ノスタルジック少女マンガ パート4

〜太刀掛秀子先生特集〜

 

さあ、今回はまたもや若者を無視した展開なのですが,
雑誌「りぼん」で活躍されていた「太刀掛秀子」先生のマンガを紹介いたします。
ものの本によると陸奥A子、田渕由美子先生らとともに70年代から80年代にかけての
「りぼん「乙女ちっく」路線」の代表選手だったそうですが、私がマンガを読みはじめたのはその路線が下火になったあとで、非常に骨太でシリアスなメロドラマ、いわゆる「感動作」と称されるもの、という印象があります。りぼん編集部のコミックの紹介の欄でもやたらと
「心暖まる感動作」
「親子の愛情を描いた感動作」
「あなたに贈る感動作」
のように紹介されているし。
しかし!その看板に偽りはありません。いわゆる前時代的なドラマ手法というものを多用されていると思うのですが、それがまたビシバシと心地よい。緻密な伏線は今読んでもお見事、という感じ。

そんなわけで、いくつかの作品を年代順にご紹介します。
手に入りにくいとは思いますが、どれもこれも読む価値あります。


 

・花ぶらんこゆれて…(昭和53年〜55年)

私が最初に読んだ「りぼん」のマンガがこの作品だったと思う。お子様だった私は一度読むものの、ストーリーのあまりのメロドラマ加減にやられてしまって一度挫折してしまった。でも気になっててその1年後くらいにがんばって(別にがんばらなくていい)読破しました。

〜ストーリー〜

庭に「花ぶらんこ」のある洋館に住む、フランス人の母と日本人の父の間に生まれた主人公「るり」。母(ソニア)はるりが生まれてすぐ、フランスに帰ってしまっていた。

るりが3歳の時、父が再婚。新しい母の「梢」、優しい兄「真幸」と4人で幸せな生活をおくる。それもつかのま、妹の「唯」が生まれたことから、新しい母の態度が変わってしまう(つまり、るりをいじめて唯を可愛がるわけだ。)。そして唯の心臓には持病があり、梢の愛情はいっそう病弱な唯にばかり注がれることとなる。
しかしるりは父と優しい兄の真幸に守られ、明るくまっすぐ育つ。

梢はまた、夫(るりの父)が未だに別れたソニアの事を忘れられずにいて、自分を愛していないのでは、という思いに悩んでいた。美しく成長するるりにソニアを重ねてしまい、冷たい態度をとってしまう梢。優しかった母の変貌は父の所為でもあると知り、悩んだ兄の真幸は家から逃げ、全寮制の高校に行ってしまう。更に孤立してしまうるり。

一方、病状が悪化し、学校を休みがちな唯のために大学生の家庭教師、惣一郎がやってくる。

唯は惣一郎に恋心を抱くが、惣一郎の想いはるりへと向けられていた。るりも惣一郎のことを思っているのだが、唯の気持を考えてその気持を隠してしまう。

唯の病状は更に悪化。梢は生きている間に最後の望みを叶えてあげようと、惣一郎に唯の想いを受け止めてほしいと頼むが・・・。

 

と、このように息苦しいほどのシリアス、めくるめく不幸と困難が降りかかるお話。

この後も、唯は天国へ召され、るりは失明、実は惣一郎がるりたちに近づいたのは復讐目当てだった、なんと兄の真幸がるりに愛を告白!、傷心の惣一郎はフランス留学に、などの大仰な展開が待っていて、一度読んだら続きが気になって気になって仕方なくなります。

特に後半は、るりちゃんが2ページに1回は泣いてるって感じで、画面が水っぽい、というか本を絞ったら涙がしたたり落ちるんじゃないかというくらい。読んでいるこちらの気分も梅雨模様にしてくれる。

しかし「花ぶらんこ」という小道具、「花びらが散った分だけ心が軽くなる」なんて台詞は乙女ちっく風味で、このシリアスストーリーに柔らかい彩りを添えてくれていい感じ。

当時、読者サロンでは「るりは惣一郎、真幸のどちらと結ばれるか?」が真剣に議論され熱い意見が寄せられていたのを覚えています。今思えばたいしたことではないが。
でも惣一郎先生みたいなかっこいいメガネのお兄さんが、家にも家庭教師に来てくれればいいのに、とは思った。

今、これが書店で手に入る唯一の太刀掛作品、という話を何かの本で読んだのですが(でもそれも大分前だから状況が変わっているかも。)、残っているのはしごく当然とうなずける名作。もちろん他の作品もいいのですが。

 


・まりの きみの声が(昭和55年)

通っていたピアノ教室にあった、古い「りぼん」で読んだものです。私にとっては「大学生」に対する妙なあこがれと、「大学に行ったら有意義なコトをしなきゃいけない」という強迫観念を刷り込まれた作品。

〜ストーリー〜

第二志望の大学に入学、気のすすまない学生生活を送りそうだった男子学生、善実(よしみ)。入居した下宿の部屋に残されていた1本のカセットテープ。そこには「まりの」と名乗る女の子からのメッセージが・・・。その美しく暖かな声に引き付けられ、想像をかきたてられる善実。

その後、善実は偶然「まりの」と出会うことができる。まりのは善実を、幼稚園で行われる人形劇の公演に誘う。人形劇に生き生きと打ち込むまりのの姿、楽しそうな子供たちの笑顔など見ているうちに、もともと美大志願で造形が得意な善実は人形劇の世界に足を踏み入れることになる。そして、善実自身は気付いていないが彼にはたぐいまれなる人形劇の役者としての才能が隠されていた・・・。

