昭和50年代前半、『なかよし』に掲載されたおどろおどろしく不思議で泣く子をさらに泣かすおっそろしい作品を収録したもの。手にとったきっかけは少し長くなりますが、むかし宝島社の単行本『VOW!』(みなさん知ってると思うけれど、雑誌『宝島』の投稿欄を集めたもの。『街のヘンなもの大集合』ということでステキな物件がぎっしり詰まっていていつも我々に大いなる笑いを提供してくれる。)にそのあまりにぶっとんだセリフゆえに掲載されていた伝説の作品『鬼あざみ』が収録されているという情報を入手したため、という実にわたし以外にはどうでもいい、いいかげんなことでありました。
で、たしか昔『なかよし』に怖い漫画載っていたよな〜、知ってる作品が他にもあるといいな〜くらいの軽い気持ちで読み始めたところ、問題の『鬼あざみ』はいうまでもありませんがその他の収録作品もここまで描くか!な恐ろしさ満点で正直いまは読みかえすのはもちろん手元に本を置いておくのもためらうくらいのすさまじさなんであります。
そんなわけで、道づれにするべくこの作品集をご紹介。
◇収録作品紹介
・「赤い沼」
日本に住んでいる人なら誰でも幼少時よりインプットされている歌『かごめかごめ』。その意味不明な歌詞に意味がわからないにもかかわらず恐怖にかられた方も多いでしょう。
その「かごめかごめ」の謎を題材に、山間の小さな村に伝わるいいつたえと鬼子母神の伝説を絡めてあくまでもおどろおどろしく描く。
鬼子母神を祭った神社に捨てられていたヒロイン、篭女(かごめ)。なにをやってもうまくいかず、村の人から虐げられ、蔑まれてきた彼女は、自分にはもうひとりの分身がいて自分ははんかけらのままで生まれてきたと信じている。いつか誰かが閉じ込められているその分身を探し出してくれるのを願っていたが、都会からやってきた童歌の研究家と一緒に『かごめかごめ』の謎を解いていくうちに禁断の扉を開けてしまい、その血塗られた出来事は起こってしまった…。
ストーリーは高階先生の「まったくの創作」だそうだが、非常に説得力があり子供だけでなく大人もこのお話を信じてしまうであろう。
惨殺シーン(先生、内臓が見えてますよ)にまるまる1P使ったり、怖いのなんの。20年前にこれを読んだらたぶん私はその日は夜トイレに行かれないどころの騒ぎじゃなかったと思う。多分こわいページに指をはさんでそこだけ飛ばして、でも繰り返して読むんだろうなきっと。
読みながらどこに気持ちを着地すればいいのかわからなくなるのもまたスッキリしなくて不安を増長させられる。
また恐怖以外のみどころとしては、この都会からやってきた童歌の研究家のミュージカルのようなすかしたセリフ、演技(?)にも注目だ。かなり不意を突かれる。
・「闇におどるきつね」
「オカルト研究会」「狐つき」そして「コックリさん」(と書いたり言ったりするだけでも良くないことが起きる、と昔に自称霊感の強い人たちに脅されたのですこし気がとがめるんだが…)などをからめ、ひょんなことをきっかけにヒロインにひそんでいた恐るべき超能力が目覚めてすこしだけ大変なことが起こるお話。あくまで少しだけ。
こうゆうテーマといったら私が思い出すのは楠桂先生の作品なんだが、そのようなポップな読後感ではなく、うすらさむいものが少し残る。
なんというか「土着」の怖さというんでしょうか、そんな言葉が思い出される。
・「わたしの中にへびがすむ!」
もうこのタイトルがすべてであります。へびが嫌いな人は絶対よまない方がいいよ…。そうでなくてもこれを読んだらば立派なへび嫌いになれると思う。
ヒロイン、美佐がどういうわけか蛇霊に祟られ、どんどん「へび少女」化していくんだけれど、先生の古めの絵のタッチとあいまってかなり読者を引かせます。
そしてストーリーはというと、「なぜ祟られたか」の理不尽さが涙モノでもう勘弁してくださいという感じです。ヒロインよ、泣くな。怒れ。除霊の方法のくだりまでくるともはや笑ってしまうくらいの説得力のなさであります。
いわゆるB級少女ホラーというくくりの中に入るんでしょうか、ただただ不気味なシーンをみせたいんだなあということがよくわかる作品であります。
・「鬼あざみ」
さて問題の作品。
これはおどろおどろのホラーではなく学園もの。でもどことなく怖いんだよね…。
許婚の大学生、一也を追って上京してきた天衣無縫な女子高生の亜加里(あかり)。上京早々にチンピラ同志のケンカに遭遇し、そこで暗い目をした少女、あざみに出会う。
亜加里の転校先の高校はスケバングループ「鬼あざみ」に牛耳られていた。亜加里は転校早々「鬼あざみ」の幹部に逆らってしまい、当然のように体育倉庫に連れ込まれリンチを受けそうになるが、そこに現れた番長は昨日出会ったあざみだった…。
金持ちだが家庭に恵まれず寂しく育ったあざみは、自分に先入観なく接する亜加里たちに出会ったことにより何かが変わり始めるのだがそれをおもしろく思わない仲間たちがよからぬことを計画するのであった・・・・・・。
まああくまで基本はシンプルな不良更正ストーリー(悲劇バージョン)であります。
しかし今で言えばかなりの「不思議ちゃん」な亜加里、非の打ち所のない不良のあざみのキャラクターがとにかく素晴らしい。
不良グループに牛耳られる学園、亜加里と一也の貧乏アパートでの生活などふんだんに漂う昔らしさ(でもこれは当時としても古かったんじゃないか?)もわたしはうれしい。
読者を置き去りにする唐突なラストシーンもかっこよすぎる。
ちなみに「VOW」に載ってしまった有名なセリフとはこれだ。
(倉庫に連れ込まれる前のシーン)
鬼あざみ幹部:『ねえ、ちょっと この子ったらあたしたちをコケにしてるよ』
亜加里:『コケ…キノコのこと…?』
(ちなみにこの文庫版では若干セリフが変えられてました。)
…まあ、しめたくなる気持ちもわからなくはないな(笑)。
もう1作、やはり「あざみ」という名のブルジョア少女(顔もにているけれど上記のあざみとは恐らく別人。)がヒロインの「バイオレットシャトーの昼下がり」という作品も収録されている。すごい耽美なかんじでこれはこれでまた面白い。
で、こんなに怖い怖い、勘弁してください、とか言いながら心の中では読みたくて仕方なくて、このシリーズをもう1冊(傑作選3・「黒とかげ」)購入してしまいました私。緑川夫人と明智さんとの間の恋愛感情が大胆描写でなかなか良かったです。(絵は古いんだけど…)
同時収録の『パノラマ島奇談』(江戸川乱歩)が原作の『血とばらの悪魔』もグロくてセクシーでぞくぞくする。ああ、また別のが読みたくなってきた…。