高橋陽一短編集「キーパーコーチ」(集英社:1999年)

 

「キャプテン翼」作者、高橋先生4冊目の短編集。

友情と恋をモチーフにしたサッカーマンガ「キーパーコーチ」
「攻・守!−KOSHU!−」の2作品が収録されている。

「スポーツ」(サッカー、スキー、バスケなど)、「熱い友情」「さわやかな初恋」というキーワードに貫かれた高橋先生の短編集には傑作が多々ある(特に2冊目の短編集「ボクは岬太郎」には手放しでの賞賛を惜しまないぞ)のだが、この短編集には中編というか少し長めのお話が収録されていて、とかく試合シーンが延々と続くというワナに陥る事無く、かつストーリーの盛り上がりが非常に楽しめる、なんというか良い感じのものに仕上がっていてお勧めである。
高橋先生の魅力は「キャプテン翼」だけでは語れない、とそんなわけで今回はこちらをご紹介させていただく次第であります。


「キーパーコーチ」

・ストーリー&キャラクター

修斗(しゅうと)学園サッカー部、水沢清人はけががきっかけでプレイヤーの道を諦め、同じサッカー部の問題児キーパー、火場群次(素行不良だが素質アリ)の専属「キーパーコーチ」となる。清人は独学でコーチに必要な知識、技術を学び、心を入れ替えた群次とインターハイ出場を目指し練習を続ける。そんな2人を清人の幼なじみの由香はレモンの蜂蜜漬け(非常に重要な小道具!)の差し入れをしながら暖かく見守る。

だが、2人の目指すインターハイ出場には県下一の強豪、強力トリオ「攻撃三銃士」を擁する帝王一高が立ちはだかるのであった。

清人のサッカーに対する熱い思いと人間的成長、インターハイ出場の夢、そして清人と由香、群次の恋と友情を爽やかに、あくまで爽やかに描く。

 

・みどころ

「キャプテン翼」の主役翼くんは挫折しらずの天才少年。(他のキャラクターこそいろいろ苦労しているものの。)
しかしこの「キーパーコーチ」主役の清人君は最初っから思い切り挫折してて、補欠どころか選手ですらないコーチ役。どん底からストーリーが始まるんだから、あとはもう対数増殖のようにもち上がって(もち上げられて)いくしかない。しかも登場時の清人君はコーチの勉強で視力が悪くなったらしく、スポーツマンガ主役には珍しくメガネ(これも重要な小道具だ)をかけているのだがこれも一昔前の少女マンガでお馴染みの、あの展開への伏線であることはいうまでもないだろう。

盛り上がりに盛り上がりを見せるのは物語後半。
インターハイ予選決勝、帝王高との一戦でキーパー群次は腕を負傷。三銃士の猛攻で修斗学園大ピンチ!そこで選手交代、フリーキックを蹴るのは何故か!この試合に限って選手登録された清人君なのである。群次との毎日の練習で何本もシュートを打ち続けた清人君はチームの中でもぴかいちのシュート技術を身につけていたのだ!さらに由香と清人のうらやましくも不器用すぎる恋愛模様が持ち込まれ、この緊迫した試合中に(!)大胆ステキなシーンが挿入される。まあ読んでのお楽しみだが、やはり高橋先生はただものではない。わざとなのか本気なのか・・・。しかしいいよねこういう青春。どこかに今でも残っていてほしいと心から思う。

もうとにかく主役の清人の描かれ方が格好よく、ワンパターン !とか何とか頭の片方では笑っているのだが、もう片方はついつい夢中になって引き込まれてしまうパワーを感じる。

バリバリの少年漫画のはずだが、そこはかとなく少女漫画を読んだような不思議な感じが残る。それもまた良し。


「攻・守!−KOSHU!−」

・ストーリー&キャラクター

サッカー少年、安永 守と三島攻作はその名の通り、攻作が攻め(フォワード)、守が守る(ディフェンダー)仲良しコンビであった。小学生の頃、2人はそれぞれの未来の「サッカー人生予定表」をフローチャートのように紙に描く。2人は途中の道は違っても、最後は同じところ「一緒に日本代表に入ってワールドカップ出場」を目指そうと誓い合う。

だが家庭の事情により、攻作は守に黙って突然小学校を転校することになってしまう。守はサッカーを続けていればいつかきっと攻作に再会できると信じて、サッカーの名門校に進学する。月日は流れ中学3年の夏、守はキャプテンを任され県大会予選を戦っていた。そして中学卒業後はサッカーの名門高校、帝王高校にスポーツ特待生として入学することもほぼ内定していた。
そして県大会決勝、対戦相手として現れたのは攻作が率いるチームであった…。
再会を喜ぶ2人。しかし守は、家庭の事情で高校進学が難しい攻作もまた帝王高校の特待生を狙っていると知ってしまう。特待生に選ばれるのはどちらか1人だけ。複雑な心境の中、運命の試合が始まった…。

 

・みどころ

このお話にもまた2人の幼なじみの女の子、シズカちゃんという子が出てきて、お話を盛り上げてくれる。
攻作君はシズカちゃんが好きで、でもシズカちゃんは守くんが好きで、そして守くんもシズカちゃんが好きなんだけど、攻作君の気持を知ってるから譲ってみたりとかして。実は同時収録の「キーパーコーチ」でも殆ど同じようなことをやっているんだなこれが。定番ですね。

まあそれは置いて、守と攻作の熱く美しい友情がそれはそれは素晴らしい。
特待生をかけた県大会決勝、守は攻作にその権利を譲ろうと一度は考えるのだが、

『おれは悲しいくらいに おまえのサッカーをおぼえている!!
だから・・・・・・!!
だから攻作・・・・・・おまえに おれは抜けない!!』

と、手を抜かずに戦い、結局攻作は敗れ、サッカーを断念することになってしまう。そのうえ守はシズカちゃんに告白し、サッカーだけでなく攻作の好きな女の子までも奪ってしまう事になる。
それでも「守は俺の親友だ」と言える攻作。この裏には小さい頃のお話が絡んでいるのだが、なんだか泣かされる。

一方、とんとん拍子に進んできた守くんの方も、そうそううまく話が進む訳は無くて、いきなり急降下の過酷な展開が待っている。そして入れ替わるように今度は攻作くんの運気が急上昇していく。ここらの展開はご都合主義といえばそれまでだけど、ついつい引き込まれてページをめくるペースも思わず速くなるってもんである。ラストは予想できるそのまんまだけど、ちょっと気を抜くとじわりと来てしまうかもしれない。というのは誉めすぎか。
でもかなり読み応えはあると思う。

ワタシ的にはサッカー日本代表チームの課題図書に推薦したい。


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