日に日に、まりのへの想いが募る善実。しかし彼女には共に人形劇団を作って全国をまわるという夢をもった恋人(森下さん・人形劇部の部長)がいるのであった・・・。
そんなある日、テレビニュースでまりのたちの劇団の活動が放送される。それを見たテレビ関係者がまりのに声優デビューの話を持ちかけるが・・・。

 

このお話は、「花ぶらんこ」ほどシリアスではないけれども、随所にそれ的要素が配置されていて、心を揺さ振るお手伝いをしてくれます。
まりのの両親(有名な人形劇団を主宰していたらしい)が数年前に不慮の事故でお亡くなりになっていたり、善実と父親との葛藤(まあ教師になれとか、好きにしろ、とかそういう程度のことだけど)、人形劇を見せにいった児童施設で出会った自閉症の女の子がらみのエピソードなど。

そしてこのお話の世界をそれら以上に濃厚に覆うのは、なんというか「フォーク」的なもの、もっと限定するとおそらく「南こうせつ」とか「かぐや姫」的な風味である。このお話で一番カッコイイ男、まりのの恋人役の森下さんは長髪(画面上では金髪で描かれる)にバンダナ、そしてメガネを装備。今にも円座を組んで歌い出しそうな人形劇部の仲間たち。仲間の溜まり場の喫茶店は「学園通りの『ぱぺっと』」。密かに、こういう青春っていいな、と思ってしまう私であります。

今冷静に読み返してみると、善実がすっかり人形劇にはまっていくさまは、女の子にオルグされたところが人形劇部だったからいいようなものの、何かのカルト的なものだったらコワイね、とも思う。まあそんなところも注目してみると趣きがあってよろしいです。

  


・ポポ先生がんばる!(昭和58年)

〜ストーリー〜

天真爛漫な新米獣医、一文字 風太(愛称:ポポ先生。たんぽぽみたいな人だから、ということで付いたお名前。まあ「雑草魂」みたいなものか?)は採用試験に片っ端から落ちてしまい、唯一合格した北海道の小さな動物病院に赴任する。

大自然!動物たちとのふれあい!と理想に燃えてやってきた彼を待ち受けていたものは、実習と実践の違い。都会育ちで牛のあつかい一つとってもなれていないポポ先生はすっかり獣医の仕事を続ける自信を喪失してしまう。ところが院長先生が急用で不在の夜中、牧場から病院に難産の牛を助けて欲しいとの連絡が入る。

戸惑いながらも無我夢中、一生懸命に助けようとするポポ先生のお陰で、親子とも無事に生まれてくることができた。この一件以来、牧場主や地元の人の信頼が一層あつくなり、村の一員として大歓迎されるようになるがそれにしたがって、ポポ先生をめぐる恋のサヤあても・・・。

 

このお話は一連の作品の中でかなり好き。ポポ先生のキャラクターが純情まっすぐ君でかわいらしいし、ポポ先生を恋のライバル視している牧場のあんちゃんもお茶目さん(だけれど酪農に関しては命かけてやってる素晴らしい人、という設定でじんわりと泣かされる)でいい味出してます。
農村のいろいろな問題(嫁不足とか重労働とか)にも触れていて、勉強にもなるし。

獣医さんものなので、動物の赤ちゃんなんかも出てくるんだけれど、絵がかわいらしいのでそこのとこも評価高くなりますね。隠れた名作ざんす。

  


・秋への小径(昭和59年)

たしかこのころ「りぼん」では「ときめきトゥナイト」全盛だったはず。その時代にあえて太刀掛先生が放つ、超シリアスな「親子もの」。これと「お父さんは心配性」が同じ雑誌に載ってたってのもすごいかもしれない・・・。

〜ストーリー〜

バイオリンが大好きな心やさしい少女、響子。父は小さい頃に亡くなり、ピアニストの母、麗子と妹の3人で暮らす。だが麗子は、何故か響子がバイオリンを弾くことを快く思わず、妹ばかりを可愛がり、響子にはなにかとつらくあたる。ある日、禁止されてもバイオリンをやめる事ができない響子の前に謎の少年、アロウが現れ「僕はきみの影だよ」と謎めいた言葉を残して去っていく。

響子は同級生から、「カルテット」をやってみないかという誘いを受け、顔合わせの会場へ向かうが、そこにはアロウの姿があった。まるで自分が弾いているかのように、響子の演奏と同じ音、同じ弾き方のアロウの演奏を聴いた響子は混乱して飛び出しすが、交差点の真ん中で立ち往生して意識を失ってしまう・・・。病院で目を覚ました響子は、麗子が「あの子のためにあの人は命を落とした」というのを聞いてしまいショックをうけるのだが・・・。
父の死の真相、謎の少年アロウの正体、なぜ麗子はバイオリンを嫌うのか、そして響子の出生の秘密は・・・。

 

このように、人間ドラマとなぞ解きでぐいぐいと読者を引っ張っていく力が素晴らしい。
そして繰り返される「花ぶらんこ」の構図は(母親による姉いじめ&妹を溺愛)、相変わらず冴えまくっている。太刀掛先生自身になにかトラウマでもあるんだろうか、とかんぐりたくなってしまうのだが・・・。童話なんかでは姉がイジワルで末っ子がいじめられてる設定が多くて、上のお子様って抑圧されてるかもしれないのでこのくらいでつりあいが取れるのかもね・・・。

このころの「りぼん」連載のマンガの中では、ちょっと異色な存在だったと思うけれど、このシリアスさと大仰さについつい引き付けられてしまっていました。原点回帰ブームで見直されないかなーこういう作品。

 

私が把握しているのはこの作品までなのですが、これ以降の作品について、ご存知の方いらっしゃいましたら情報お待ちしております。 


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