(作:高橋陽一/全18巻・番外編1巻)
もし私の人生の中で、高橋陽一先生に会うことができたならば、心から
「先生の作品に、希望をもらいました」と言いたい。そのくらい勝手に思い入れしている。救われた過去を持つ「信者」になってしまったから、たとえどんな展開になったとしても、どこまでもついていかせていただきます。
そんなわけで、いつものように突っ込みながらこの「キャプテン翼ワールドユース編」をご紹介。
※「キャプテン翼J」というタイトルでアニメ化されてましたが、実はその頃忙しかった上に時間の使い方がへたくそなので、1回しか観た事がありません。なので以下の感想や紹介はマンガ版についてのものです。
前作から3年の月日が流れた。
それぞれの道に進んだ仲間たちが再会し、「ワールドユース大会」(U−19)で世界を相手に挑戦する。
中学校卒業後、ブラジルに渡った翼くんはプロリーグで大活躍中。日向くん、若島津くんたち率いる東邦高校は全国高校サッカーで三連覇を成し遂げ、Jリーグからのオファーも。心臓の持病を克服した三杉くんは、医学部に進学。天才キーパー若林くんはドイツのプロリーグで活躍中。岬くんほか南葛高校のメンバーは、優勝こそできなかったものの高校サッカーで大活躍。
また新たに登場し、大きな役割をはたす葵くん。中学校時代の彼の所属チームは弱小だったため、全国大会に出場経験がなかったが、翼くんのプレイに憧れ中学卒業後に単身イタリアに渡り、靴磨き(!)やなんやらをしながら紹介なしに(笑)、あの『セリエA』のチームに入団。日本人に対する偏見とも闘いながら、徐々にその才能が認められて日本代表チームに参加することになる。
各地から集まった翼たち日本代表チームが、毎度おなじみの試練を乗り越え、さらに必殺シュートをあみだし、アジア各国や世界の強豪を相手に勝ち進んでいく様を、いつもながらの陽一先生テイストで描く。
また、お楽しみの「恋愛」についても盛り込まれているので見逃せない。
・味方を襲う、試練!試練!試練!
1.なかまの離脱
ゴールキーパーの若林と若島津。この2人の評価って、
「若島津もいいけど、必ずピンチに陥ってそこに若林登場、ヒューヒュー俺たちの天才キーパー!」
といったところであろうか。
そこに気づいてしまった若島津くん、捨てせりふ(必見!)とともに、脱落(でも後で日向さんが根性で連れ戻す。名場面。)。気持ちはわかる。
そして、俺たちこそが代表チームになるべきと主張する、謎の「影の代表チーム」リアルジャパンセブンが登場。奴らとの練習試合に負けて、日向や岬たちは修行に出てしまう。どうする日本!
ちなみにやつらは翼たちと違って、クラブチーム(実業団の傘下のジュニア)や外国育ちってことで、過去においてそんなスゴイ選手の存在が知られていないことの理由付け(苦笑)がなされている。
実のところ、結構つかえるやつらなんだけど、陽一先生流のトリッキーなフェイント(反則スレスレ)で「リアルジャパンセブン」はさようならしてしまいます。一緒にやったらいいのにー。
2.災難は続くよどこまでも。
死を安直に描くと言われて久しいフィクションの世界。
しかし陽一先生は死なないまでも、交通事故を安直に描くよな。この話の中で一体何回くらいエピソードで使ったんだろうか。「正」の字を書いて調べないとわからないくらいなのは確か。
今回、さまざまな被害は選手だけにとどまらず、日向のママや松山のフィアンセ(い、いつのまに!)にまで及ぶ。あんまりにも災難が起こるので、陽一先生も説得力に欠けると思ったのか、占い師を登場させ「たーんと災難が起こる」とか予言させていてナイス。
世界のライバルたちの周辺も、この手の悲劇がかなりあって、それがサッカーへの動機づけになっていたりする。そうやって心を閉ざしたキャラが、翼くんのサッカーのお陰で癒されたり立ち直ったりする、というのもストーリーに盛り込まれていて、ヒューマン!
