら楽しむ…というつもりで私もいたのですが、読み進めるうちになんだかそれだけではおさまらない気持ちもチラホラ…。上原先生の過去の作品のいいとこ取り、と感じないこともありませんが、まりちゃん達が真剣に(ホントに真剣に)取り組む劇中バレエのシーンなどはもっと多くのヒトに見てもらいたいとか思ってしまいます。
一流とされるバレエ漫画と比べると、たぶん登場人物の内面の描写や技術習得の過程がたりないんじゃないかと思いますがこれはこれで面白い。トラウマなどを持ち出さないまりちゃんの強さもかえって新鮮。
テクニックに優れているヒトよりも、「がんばり」「役になりきる」「愛の強さ」みたいなあいまいな因子に優れるまりちゃんが勝つパターンも好きです。

すでに前半にして、母親探しネタは破綻しているようにも思えるのですが(本当はこういうところもちゃんとしないといけないんでしょうが)あまりにもストーリーが早く進みすぎるので矛盾も軽く流されてしまうほどです。11月に3,4巻(これで完結)が発売になりますが、ラストはどんなに辻褄の合わないことになってもそれを受け入れてしまいそうな予感です。

遊園地に例えると、乗り物のパワーで勝負の(世界観などは統一されておらず、いまいち垢抜けない)「富士急ハイランド」って感じだろうか。今のこぎれいでおしゃれなマンガとは違った、でも切り捨ててしまうには忍びないなにかがあるような気がしてならない。


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