マリーベル

(上原きみ子・講談社漫画文庫全6巻)

 

これも上原先生の昔の作品を文庫化したもの。18世紀のフランスを舞台に、主人公マリーベルの波乱の半生をお得意のもつれた血縁関係、叶わなかったり許されなかったりの怒涛の恋愛、そして演劇への情熱などをたっぷりと絡めて描く。

1巻のオビには「これぞ少女漫画の金字塔!感動の大河ロマン、満を持して登場!!」とある。ええもちろん、その期待を裏切らないものすごい作品でありました。表紙がちょっとはずかしい気もするけど昔「小学○年生」でまりちゃんシリーズを読んでいたよい子はもちろん、芸能・演劇モノやおフランス好きな方も買ってみてください。

 


改めてまずはおおまかなストーリーの紹介から。

 

18世紀末、イギリス・ドーバーの街にフランス人の幼い兄妹が置き去りにされる。このお話の主人公、妹のマリーベルはランバート公爵家の屋敷に保護されてそこで暮らすことになる。

マリーベルは屋敷で静養している公爵家の跡取り、ロベールと一緒に兄妹のように育てられ、つかの間の平和な時間を過ごす。マリーベルとロベールの間には当然恋愛感情が育ってくるものの、身分違いの恋という高いハードルがそびえたつ。マリーベルはスキャンダルを恐れた公爵たちに、ロベールと引き離されてしまう。

で、基本ストーリーはこの2人の恋愛とマリーベルの兄さん探し、と考えていただくと分かりやすいと思う。そしてここに絡んでくるのが「演劇」と民衆の側からの「フランス革命」である。当然、ここに複数のいい男と複雑すぎる親子兄弟関係、強烈なライバル、復讐、レジスタンス、タブー、変装トリック、すれ違いにつぐすれ違い、などなどがからまりあって独特のドラマが繰り広げられる。

というとシリアス、重そうな話に思うかもしれないけれど(もちろんそういう場面もあるが)どういうわけかこれが予想以上に明るいのである。時としてこちらが面食らってしまうほどの破滅的なギャグもはいっていたりするのがまたこのお話のスゴイところなんである。民衆のたくましさゆえか。

 

序盤のキーパーソン、そして人気もきっと一番なのはフランスから芝居を勉強しにきていた青年、レアンドルだろうか。情熱的でナイーブな一面ももつ、という反則的なキャラクター設定がまたよろしい。
ロベールから身を引き、兄さんを探す為にもフランスに渡ったマリーベルはレアンドルの主宰する旅回りの劇団と行動を共にし、お約束でひょんなことから舞台に立つことになってしまい、次第に演劇に目覚めていく。
そんな中、レアンドル一家の複雑な家庭事情の所為で公爵令嬢でありコメディーフランセーズ(国立劇場)の人気女優、ジャンヌとレアンドルは結婚させられようとしていた。マリーベルに心引かれるレアンドルは国外逃亡を企てるがジャンヌ達の策略がレアンドルを襲い…。

この後、ジャンヌに対するレアンドルの仇を討つということもありマリーベルは本格的に演劇の道を目指すことを決意する。

ここの辺りの展開は文句無しに、いい。本当に芝居を観ているようだ。

 

この後、ストーリーはジャンヌとの演劇対決をしているうちに、時代がフランス革命になだれ込む。もはや演劇どころのさわぎではなくなってしまう。

ストーリー後半はロベールとの再会、革命に翻弄される恋愛、および兄さんとの再会がメインとなってくるが、革命の性質上どうもあらかじめ嫌な予感が漂っているゆえ非常に最後の最後までスリリングである。結構やられますねこれは。


みどころ。

・ジャンヌ・ド・モロー!

なんだかどこかで聞いたことのあるようなお名前ですが、公爵令嬢にしてフランスの国民的女優人気女優のジャンヌ様とマリーベルの演劇対決シーンはみどころでしょう。スゴイです。目の中にメラメラと炎が燃えていました。

マンガの描写、表現の面からすると、掘り下げは浅くやや形式としての対決ぽく感じてしまいますが(基本的にジャンヌ様=正統派、マリーベル=革新、奇襲)そこがいい。
劇中劇もなんだかおもしろそうで気になる。
後半ではジャンヌ様のロマンスが用意されているが、これまた息をのむくらいに良いです。

 

・君たちはなぜ変装するのか。

ストーリーにかなり絡んでくるのがこの「変装」という行為。
予想を裏切られる、というレベルには達していない、これも形式としての変装、なぞ解きではありますが…。エンタテイメントには欠かせない要素でしょう。

 

・人生とは舞台のようなもの。

演劇、芝居ひいては人生そのものに関する熱いセリフが続出。

たぶん、本当に演劇をやっている人にとっては笑ってしまうようなものだと思うけれど、マリーベル達が異様なテンションで真剣にしゃべっていると私なんかは内心感動してしまう。

 

・愛と青春と革命。

基本的には民衆側の立場から描いていますが、決して革命の全面的肯定にはならない描き方。主要登場人物にはマンガなので貴族の子息が多いですし…。

「炎のロマンス」でも感じたけれど、娯楽に徹していると語られている割には先生はかなり社会に対する問題意識をもっていらっしゃる。
あれほどギャグがはいっていたり、とっぴなストーリーであったにも関わらず、読んだ後はなんだか笑い飛ばして終わり、ということが出来ない作品。

とにかく、昔のこども向けマンガと思って読まないのはあまりにもったいないと思う次第。

他の作品の復刻もあるそうなのでこれからも上原先生には注目です。


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