昔なにかのマンガ入門の本で、悲劇のパターンは36種類だかしかない、というのを読んだのだけれど陽一先生の場合はもっと少ない。シンプルイズベストか。
あんなアクロバットサッカーしてたら、命がいくらあっても足りないのはやまやまだけど、今回ももちろん怪我人続出。しかも今回は、相手に格闘技系出身のガタイのいい奴らが多いために危険度は更にアップ。そして必殺シュートは足にやたら負担がかかり、自分で自分の首を絞めまくる。とりあえずシュートはゴールに向けて打て!人に向けて打つものではない。
サディスティックなまでに常に選手にハンデを負わせて戦わせる陽一先生。真の敵はあなたかもしれない・・・。なんてことを思わず考えてしまう。でもこれが「待ってました!」の展開なんだ。もうメロメロ。
・いわゆるジャンプ的「敵や技のインフレ」
今回もばっちりです。アジア1次予選から敵が強いです。最初っから強すぎなのでこれはとんでもないことになりそうだわ、と思っていたら陽一先生はやってくれました。それはまさに、インフレならぬデフレ。
『ああっ、あんなに強かった○○があっさり敗れるなんて!なんて強さだ××!』
このお陰で、あんまりなインフレは避けられたのだがしかし。
良いアイデアかもしれないけど、前作で活躍したキャラに適用されるのでかわいそう。すっかり冷遇されてます。ex:シュナイダー、ピエール、イタリアチームの皆様、などなど。
若林くんがついにペナルティーエリアの外からのシュートを許してしまったり。
でもしょうがないの。相手はそれだけ強いんです。
そして必殺シュートはもちろん、ドリブル、タックル、フェイントなどもはや人間にはついていかれないレベル。
相手の使った技を次の瞬間に自分のものに出来る、とかお互いでシュートを跳ね返しあったりかき消しあったりとか、すごいことになってます。
ちなみに日向くんの「雷獣シュート」は時速300kmだそうな。松坂の投げるのの2倍くらい速いんだよ。
・子供が本気にしたら困るざます。陽一先生のピュアな世界観。
タイ→ムエタイ、セパタクロー
アラブ→ターバン巻いた王子様
中国→秘伝の技、曲芸チック
実にわかりやすいチームカラー。
でもこうゆう描き方が、差別的とかいわれる世の中は来てほしくないと思う。
・最後に愛は勝つ。
サッカーが恋人、なーに言ってるんだか。
前作で彼女がいた(できた)方々は、すっかり愛を深められたようでアツアツでございます。
それは良いが、今回はなんと日向さんにまでレンアイ系エピソードが用意されてます。
いつものように沖縄で修行しているときに出会うの。相手はさっぱり系スポーツ少女。
読んでいると、思わずいろんなところをかきむしりたくなるような、20年近く前に戻ったような、そんな感じが味わえます。
翼くんと早苗さんは相変わらずです。でも最後の最後でコミックスを投げつけたくなったのは私だけか?この気持ちはいったいなんだろう・・・。
・妄想はやがて現実化する。
ここで、マンガから離れて、実際の日本サッカーのことを思い返してみると・・・。
今までアジア予選も突破できなかった、「実際の」サッカー全日本がワールドユース大会で準優勝したり、はたまたワールドカップ出場。
日本を飛び出して海外のチームにいく選手も増えてきて、しかも活躍してる。
まだまだ世界の壁は厚いけれども、なんだか「キャプテン翼」の世界に現実が近づいてきているような気はしないだろうか(ちょっと大げさ)。陽一先生の強い願いが通じたのだろうか。
またマンガに戻る。
全体通して、前半のストーリーはマンガとしてかなり良いのだけれど、後半はれんさいの期間やページ数の関係だと思われるが、急いで強引な展開になっていることは否めない。ほとんど試合に登場しないチームもあって残念だった。
韓国との試合など、いわゆる現実の日本サッカー界としては「宿命のライバル」と煽りまくっているところだけに、もっと盛り上がると良いと思った(なにか政治的な問題があったのかもしれないけれど)。
最後の翼くんのセリフはなかなか素直に感動できます。陽一先生が込めたメッセージが心に染み入ります。
あとは・・・やっぱり前作を読んでないお子様には理解しがたい世界なのかな?とは少し思った。
でも「翼」で育った世代としてはこの燈を消さないで欲しいの。サッカーという題材自体はスタンダードなものであるから、野球マンガが無くならないように、やりかた次第(具体的にどうするかまではマンガに詳しくないので何ともいえないけど)でまだまだいけると思う。
でも、私はこれはこれで大好きです。
ありきたりになってしまうが、陽一先生に次は「オリンピック編」そして「2002年 ワールドカップ編」を是非描いていただきたい。これからもひそかに応援してます。